別格のカイエンターボ
2代目にスイッチしたポルシェ・カイエンの魅力は、幅広いラインナップを用意し、それぞれまったく違う世界観を提供してくれる点だろう。3.6LのV型6気筒NAエンジンを積む「カイエン」、4.8LのV8 NAを積む「カイエンS」、先月取り上げた3.0LのV6エンジンにモーターを組み合わせたパラレルハイブリッドの「カイエンSハイブリッド」、そして最上位の「カイエンターボ」には4.8LのV8ツインターボエンジンを搭載し、500ps/700Nmというスペックだけでも別格のモンスターぶりを示す。
しかし、数値だけを見れば500ps超のSUVはほかにもある。メルセデス・ベンツの「ML63AMG」は、新しくなったカイエンよりも古株ながら6.3LのV8エンジンを積み、510ps/630Nmを誇る。5.0Lのスーパーチャージャーを積むレンジローバースポーツの「5.0 V8 Supercharged」は、510ps/625Nmとこちらも500ps超のモンスターだ。数値を見ると「カイエンターボ」の700Nmという抜きんでた分厚いトルクが目を引く。さらに、ターボながらピックアップとレスポンスのいいエンジンなのも大きな魅力だ。もちろんカイエンターボの見どころは、エンジンの出来だけではないのだが。
カイエンターボこそ、らしさが濃厚
初めてニューカイエンに乗ったのは「カイエンS」だったのだが、SUVとは思えない軽快なハンドリングや重心の低さには本当に驚かされた。狭い山道でも難なくコントロールできるし、動きに無駄がない。研ぎ澄まされた走りはまさにスポーツカーだと感じ入った。つぎに、さらに軽快感があって、素の魅力がある「カイエン」、そして先月レポートした「カイエンハイブリッド」に乗ることができた。カイエンハイブリッドは、ご時世にふさわしい環境性能を有しているし、EVモードやアイドリングストップ時の静粛性の高さも魅力だ。だが一方で「カイエンS」や「カイエンハイブリッド」は、拍子抜けするほど軽いパワステやペダルタッチなど、軟派なイメージもなくはない。よく言えば洗練されているのだが、カイエンらしい濃さがあまり感じられなかった。
しかし、カイエンターボはまさに別格。街中でも高速でもズシリと重いステアリングを握り、迂闊に深く踏み込むと強烈な加速Gに見舞われる走りは強烈そのもの。エンジン音もマフラーからのサウンドも物足りないことはまったくなく、そのパワーを一般道で試すのは、まず腕がないと無謀だ。それでいてターボにもアイドリングストップも付くなど、時代の要請に応える装備も用意する。価格も1538万円と「カイエン」の倍以上と別格ではあるが、説得力のある走りを具現化しているのも事実だ。
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