シトロエン

“フランス流”個性と実用。シトロエンC3に試乗

欧州市場最激戦区となるBセグメントの量販モデルが、ユニークなスタイルでモデルチェンジを果たしました。他にはないスタイルとシンプルなインテリア、それでいて実用性は失っていない所も魅力です。“シトロエン”らしい走りも備えた、コンパクトハッチの魅力をお伝えします。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

「センスの見せ所だよね」と思わせるカタチ

シトロエンC3

ボディサイズは全長3995mm×全幅1750mm×全高1495mm。ベーシックグレードのフィール(216万円)と、装備充実のシャイン(239万円)をラインナップする

200万円台で手にすることのできる輸入車のなかでは珍しく、公式サイトのコンフィギュレーション(仕様決めシミュレーション)を試したくなったモデルだった。

その雰囲気が常識の範囲内に収まるクルマであれば、頭のなかで“赤だ、黄だ”とイメージしさえすれば、もうそれで十分。けれどもシトロエンC3は、違った。スタイルや仕様など、見映えがとてもユニークで、自分ならどんなカラーコーディネーションを楽しむだろうか、と、あれこれ想像したくなってしまう。センスの見せ所だよね、と思わせるカタチ、でもある。

シトロエンC3の歴代モデルといえば、他に比べてちょっとは洒落っ気の効いたフシもあったけど、とはいえ欧州市場では最激戦区となるBセグメント用の量販モデル(リッター+αクラス)だったから、変わったクルマの多いシトロエンのなかでも、それなりに常識的な成り立ちだった。ところが。三代目へのフルモデルチェンジで、ガラリと雰囲気を変えることに。C4カクタスとよく似たデザインモチーフを前面に押し出すことで、独自の存在感を得ている。そういう意味では、変わり種の得意なシトロエンらしくなった、ともいえる。
シトロエンC3

シャインではボディと別の色にできるバイトーンルーフを選択可能。ピラーをブラックアウトさせることでルーフが浮き上がっているように見せている

保守的なヨーロッパ市場の動向は、デイリーカーとしてのSUV人気と、それを後押しする若い世代の好みを反映して、大きく変わろうとしている。C3のモデルチェンジに当たって、シトロエンはそこに商機と勝機を見出したのだった。欧州市場の最前線を走るクルマかも知れない。

他にはない雰囲気ながら、実用性は失わず

シトロエンC3

6つのエア封入カプセルをもつエアバンプは、軽い接触からボディを保護。前端のバンプにはカラーアクセントも、ボディカラーに合わせてレッドとホワイトを用意する

とにかく、他にはない雰囲気のルックスだ。全体のシルエット的には、これまでのC3と同様、割と常識的な2ボックスハッチバックスタイルなのだけれど、ホイールアーチにSUVテイストを採りいれ、エアバンプと呼ばれるサイドプロテクターをドアまわりにあしらうことで、いっきに個性派に。“だまし目”のフロントマスク(ヘッドライトが上段ではなく中段)、シトロエンが初めてではない(日産ジュークが先駆的)が、C4カクタスよりもシャープな表情で“抜け目”なし。
シトロエンC3

水平基調のダッシュボードをはじめ、簡潔で無駄のないレイアウトで仕立てられた。7インチのタッチスクリーンも備えた

シンプルなインテリアは、クラシックな実用車の雰囲気をモダンに再現しているように思う。ディテールにデザイナーの意思が行き届いていて、こちらも抜かりなし。マテリアルは安くても、また量販車ゆえの妥協を迫られても、デザイナーの力量でカバーする。フランス車が魅力的に映る、ひとつの美点だ。

それでいて、実用性を失っていないところが大事なポイント。フランス人は我々が思う以上に合理的。生活のデザインにこだわるけれど、そのために機能をおろそかにしたりはしない。座り心地の良いシートや扱い易いスイッチ類などは、その典型というべきだ。触れる機会の多い場所、スイッチ類はもちろん、ドアノブやシフトノブ、エアコン吹き出し口あたりは特に、デザインと使い勝手にこだわったとみた。

世界で初めて、コネクテッドカムとシトロエンが呼ぶルームミラー一体型のフルHDカメラを標準装備とした。ドライブ中の景色(前方120度範囲)をワンタッチで撮影、録画できるというもの。スマホに専用アプリを落とし込めば、収録データをSNSでシェアできるなど、ドライブをいっそう楽しむツールとして、いろいろ使えそう。思い立って行き先も決めずドライブしたくなるようなクルマであればあるほど、偶然出会った素晴らしい景色や光景を記録できるツールは面白い。
シトロエンC3

快適性というキーワードを現代風にアップデートされたインテリア。内装のデザインは家具や旅行といったキーワードからインスピレーションを得ているという

シトロエンC3

ラゲージ容量は通常300Lを確保。大きなドアポケットやUSBポート付きセンターコンソールなど、実用性も高められている


ハイドロを捨ててなお、走りに“らしさ”を残す

シトロエンC3

分割式のデイタイムランニングランプ(上側)とヘッドライト(下側)が特徴的。大型のボディ同色バンパーはボンネットを実際より高く見せる効果がある

せいぜい二人乗り、というのがこのクラスの基本的な考え方だ。パッケージング的には平凡だと言っておかなければならない。ライバルに優るところは、ほとんどない。そこは、トールワゴン風でもミニバン風でもなく、純然たるスモールカー。全長も4mを切っている。むやみに後席を広くしたり、荷室を拡げたりして、肝心の機動力を失いたくはなかったのだろう。かといって、Bセグメント的に不満のないレベルには仕上がっているから、それもまたフランス的合理主義の表れだと言えそうだ。
シトロエンC3

最高出力110ps/最大トルク205Nmを発生する1.2Lターボを搭載。6ATと組み合わせられ、JC08モード燃費は18.7km/lに

最後に試乗の報告を。エンジンは、定評のあるPSA製1.2L 3気筒ターボで、6ATを組み合わせている。走り出して驚くのは、加速の力強さだった。他のモデルで体験済みのエンジンなのに、いっそう軽快に思える。少し高めの着座位置やダッシュボードまわりのポップなデザインなども、軽やかさを感じさせる要因かもしれない。いや、その前に、個性的なスタイリングで気分が盛り上がっていたか。

そのうえ、変速はけっこうダイレクト。きびきびとした走りのアピールに輪をかけた。カジュアルな見映えによく似合う、まずはポップな出足のライドフィールだ。乗り心地も実にいい。ハンドリングなど、けっこうダイレクトな動きをみせるにもかかわらず、動作の終わりしなにスーッと力がゆるむ感覚があって、余韻としては鋭さより滑らかさの方がより強い。ああ、これがシトロエンだよね、と自然に思えてくる。伝家の宝刀(ハイドロニューマチック)を捨ててなお、走りに“らしさ”を残す上手さに舌を巻いた。
シトロエンC3

アクティブセーフティブレーキやスピードリミットインフォメーションを装着。車線はみ出しを警告するレーンデパーチャーウォーニングや、斜め後方の車両を検知するブラインドスポットモニター(シャインのみ)なども備えている


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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