震災後、むしろ長期金利は「下降トレンド」へと突入している
ここでは東日本大震災の発生によって長期金利がどのように動いたか、これまでの推移を見てみることにしましょう。下図は2月10日~5月末までの長期金利の推移です。3月11日の震災を境に一時的に金利は上昇しましたが、4月中旬以降、下降トレンドへと方向感は大きく変化しています。このグラフを見る限りにおいては、足元、金利上昇の可能性が高いとはいえません。震災後、むしろ長期金利は下降トレンドへと突入しているからです。長期金利(新発10年物国債の利回り)の推移
日本銀行の白川総裁は、先の講演で次のような発言もしていました。
「日本の財政状況は非常に悪いにもかかわらず、なぜ長期金利は低位で安定しているのか?国際会議では、こうした質問を頻繁に受けます。そして、この問いに対してはとりあえず低成長と低インフレと答えています。過去10年間の名目成長率と10年国債の金利を比較すると、ほぼ同様の動きをしているからです」。
「過去10年間続いた状態が先行き10年も続くだろうと多くの投資家が予想する場合、日本の国債金利が低位で安定的に推移していることは、とりあえず説明できる現象です」。
日本政府への信認が維持される限り、インフレ(金利上昇)は考えにくい
日銀総裁は、わが国の財政状況は深刻であり、最終的に財政バランスの改善に向けて取り組む意思と能力が損なわれると金利上昇を招くと指摘しています。しかし、その一方で信認が維持されている限りにおいては抑止効果が期待できると述べています。「それだけに、財政政策を運営する政府・国会や、金融政策を運営する中央銀行の責任は重大であり、改めて信認の重要性を認識することが極めて重要」(白川総裁)
と覚悟を述べています。こうした日銀総裁の姿勢を見る限り、少なくとも私ガイドには日本がインフレ(金利上昇)に陥るようには思えません。目先の短期的な変動はあっても、金利が上昇し続けるとは考えにくいのです。
もちろん、将来のことなど誰にも分かりません。しかし、低成長の成熟社会において、日本が急激なインフレに突入することは考えにくいと思われます。80年代後半のバブルが再び起こるなどと、考えている人はいないはずです。今後、住宅ローンを組む際の金利スタンスとしては、各人のリスク許容度の範囲内で積極的に低金利(変動型の金利タイプ)を狙って失敗はないだろうと、私ガイドは考えています。