乾癬とは
女性の2倍、男性に多い乾癬。他の病気でないか的確な診断を行い、治療を受ける必要があります
<目次>
乾癬の頻度・性差・年齢
乾癬は日本人の0.1%に発病します。男女比は2:1で男性に多い疾患です。主に青年期から中年期に発病します。乾癬の原因
はっきりした原因はわかっていません。家族内発生が多いこと、一卵性双生児に約7割の発症が見られることから遺伝的な要因が考えられています。一方で、ステロイド、免疫抑制剤、抗TNF-α抗体が治療薬として有効なことから、最近では免疫の調整機能が皮膚の表層で障害された疾患と考えれれています。免疫を担当する細胞の中でT細胞と樹状細胞が真皮から表皮に移動し、TNF-α、インターロイキン-1β、インターロイキン-6、インターロイキン-22などが放出され炎症を引き起こします。このインターロイキン22がケラチン産生細胞の増殖を促します。これが乾癬の皮膚で起きている炎症反応となります。乾癬の症状・症例画像・写真
唇以外の皮膚に赤い発疹が生じ、その上に鱗屑(りんせつ)という、皮膚上皮の角質細胞が剥がれ落ち、白色や銀色に見えるものが載っている状態になります。頭、膝、肘などに多く出やすい傾向がありますが、体幹にもよく出現します。特に尋常性乾癬の場合は大きな皮疹で目立ちますが、この病気は伝染性疾患ではありません。
乾癬の大きな紅班が多数体幹に見られます 紅班の中に白色の鱗屑が複数目立ちます
爪に乾癬特有の変形が生じ、これが高度な変形をきたすと、指先を使う作業が難しくなる場合があります。
乾癬で変形した爪 爪の形は高度には変形していません
乾癬の種類
乾癬は、主に5つの病型に分けられます。乾癬の中の小さな違いにより、以下のいずれかに分けますが、大部分は尋常性乾癬です。■尋常性乾癬(ジンジョウセイカンセン)……ほとんどの乾癬はこの病型
乾癬の大きな紅班が多数体幹に見られます 紅班の中に白色の鱗屑が複数目立ちます
■滴状乾癬(テキジョウカンセン)……紅班の大きさが1cm程度 珍しいです。
滴状乾癬 体幹に1cm程度の紅斑が多発します
■膿疱性乾癬(ノウホウセイカンセン)……紅班の上に無菌性膿瘍が生じます。
膿疱性乾癬 膿が主体の皮疹が多数みられます
■乾癬性紅皮症(カンセンセイコウヒショウ)……全身に紅班が出現します。
乾癬性紅皮症 皮膚全体が赤くなります
■乾癬性関節炎(カンセンセイカンセツエン)……手の関節や脊椎に関節炎が生じます。
乾癬性関節炎 指先の関節に発赤 腫脹がみられます
乾癬の特徴・見た目・病理
通常、乾癬の診断は皮疹の形、大きさ、性質などで診断がつきます。難しい鑑別診断が必要な場合、病理検査が行われます。乾癬の紅班には、不全角化(表皮細胞に核が残った状態)、角質肥厚(角質が厚くなること)、表皮のこん棒状延長、角層直下の無菌性膿瘍が見られます。
乾癬の皮膚標本の顕微鏡写真 角質が厚くなり 不全角化も見られます
乾癬の治療法・薬・副作用…外用薬から免疫機能を調整する内服薬まで
■活性型ビタミンD3外用薬- ボンアルファ(濃度0.0002%) 1g 128.5円 副作用は頭痛、皮膚のヒリヒリ感、刺激感、発赤、肝障害、白血球増多、血清リン低下。
- ボンアルファハイ(濃度0.002%) 1g 274.4円 副作用は頭痛、皮膚のヒリヒリ感、刺激感、発赤、肝障害、白血球増多、血清リン低下。
- ドボネックス 1g 136円 副作用は高カルシウム血症、急性腎不全、接触性皮膚炎、総痒。
■ステロイド外用薬
安価ですが、皮膚の副作用として皮膚萎縮、毛細血管拡張症、長期投与で全身の副作用として副腎機能低下などが見られることがあります。外用薬が無効であったり、全身に症状が強く出た場合、全身の療法に移行します。
■光線療法
PUVAと省略されますが、Pはソラレン(psoralen)という薬剤の内服、外用後にUVA(長波長紫外線 320~400 nm)という光を照射することで治療を行います。
副作用として、日焼け、白内障、皮膚癌の発生などがあります。
■ビオチンの内服、注射
ビタミンHの成分ですが、免疫機能を調整し効果を発現します。ビオチン散剤 1g 11.7円程度の薬で安価です。1日5g程度内服します。ビオチン注射 1g 63円 1日2本使用します。この薬はビタミンですので、副作用はないとされています。
■ビタミンAの誘導体
エトレチナート(チガソン)の内服 1日50mgの服用で1377.8円と高価。副作用ですが、中毒性表皮壊死症、多形紅班、血管炎、口唇炎、口内乾燥、皮膚菲薄化、掻痒、脱毛、肝障害、胃腸障害、結膜炎、頭蓋内圧亢進といろいろあります。
■免疫抑制剤
シクロスポリン(ネオラール) 1日250mg程度の服用で2730円と高価です。副作用も腎障害、肝障害高血圧性脳症、感染症、急性膵炎、溶血性貧血、血小板減少、横紋筋融解症、悪性リンパ腫、悪性腫瘍、神経ベーチェット病症状、血圧上昇、貧血、白血球減少、消化性潰瘍、悪心、嘔吐、多毛、振戦、頭痛、めまい、糖尿、高血糖、高尿酸血症などさまざまです。
乾癬の最新治療法
さらに最近認可された治療法として、抗TNF-α抗体であるインフリキシマブ(レミケード)、アダリムマブ(ヒュミラ)の乾癬への治療があります。乾癬の病態の本質である表皮細胞の増殖の原因として、自分のTNF-α抗体が考えられています。この自分の抗体作用を抑えることにより、免疫を抑制し、乾癬の原因と考えられる表皮細胞の増殖亢進を抑制し、効果を発揮します。現時点で一番根本的な治療と考えられます。上記の治療がすべて無効な場合この治療を行います。ただし費用が高額で、1回の治療費だけで約23万円と高額医療の対象となります。この治療を年8回行います。
副作用として免疫抑制による結核の再燃、敗血症、薬剤アレルギー、カリニ肺炎、真菌感染、間質性肺炎、肝機能障害、白血球減少、好中球減少などがあります。
乾癬の治療のまとめ
外用薬、光線療法、内服治療、抗TNF-α抗体治療などすべての治療が乾癬に対して有効ですが、一つの治療を数年続けていると耐性が生じます。そのため次の治療に移行していく必要があります。【関連記事】