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ロタウイルスワクチンの効果・接種方法

【小児科医が解説】高熱と嘔吐や下痢の症状が続くロタウイルス胃腸炎。治療法は脱水を防ぐ対処療法しかないため、ロタウイルスワクチン接種による予防が推奨されています。ロタウイルスワクチンの効果、種類、接種方法、副作用について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

ロタウイルス胃腸炎とは……症状と治療方法

ロタウイルスワクチンの効果と接種方法

ロタウイルス胃腸炎になると下痢が続き、時に脱水でつらくなってしまいます

高熱と2~3日続く嘔吐、10日ぐらい続く下痢を症状とする胃腸炎です。ウイルスのために特効薬がなく、脱水を防ぐしか治療方法はありません。下痢が頻回で嘔吐も繰り返すツライ症状で、40人に1人は重症化します。世界では、下痢症による5 歳未満の小児の死亡の17%を占め、その約4 割がロタウイルスによります。ロタウイルス感染時に、けいれんや意識がなくなるような症状があれば、ロタウイルスによる脳症を起こすこともあります(詳しくは「子供のロタウイルス胃腸炎の症状・治療・予防」をご覧ください)。

ロタウイルスには丁度インフルエンザの香港型、ソ連型と言われているような、多くの種類がありますが、ヒトに感染するのは5種類です。

ロタウイルスの感染、重症化を防ぐワクチンがあります。

WHOはロタウイルスを防ぐのため、ワクチンを推奨しています。ロタウイルスワクチンが認可されている国は既に100 カ国以上になり、アメリカ合衆国、ベルギー、ルクセンブルグ、オーストリア、ブラジル、メキシコ、ベネズエラ、ニカラグア、エルサルバドル、パナマ、エクアドル、オーストラリアの12カ国では以前より乳幼児の定期予防接種になっていました。日本でも今年2020年10月より定期接種になり、2020年8月1日(土)以降に生まれた子どもを対象に接種が行われています。
 

ロタウイルスワクチンの接種方法

ロタリックス

経口接種で行うロタウイルスワクチンの写真です(グラクソ・スミスクライン株式会社提供)

ポリオ生ワクチンと同じで経口接種と言って、口からワクチンを入れます。生ワクチンと言って、ウイルスの毒性を減らしたワクチンですので、麻疹や風疹、日本で以前使用していたポリオワクチンと同じです。

ロタウイルスワクチンは下記の2つがあります。
  • ロタリックス(グラクソスミスクライン)
  • ロタテック(MSD)
上記はそれぞれの特徴、接種時期が異なります。
初回の接種は定期接種として、出生6週0日後から接種可能で、標準的接種期間は生後2ヶ月から出生14週6日後までとなっています。15週を超えると接種することができません。任意であっても摂取できません。
2回目以降も、同じ種類のロタウイルスワクチンで接種を受ける必要があります。

■ロタリックス
ヒトの1種類のロタウイルスを弱毒にした生ワクチン
接種回数:2回
主な接種時期:生後2カ月と4カ月 
       1回目は出生6週から14週6日まで
       1回目と2回目では27日以上空けて、接種は24週まで
量:1.5ml
経口接種

効果:重症のロタウイルスによる下痢に対する効果:71.7~92.4%
ロタウイルスによる入院を防ぐ効果:69.6~93.5%

■ロタテック
ウシの5種類のロタウイルスでヒトには弱毒になっている生ワクチン
接種回数:3回
主な接種時期:生後2カ月と4カ月と6カ月
       1回目は出生6週から14週6日まで
       1回目と2回目では27日以上空ける
       2回目と3回目では27日以上空けて、接種は32週まで
量:2ml
経口接種

効果:重症のロタウイルスによる下痢に対する効果:88.3~100%
ロタウイルスによる入院を防ぐ効果:90.5~98.2%

ロタテックの方が、3回接種するために若干効果が高いと言えますが、基本的に重症のロタウイルス感染症、入院を防ぐ効果はほぼ同じ程度高いと言えます。
口からの接種(経口接種)ですので、吐き出しても複数回行うこともあって、1回としてカウントします。

 

ロタウイルスワクチンの自費値段

ロタリックス、ロタテックどちらも自費での値段の合計でほぼ同じ金額25000円から30000円程度になっていることが多いです。ただし、2020年10月1日から定期接種になりました。
 

ロタウイルスワクチンの副作用

気になる副作用ですが、重篤なものはありませんが、腸重積には注意が必要です。腸重積は腸が重なってしまい、重なった部分への血液が行かなくなり、腸が傷んでしまう病気で速やかに腸の重なりを取る必要があります。

先行発売されたロタリックスでは、咳や鼻水が3.35%、発熱が1.38%、刺激に対して敏感になるのが7.28%、下痢が3.54%、嘔吐が1.57%でした。

腸重積を起こすのはではないかと言われていましたが、生後60日以内に初回のワクチンを接種した乳児では腸重積は起こらなかったという報告(Simonsenら報告)があり、生後3カ月までは腸重積は起こりにくいと考えられています。生後6カ月以上になると腸重積になる可能性があるのですが、ロタウイルスワクチンをしなくてもある頻度で腸重積は発生し、ロタウイルスワクチンで頻度が増えないという報告もあります。

しかし、現時点では、安全をとって、生後6カ月までにワクチンを終了することが望まれています。2011年の9月でのロタリックスの国内治験の結果では、腸重積の報告はありませんでしたが、市販後調査では、ロタリックス、ロタテックともに0.004%に腸重積の発生が見られておりますが、重篤な例は非常に少ないと言えますが、ないとは言えませんので、接種後1-2週間は注意し、不機嫌、嘔吐、血便などの腸重積の症状に注意しておきたいものです。

ロタウイルスは感染力が強く、ロタウイルス感染の約30%は病院を含めた集団で感染します。集団生活をすると、一度は感染してしまう感染症です。

ロタウイルスによる脳症やロタウイルスによる脱水で重症化した例を経験しますと、罹ると治療方法が無く、ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぐことが望ましいです。

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