残業代計算に必要な割増率を確認
残業手当を計算するために各種割増率の確認をしましょう
しかし企業実務上は、残業や休日出勤が一切ないケースはあまり考えられません。今回は、残業や休日労働があった場合の割増賃金の率について解説します。通常の賃金に割増するのですが、実は率は一定ではないのです。様々なケースによって割増率が変わります。ケースごとにどの率になるのか押さえていきましょう。
まず労働基準法による法定労働時間、法定休日を確認しよう
まずは、残業代の率に入る前に、労働基準法による法定労働時間・法定休日を確認してみます。労働基準法による法定労働時間・法定休日は、次のとおりです。
■週の法定労働時間
休憩時間を除き、週40時間まで。
■1日の法定労働時間
休憩時間を除き、1日8時間まで。
■法定休日
少なくとも毎週1回の休日。もしくは、4週間を通じて4日以上の休日。
労働基準法では上記条件を最低基準としています。企業によってはこの基準以上の労働条件で計算している場合もありますね。最低基準以上の条件なので、従業員に有利な条件となります。自社の就業規則等が、法令どおりの条件なのか、それを上回る条件なのか、まず確認しましょう。自社で決めている労働時間・休日は、それぞれ所定労働時間・所定休日、と言います。
上記の法定・所定の違いを明確にしておかないとこれから解説する各種率による正確な計算ができませんので特に注意してください。
割増率の設定は6種類
通常の残業、深夜残業、休日労働それぞれの割増率を確認しましょう
自社の所定労働時間・所定休日が労働基準法で定められている法定通りであれば、下記の6種類の割増率になります。表では様々な率が出てきますね。残業代は労働した日や時間を確認し区分けができなければ正確な計算ができないのです。
割増率6種類の確実な理解が必要です
*中小企業の場合は、1月60時間を超える場合の割増率(50%、75%)は猶予されています。この率は2010(平成22)年4月1日から施行されましたが、3年経過後に改めて検討されることになっています。
上記割増率を時間軸で確認しよう
勤務日の違いによって割増率が大きく変わります
1.は、分かりますね。法定労働時間(8時間)内の労働なので割増はつきません。
2.は、法定外といっていますので8時間を超えた分が時間外労働です。この場合は、割増率25%以上となります。一般的な残業はこれに該当しますね。
3.はいかがですか。法定時間内の深夜労働って何? と思われるかもしれません。深夜労働は、深夜時間帯(原則22時~5時まで)の労働のことです。深夜労働は25%の割増率になっています。深夜営業している店舗をイメージしてください。働いている従業員によっては、自身の就業時間が深夜時間帯になっていることもあります。この場合には、法定労働時間(8時間)以内の労働であれば、2.の法定時間外労働にはならず、深夜労働の25%の割増だけになるのです。
深夜労働については、4.の50%割増率になるはずだ、と思い込んでいる方が多いと思います。実は法定労働時間(8時間)内での深夜労働については、法令上は25%の割増率でよいのです。
4.は、3.と一緒に整理してください。法定時間外の深夜労働ですから、法定労働時間(8時間)を超えた労働でさらに深夜労働時間帯に入った場合のことです。業務が重なったり、納期が迫っている場合などは、22時を過ぎても会社に残って仕事をすることもありますね。このケースでは、2.と3.を合わせて、50%の割増率となるわけです。
5.は、法定休日労働です。法定休日は毎週少なくとも1日、もしくは4週を通じて4日以上の休日とされています。自社の就業規則等を確認してください。現在は週休2日制の企業が多くなっています。2日のうちどちらが法定休日になるのか迷うところです。
「法定休日は日曜日とする」と記載されている場合は、日曜日に労働した場合になります。記載がない場合は法令どおりとなります。法定休日労働になった日かどうか、都度確認する必要があります。このケースでは、35%の割増率となります。
6.は、法定休日労働が、深夜時間帯(22時~5時)になった場合のことです。このケースでは、3.と5.を合わせて60%の割増率となります。
次のページでは、法定休日労働をした際の計算方法の誤解を記載しています。