労務管理/解雇に関する注意点

「解雇」でやってはいけない9つのルール(2ページ目)

解雇は、企業側からする労働契約の一方的な解除です。日本の企業は、一般的に定年退職まで勤めるのが前提となっていますので、解雇は、従業員にとって大変な不利益になる可能性があります。従って実施する場合にはトラブルがないようプロセスを踏むことが強く求められます。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド


解雇でやってはいけない9つのルール

労働基準法、労働契約法等に定められたルールを遵守することがトラブル回避の第一歩です。解雇をする場合、まず法令ではどのような決まりがあるのかここで確認しましょう。

そもそも次の場合は、法令で解雇そのものが禁止されます。

  1.  業務上の傷病による休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)
  2.  産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)
  3.  国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)
  4.  労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇(労働基準法第104条)
  5.  労働組合の組合員であること等を理由とする解雇(労働組合法第7条)
  6.  女性(男性)であること、女性の婚姻、妊娠、出産、産前産後休業等を理由とする解雇(男女雇用機会均等法第6条、第9条)
  7.  育児・介護休業の申出をしたこと、育児・介護休業を取得したことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条、第16条)
  8.  通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者について、パートタイム労働者であることを理由とする解雇(パートタイム労働法第8条)
  9.  公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法第3条)

1.と2.で記載したその後30日間とは、休業期間が終わってもその後30日間は引き続き解雇をしてはいけないという意味です。

解雇をしなければならない場合、まず上記に該当しないことを確認の上実施することです。該当する場合の解雇は、即トラブルにつながります。

法令で決まっている解雇手続

解雇をする場合には、従業員対し30日前に予告をしなければなりません

解雇をする場合には、従業員対し30日前に予告をしなければなりません

次に手続きを確認していきましょう。やむを得ず解雇を行う場合には、労働基準法で定められている手続きに従います。30日前に解雇の予告を行うことや、予告を行わない場合には解雇予告手当を支払うことが必要となります。

■解雇予告と解雇予告手当
解雇を行う場合には、解雇しようとする労働者に対して、

  1. 少なくとも30日前に解雇の予告(予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を支払う必要あり)
  2. 予告を行わない場合には、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払い

をしなければなりません。従って、即日解雇をする場合では1.の予告をしないわけですから2.により手当の支払いをしなければならないのです。この点見落としがちですから注意しておきましょう(労働基準法第20条)。

■就業規則による退職に関する事項の記載、就業規則の周知
どのような場合に解雇するか等退職に関することは、労働条件の重要事項です。このため、今回のテーマである解雇や定年制等の退職に関する事項については、就業規則に定めておく必要があります。またトラブルを避けるためには、従業員への周知が大切です。就業規則を常時各作業場の見やすい場所に掲示または備え付けることや書面を各人に交付しておくこと等が、まさに労務管理の勘所となります(労働基準法第89条、第106条)。

退職時の証明書交付義務

従業員が退職する場合、次の事項について証明書を請求したときには、遅滞なく証明書をその退職従業員へ交付しなければなりません。また、従業員に解雇の予告をした場合、従業員が解雇の理由について証明書を請求したときには、遅滞なく証明書を同様に交付しなければなりませんので注意しておきましょう。証明書の項目は以下の通りです。
  • 使用期間
  • 業務の種類
  • その事業における地位
  • 賃金
  • 退職の事由(解雇の場合は、その理由を含みます) (労働基準法第22条)
     
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