宅地建物取引業法詳説〔売買編〕の第29回は、第47条(業務に関する禁止事項)および第47条の2についてみていくことにしましょう。
(業務に関する禁止事項) 第47条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
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※表題なし 第47条の2 宅地建物取引業者又はその代理人、使用人その他の従業者(以下この条において「宅地建物取引業者等」という。)は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。 2 宅地建物取引業者等は、宅地建物取引業に係る契約を締結させ、又は宅地建物取引業に係る契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、宅地建物取引業者の相手方等を威迫してはならない。 3 宅地建物取引業者等は、前二項に定めるもののほか、宅地建物取引業に係る契約の締結に関する行為又は申込みの撤回若しくは解除の妨げに関する行為であつて、第三十五条第一項第十四号イに規定する宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に欠けるものとして国土交通省令・内閣府令で定めるもの及びその他の宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるものをしてはならない。 |
宅地建物取引業者は嘘をついてはいけない
宅建業法の第47条には、宅地建物取引業者が業務を遂行するうえでの禁止事項がいくつか挙げられていますが、まず初めは重要事項説明や第37条書面(実際は売買契約書などで代用することが大半)において、「事実を告げず、または不実のことを告げる行為」が禁止されています。重要事項説明には該当しないような内容であっても、「相手方等(買主など)の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」については同様です。「それを聞いていれば買わなかった」あるいは「そんなはずじゃなかった」というような事実について、宅地建物取引業者は嘘をつくことができません。
「事実を告げない」とは分かっている問題などについて黙って隠すことであり、「不実のことを告げる」とは事実と異なる説明をすることなどが該当します。
ただし、この規定は「故意」であることが要件とされており、宅地建物取引業者の調査不足や誤認によって生じた「事実を告げず、または不実のことを告げる行為」については、第47条の違反を問うことができません。実際に何らかの問題が起きたとき、それが「故意」であったかどうかを立証することは困難であり、他の規定についての違反に該当するかどうかも判断が難しい面は否めないでしょう。
また、第47条では「不当に高額の報酬を要求する行為」も禁止されています。これは実際に受け取ったかどうかという事実以前の問題として、要求する行為そのものを禁止する規定になっています。
手付金は全額、現金で!
第47条の「手付けについて貸付けその他信用の供与をすること」は分かりづらい部分も多いのですが、現金の持ち合わせがない買主に対して手付金相当額を貸すことだけではなく、手付金を後払いにしてとりあえず契約をさせるような行為を禁止しています。手付金を約束手形で受け取ることや、手付金の代わりに株券など有価証券で受け取ること(それらを認めて契約を誘引すること)、さらに手付金の分割受領なども禁止しています。手付金の分割受領とは、たとえば売買契約上の手付金が100万円のところ、とりあえず10万円で契約をさせておいて、残りの90万円を後払いにするようなケースが該当します。
たとえ買主にとって都合の良い話であっても、「先に契約だけして、手付金は後ほど…」というのはいけません。手付金は、売買契約締結時に全額、現金で支払うことが原則です。
将来について断定的判断の提供も禁止
第47条の2では、「この不動産を買えば、将来必ず値上がりします」というような断定的判断の提供も禁止しています。物件の利便性などについても同様。すでに決定している都市計画の内容などを説明することは構わないでしょうが、未確定のものについて、「数年以内に新駅ができます」「市街化調整区域が市街化区域に変更されて便利になります」といった説明もできません。第47条の規定は「故意」であることが要件とされているのに対し、第47条の2による禁止規定はそれがなく、宅地建物取引業者の誤認、誤解に基づく説明であっても、責任を問われることになります。
また、契約の誘引や、申し込みの撤回または契約後の解除を妨げるため、買主などを「威迫」する行為も禁止されています。相手に恐怖心を抱かせるなどといった「脅迫」にはあたらなくても、買主の意思表示を躊躇させるなど、少し強い態度で接することが「威迫」に該当します。
さらに、「今すぐ契約しないと、明日には別の人に売れてしまう」などと無理に契約を急がせたり、長時間の勧誘によって相手を困惑させる行為や執拗な営業をしたりすることも、この「威迫」に該当するものとして禁止されています。
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