シトロエン/シトロエン

ハマるシトロエンは、“趣味車”なのに実用車

歴史的に大衆車レベルで数々の新趣向をもつ“ぶっ飛んだ”モデルを送り出してきたシトロエン。フツウの実用車ながら、“一度ハマったら抜けられない”マニアックな支持層を獲得している。実用車なのに趣味車のイメージ、というギャップが楽しめる、特別に見えるからこそフツウのクルマが欲しい人に薦めたい。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

他の欧州ブランドよりいっそう趣味的香り

シトロエン2CV

1948年から1990年まで約387万台が生産された小型大衆車の2CV。「こうもり傘に4つの車輪を付けたもの」というコンセプトで開発された、廉価で高い実用性をもつフランスの国民車

シトロエンと聞くと、同じフランスのルノーやプジョーよりもいっそう趣味的な香りがしてしまうのは、なぜだろう……。実はヨーロッパでは常に台数順に上から5、6番手の、オペルやフィアットくらいの“フツウさ”の大衆車であるというのに。

おそらくそれは、シトロエンが歴史的に“ぶっ飛んだ”モデルを、それも大衆車レベルで作ってきたからだろう。奇抜なデザイン、前輪駆動(FF)、気体バネ(ハイドロニューマチック)といった数々の新趣向は、先進イメージで一般にアピールしたのみならず、“一度ハマったら抜けられない”マニアックな支持層を獲得した。そんな人たちが多くいるブランド=フツウの人は選ばない趣味車、となったのかもしれない。

常に新しいものを志向し続ける

シトロエンDS

スプリングの代わりにオイルと窒素ガスを用いた、独自のサスペンションであるハイドロニューマチック。1954年に15-SixHのリアに、1955年にデビューしたDS(写真)に初めて採用された

創始者アンドレ・シトロエンもまた、奇才天才のエンジニアだったようだ。シトロエンのシンボルマーク、ダブルシェブロンは、彼が自動車メーカーへと転身する源となった歯車(ヘリカルギア)をモチーフとしたもの。常に新しいものを志向する彼のマインドが、その後のシトロエンのあり方を決定づけていることは間違いない。

もっとも、よく知られているように、今ではプジョーと同じ会社である。1970年代後半からそういうことになっている。だからといって、中身が全く同じというわけではなく、同じ工場でアッセブリーできるくらいには同じ(エンジンやミッションなどお金のかかる主要パーツ)だけれども、プジョーとはデザイン的にも乗り味的にもまったく違うクルマを作り続けているのだった(最新鋭の自動車組み立て工場ではスポーツカーとミニバンを一緒に組み立てることだってできるのですからね)。

“フツウ”に欲しい人にこそおススメしたい

シトロエンDS3

2010年にシトロエンの新しいラインナップ、DSシリーズの第一弾として登場したDS3。クリエイティブテクノロジーというブランドスローガンのもと、斬新でダイナミックな個性を主張する

そうはいうものの、国産メーカーの多い日本では、輸入車の販売比率は全部合わせて1割ちょい。シトロエンはおろかフォルクスワーゲンでも趣味の領域にカウントされてしまいそうな状況だから、やはりシトロエンはかなり特別な選択肢に見えてしまうだろう。おそらく、アルファロメオくらいにはマニアックな存在。

だからこそ逆に、フツウにコンパクトカー(C3やDS3)が欲しい、フツウにハッチバック(C4)が欲しい、フツウにミドルサイズセダン&ワゴン(C5)が欲しい、フツウにミニバン(C4ピカソ)が欲しい、という人に薦めてみたい。何度も言うけれども、シトロエンは立派な実用車。でも日本では趣味車のイメージ。だったらそのギャップを思いっきり楽しんでしまうのって、いかが?

日常性をほとんど犠牲にすることなく、かなり趣味的に楽しめてしまえるクルマ。それがシトロエン。実際、その乗り味は、小さいのから大きいのまで、国産車とはもちろん、ドイツ車その他輸入車とも一線を画していて、なるほどハマると抜け出せないかも……。

なるほど、それをしてマニアックというのであれば、頷こう。
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