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真夏に発汗! 夏に辛い物を美味しく感じるワケ

暑い日はなぜか辛い物を食べたくなるものですが、カレーやスパイスが効いたエスニックフードを美味しく感じるのはなぜでしょうか? 暑い日に辛味がもたらす効果について、ご紹介します。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

辛みで得られる涼しさと爽快感

唐辛子

暑い…汗が止まらない…。でも辛いのが食べたくなるのはなぜ!?

結論から言ってしまうと、暑い日に辛いものを食べることにはメリットがあります。発汗が促されることで涼しさを感じることができ、また脳内麻薬の作用で爽快感が得られるためです。

そもそも、運動をしたわけでもないのに、辛いものを食べただけで身体が一時的に暑くなり、汗が出てくるのはなぜでしょう? 例えば辛味の代表選手である唐辛子。辛味の正体はおなじみのカプサイシンです。カプサイシンには様々な薬理作用があると考えられ調査されていますが、実は人体の神経系に受容体をもつ、神経毒の一種。末梢神経と中枢神経両方に同じ受容体がありますが、これは唐辛子などの栄養のための受容体ではなく、もともと痛みを伝える受容体です。小腸から吸収されたカプサイシンは血流に乗って、この中枢神経の受容体に結合します。中枢神経に刺激があることで司令が伝わり、交感神経系の出先である副腎からアドレナリンが放出されます。アドレナリンが出るために、身体を動かしたときと同様、一度身体が暑くなるとともに発汗が始まり、結果的に身体を涼しく冷やすことができるのです。これら一連の作用で、カプサイシンを含む物を食べると、体感的には熱を持ち、その後で涼しさが得られることになります。

また、痛みを伝える受容体の本来の役割は、身体に損傷が起こりそうな場合に痛みという方法でアラートを鳴らし、警告を行うことです。損傷が起きた場合は痛みが続くため、痛みを緩和するための脳内麻薬が作られます。カプサイシンは身体に損傷を与えることありませんが、痛みを伝える受容体に作用するため、間接的に脳内麻薬を作り出すことができます。ジョギングを続けていると脳内麻薬が作られて気分がよくなる「ランナーズ・ハイ」という状態が知られていますが、それと近い状態と言えるでしょう。

種々な慢性疼痛に対し、カプサイシンの効果が研究されています。ネズミの実験ではカプサイシン投与により脳内麻薬量が変化することもわかっています。辛い物好き、カプサイシン好きに、脳内麻薬が関係している可能性は大です。

夏バテ防止にカレーが好まれるわけ

日本の家庭で最も一般的に食べられているのが欧風カレー。旧海軍が考案した海軍カレーが元です(余談ですが、海上自衛隊では金曜日の昼食をカレーライスにすることで、海上での曜日の感覚が薄れるのを予防しているとも言われています)。具が多いカレーライスは栄養素のバランスも良く、夏バテ予防に最適な食べ物。詳細はこちらの記事をご覧下さい。

また、西洋医学とは哲学が違い過ぎるため医学と呼んで良いか判断できませんが、インドのアーユルヴェーダとスパイスには密接な関係があります。アーユルヴェーダは漢方とも関係があるとされており、もともとインドでは食事を作る際に、個人の体調に合わせてスパイスを調合していたため、カレー粉という物はなかったそうです。欧風カレーは調合済みのカレー粉を使って作ります。日本人が現在使っているカレー粉の原型を発明したのは、インドではなく英国です。

辛さで発汗しながら、栄養もしっかり摂れるカレーは、夏の暑さに疲れた身体が求める食べ物なのかもしれません。

次ページでは、辛い食べ物のダイエット効果の真偽と、上手な水の飲み方を解説します。
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