子どもとよい関係を築く親子調理
続けて川島教授は、「親子で調理をすることは、子どもたちの脳の発達を助けるだけでなく、親子の関係性を強めるためにも役立つ」というメリットについても述べられました。幼稚園児と保護者による実験で、週に一度親子でホットケーキをつくっただけで子育て中の親のストレスが下がったという結果が得られたそうです。また子どもたちにも、発達心理学でいう「緊急避難基地」ができました。
子どもたちは、子どもなりに集団生活の中では極度のストレスにさらされているものです。けれども緊急避難基地を持っている子どもたちは嫌なことがおきても、前向きに生きていくことができます。
緊急避難基地とは、どんなに嫌なこと、悲しいこと、辛いことが外であっても、家に帰って家族にギュッと抱きしめてもらえたら安心できる、という感覚です。
最後に川島教授は、「バランスのよい朝ごはんを食べ、また親子で調理をすることは脳の働きをよくすること、さらに親子関係をよくするためにも重要だということが言えます。食育を考えると、朝ごはんをきちんと自分でつくるだけの最低限の知識と技術を身につけさせることが重要です」と述べられました。
家族がともに囲む和やかな食卓のシーンは、健康的かつ理想的です。けれども経済状況も厳しい現代では、仕事によってはいやがおうにも夜型の生活になってしまう大人もいて、朝食を作ったり食べる余裕がない現実もあることでしょう。
もしもそうであっても、親だけが担うのではなく、成長するにつれて子どもが自分で作って、あるいは家族のために朝ごはんを作ることがあってもよいはずです。そのためには、学校教育に任せるだけでなく、日頃から家族で一緒に料理を楽しむ機会をもつこと、その積み重ねが大切なのだと思います。
食べる能力を身につけるということは、私たちが想像していた以上に、よりよい人生を築くためのチカラとなるようです。
参考/
・「朝ごはんに関する意識と実態調査」(東北大学加齢医学研究所・川島隆太研究室)