可愛くエコを訴える絵本 『タンポポたいへん!』
節電、生物多様性、エコポイントなど、エコに関する用語がすっかり身近なものとなり、エコ意識の高まりを感じさせる昨今です。それを受けて、ガイドのもとにも「ロングセラーの絵本以外で、自然保護をとりあげた面白い絵本はないかしら?」とのご相談が数多く寄せられるようになりました。
そんな中、ペットとして子どもたちにもお馴染みのモルモットが、タンポポを絶滅から救う姿を描いたカワイイ絵本が出版されました。サッカー好きな普通の(?)モルモット・クリストファーくんが挑んだタンポポ再生のお話です。
モルモットのクリストファー、絶滅寸前のタンポポを救う!
モルモットが丘のどこへ行っても「ムシャムシャッ クシャクシャッ」と音が聞こえてきます。それは、タンポポの葉っぱをかじる音。みんなタンポポの葉っぱが大好きで朝から晩までかじっています。ところが、みんなが無計画に食べ続けるものですから、とうとうタンポポがなくなってしまいそうに……
タンポポが品薄になって、レストランのメニューが変わりました。インターネットでは有機栽培のタンポポが高値で取引されるようになっています。どこかの国の買占め騒動を思わせるような皮肉な展開に、大人の読者はちょっと苦笑いかもしれません。
でも、まだまだ希望を捨てることはありません。モルモットのクリストファーくんが、おうちの庭にひっそりと生き残っていたタンポポを見つけ、このタンポポを育てる決心を固めます。ここから先のクリストファーくんの懸命な姿が実に健気です。図書館で栽培方法を学び、時には食欲に負けそうになりながらも、ついにモルモットが丘にたくさんのタンポポを復活させるのです。
「エコを扱う本はつまらない」なんて誰が言ったの?
絵本を読んだ後ならとっても美味しそうに見えますね!?
この作品は、ストーリーも絵もとてもわかりやすく、作者のメッセージがストレートに伝わってきます。自然保護の問題は、子どもたちにもぜひ考えて欲しいことですが、説明ばかりの理屈っぽいお話や「~しなければいけません」というようなお説教くさい絵本は、1度は読んでも「それでおしまい」になりがちですね。その点この絵本は、繰り返し読み聞かせをせがまれそうな楽しい作品です。
なぜなら、お話のわかりやすさに加えて、
- 外食メニューやインターネットなど、ロングセラーにはない新しい本ならではのアイテムが、お話に上手に取り入れられ、子どもたちを飽きさせない。
- タンポポを救ったクリストファーにとって、食糧確保だけでないご褒美ともいえるような幸せな結末がもう1つ用意されている。
- キャラクター商品が発売されてもおかしくないと思えるほど、登場するモルモットたちが愛らしい。
など、子ども心をギュッとつかんで離さない工夫がいっぱいなのですから。
そんな訳で、「作品としてめいっぱい楽しめるエコ関連の絵本」をお探しの方に、この作品をおすすめします。但し、クリストファーくんたちのあまりの可愛らしさに、お子さんから「モルモット飼いたぁ~い!」と駄々をこねられても、ガイドは関知いたしませんので、悪しからず(笑)。
【書籍DATA】
シャーロット・ミドルトン:作/絵 アーサー・ビナード:訳
価格:1575円
発売日:2011/4/20
出版社:鈴木出版
推奨年齢:4歳くらいから
購入はこちらから