DJ1と和菓子
少し前に「ダージリン・ファーストフラッシュ」の中でも特別な存在であるDJ1を頂きました。フレッシュな味わいと緑茶にも似た旨味、「パンジェンシー」と呼ばれる心地良い渋みと爽快感。口に含むたび合わせたい和菓子が次々と頭に浮かびます。
和菓子は相性の良い飲み物と出会ったとき、新たな味わいが開花します。和菓子と飲み物の相性探しを楽しむきっかけになることを願いつつ、私が今回DJ1と一緒に味わった和菓子をご紹介します。
DJ1とは
早いものでは、4月頃から日本に届き始める「ダージリン・ファーストフラッシュ」。インド北東部のダージリンで、厳しい冬を乗り越え、3月中旬~4月中旬に芽吹いた新芽で作られる春摘みの紅茶です。
希少なダージリン・ファーストフラッシュの中でも、初出荷される初摘みの紅茶「DJ1」は、農園主がその年を占う品評会にも出す、とても特別なもの。一般には手に入れるのが難しく、世界中の紅茶通が憧れる貴重な紅茶です。
グリニッシュと呼ばれる若々しい香りと心地よいパンジェンシー、まろやかな旨味。華やかさのある春らしい香りは、紅茶シーズンの到来を告げるDJ1ならではのもの。浅緑色の茶葉で淹れたお茶は、淡いオレンジ色をしています。
DJ1と御薄のお菓子
DJ1を口に含み、まず浮かんだのは御薄(点茶の際、濃茶に対し抹茶の量を少なくたてるもの)のお菓子。御薄よりも澄んだ香りのDJ1には、特に和三盆糖を使った口溶けの良い干菓子や、透明感のある干琥珀などが向くように感じます。早速合わせたのは両口屋是清の干菓子「二人静」。徳島県産の和三盆糖の柔らかな甘みがスッと広がり、同名の茶花のイメージどおり、清楚な印象を受ける品の良い後味。その繊細な香りを打ち消すことなく、共に溶け合うように紅茶の爽快な渋みが重なります。
続いては、少しひねりを効かせたくて、大好きな赤坂・塩野の「錦玉糖」を選びました。寒天で作る半生菓子で、半透明の淡いピンクや水色の三角は、吸いこまれるような美しさ。シャリリとした食感の中に瑞々しさが閉じ込められた、涼を誘うお菓子です。
色により、レモンや柚子、ワインなどがほのかに香るため、紅茶の香りと喧嘩をしないかドキドキしましたが、思いのほか好いバランス。錦玉糖を少しだけ口に入れて紅茶を含むと、花開くように互いの香りが広がります。
そうは言っても、香りのない方が良い、という方には季節の干菓子や半生菓子がおすすめです。今回は、あじさいをかたどった干琥珀(艶干錦玉とも。「錦玉糖」と同じように寒天を使った半生菓子)を選び、角砂糖に見立ててソーサーにのせて楽しみました。
気取らない日常のティータイムのセッティングながら、味わいは贅沢です。