ゲームを紹介するコストと、ゲームユーザーの力
40時間かかるゲームをクリアしたら、それって1週間分の労働時間に相当してしまいます。(イラスト 橋本モチチ)
さて、最後にこの記事を書こうと思った理由、ゲーム業界のある問題点についてお話して終わりたいと思います。ゲーム業界に多少なりとも関わる人間として、常々難しいと感じていることに、ゲームの面白さを伝えるためのコストという問題があります。テレビや雑誌に広告を載せるのは高い、というような話ではありません。ゲームを紹介するには、ゲームを遊ばなくてはならず、その人的コストがあまりに大きいという問題です。
例えばガイドが、1本のゲームを紹介するのに、1時間や2時間遊んで原稿を書いても、なかなか説得力は出ません。きちんとクリアしてから書こうと思えば短くても10時間程度。30時間、40時間とかかるタイトルもザラです。中には、100時間以上も遊んでいくうちにどんどん面白さが追求されていくようなものもあります。
小説も、マンガも、映画も、音楽も、鑑賞するのにそこまでかかるものは極めて珍しいでしょう。しかし、ゲームは1本1本が平気でそれくらいの時間を持っていくんですね。そうすると、数多くのゲームを紹介する方法は2つしかありません。さわりだけ遊んで紹介してしまうか、それとも、時給換算したらありえないようなお金で働き続けるかです。
これは、ゲームメディアの仕事だけでなく、ゲームメーカーの広報さんや営業さん、ゲーム売り場のバイヤーさんや店員さんにも、結局似たようなことが言えます。つまり、ビジネスの構造として、ゲームを紹介する仕事というのは基本的に破綻しているんです。ゲーム業界は、それをごまかしごまかしやっているというのが実際のところです。
そういう業界ですから、ゲームを紹介してくれるユーザーさんというのは、非常に貴重な存在です。多様性のある色んなゲームが世にでていくには、必要不可欠だと言ってもいいかもしれません。ですから、そういう方のお役に少しでも立てればと思って、ガイドの持っているコツについてご紹介しました。
自分が面白かったゲームを誰かに紹介し、それを読んだ人が、遊んだよ、面白かったよ、なんていうとゲームユーザーとしては実に誇らしい、幸せな気持ちになれます。ぜひより多くの人に、ゲームを遊ぶだけでなく、紹介するという楽しさも知っていただいて、もっとたくさんのゲームがもっと色んな人の手によって紹介されるようになればと思います。
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