睡眠/理想の睡眠環境・寝室・ベッド・生活習慣

阪神大震災で避難所生活をした睡眠専門医のアドバイス

日常生活の中でも実際の経験者からのアドバイスはとても貴重です。阪神淡路大震災で避難所生活を経験された睡眠医療の専門家がいます。専門家としてのその方の実体験に裏打ちされた、避難所での睡眠の質を上げる方法をご紹介します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

避難所での睡眠を良くするためにできること

阪神淡路大震災

阪神淡路大震災の教訓を活かしましょう(画像:Kizu Naoko)

生活物資や環境が不十分な避難所の生活では、体力を温存するために少しでも睡眠の質を上げることが大切です。

日本の睡眠医療におけるトップランナーの一人である日本大学医学部精神医学系の内山真教授は、阪神淡路大震災のときに避難所生活を経験されています。ご自身の体験から、避難所で眠るときのポイントを3つ挙げています。

まず1つ目が、できるだけ暖かくして眠ることです。特に、手足が冷たいとグッスリ眠れなくなります。タオルを巻いたペットボトルにお湯を入れて湯たんぽを作り、腕や足の付け根あたりに置くと、手足の先まで温かくなります。靴下や手袋をして眠ることも役に立ちます。

2つ目は、昼夜のメリハリをつけることです。日中は明るいところで体を動かし、夜は暗くして眠る、というのが人間の基本的な行動パターンです。朝、目が覚めたら、しっかりと太陽の光を浴びましょう。こうすることで、体内時計が新しい1日を刻み始めます。日中はできるだけ活動的に過ごすと、夜にはグッスリ眠れます。

3つ目は、避難所に眠れない人の場所を作ることです。睡眠の環境が悪く、悩みやストレスが尽きない避難所生活では、眠れないことがあるのは当然です。そんなときに暗いところで悶々としていると、なおさら気持ちが落ち込んで不眠がひどくなります。スペースの問題もあるでしょうが、夜間に眠れない人が温かく起きていられる場所を避難所に確保してみてください。

1カ月以上続く不眠は要注意

視線

他人の視線を遮ると、ストレスが減って眠りやすくなります

厚生労働省のサイトには、震災に被災された方々の不眠・睡眠問題への対処の仕方が掲載されています。ここでは、その要点をご紹介します。

震災直後の1~2週間は、誰でも寝つきが悪くなったり、夜中に目覚めたりするものです。これは正常な脳の反応で、余震などの非常事態に備えているためですから、あまり心配しないでください。このようなときには焦らず、静かに横になって休養するようにしましょう。

被災後1カ月以上たっても、不眠や悪夢、日中の強い眠気などが続くときは、注意が必要。長引く不眠は脳の働きを低下させ、疲労の蓄積や免疫機能の低下をもたらします。このままではケガや事故、病気の原因になりますから、積極的に不眠の対策を取りましょう。

不眠の原因でもっとも大きなものは、ストレスです。食事や水の確保はもちろんですが、居住空間でのプライバシーの確保にも気を配ってください。体育館などの広いスペースに多くの人々と暮らしているときには、ダンボールなどで家族ごとに囲いを作るだけで、他人の視線をあまり意識しなくても良くなりストレスが弱まります。

慢性不眠に陥る人は、「夜は何とかしてでも眠らなければいけない」と焦りがちです。この不眠に対する恐怖心で、逆に眠れなくなってしまうことが多いのです。このような方は、睡眠へのこだわりがなくなる日中にはよく眠れることが多いので、積極的に仮眠をとりましょう。昼寝が多すぎると一時的に睡眠リズムが崩れてしまいますが、それよりもまず十分な睡眠と休養が大切ですから、少しでも眠ることをお勧めします。

【関連サイト】
東北地方太平洋沖地震に関連した不眠・睡眠問題への対処について
避難所でもしっかり眠るために……災害時の睡眠術
災害発生! 避難先での睡眠の取り方

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