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住宅各社、なぜ「復刻」「原点回帰」に走る?(2ページ目)

ここにきて最近、大手ハウスメーカーの「原点回帰」「復刻版」ともいえる商品やモデルハウスが増えてきている。競争がますます激化し、どこの企業の住宅も省エネやエコポなどを謳う今、消費者にとって「企業の顔」が見えにくくなっているのかもしれない。この流れが何を意味しているのか、最近の原点回帰の事例を見てみたい。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

住友林業が超プレミア純和風住宅

雪

見学会当日は純和風にぴったりの雪景色に

「当社が誇る住宅の設計力・資材調達力・現場生産力をいかんなく発揮した高級和風住宅」という自信のある触れ込みで行われた、東京・世田谷の駒沢展示場の竣工見学会。当日は偶然にも雪。住友林業関係者は「雪を願っていた」。雪景色は一層、数奇屋建築の文化を体現した高級和風住宅を際立たせてくれるからだ。

中に入ると、高級和風旅館を超えた、新築なのに、京都の古寺の中を思わせる数寄屋造り。巾3間のゆったりした居間は床暖房対応のブラックウォールナットの無垢材フローリング、正面の壁タイルは、このモデルハウスのために窯元で焼いたという信楽焼タイル。存在感のある二曲屏風は、京都の着物染司である吉岡幸雄氏の紅と藍で染めた斐伊川和紙を、東京都の伝統工芸士に認定された手漉き和紙職人・鈴木源吾氏が仕上げた、まるで芸術品。

外観

モダンなモデルハウスが立ち並ぶ駒沢展示場で一際目をひく純和風住宅

この純和風住宅の粋をもっとも極めたのが真壁造りの離れ茶室。正面の床の間には、あの千利休が茶を習ったという京都大徳寺・三玄院の和尚が書いたという掛け軸。床の間右手にある障子は、吉岡幸雄氏が、特別に墨で染めた和紙を張ったもの。その和紙も、このモデルハウスのために漉いてもらったという20年ものの斐伊川和紙。壁は薩摩黒土の手作業による塗り壁。

ハレ(非日常)である茶室とケ(日常)の居室をつなぐ通り土間もまた風情。深草砂利の洗い出しに埋め込んでいる陶板は、これまた信楽の近江窯業の逸品。通り側にあるガラス戸を開け放すと、「庭屋一如」の本格日本庭園が。ちょうど見学会の日は雪が降っており、侘びさびの骨頂を思わせる庭園風景に。また、展示場敷地の外に美しい蔵が残っており、こを借景にしているというこだわりようだ。

原点回帰は消費者ニーズでもある?

床の間

千利休が茶を習ったという京都大徳寺・三玄院の和尚が書いたという掛け軸が掛けられた本格茶室。当日は見学者に抹茶がふるまわれた

……と、このモデルハウスの和へのこだわりと手業・職人を挙げればきりがないが、設計を担当した同社・不破氏によると「長い時間かけて京都などの寺院を徹底的に研究・勉強しました」とのこと。その賜物がこのモデルハウスだ。

さて気になるのは、「なぜ今、純和風」なのか。住友林業はもともと伝統的な在来工法のトップメーカーではあるが、最近は大開口の取りやすい独自のビッグフレーム構法に注力し、鉄骨やRC顔負けの大スパン木造住宅でモダンな住宅を提供してきている。そのゆり戻しの理由を同社はこう語る。

風呂

モデルハウスのお風呂はもちろん本物のヒノキ風呂!入れないのが残念…?

「和風住宅を得意としてきた当社では、純和風にこだわるファンの方はいつの時代も一定割合いらっしゃいます。しかも最近はシニアだけでなく、若い人も『和モダンや和が落ち着く』というニーズが出てきています。和風住宅は洋風よりも単価がアップする傾向にあり、本物の質感が問われる和風ではなおさら、当社の木材調達力も生きてくる。受注環境が厳しい中で他社がマネできない匠の技にこだわった純和風に再度回帰することで、当社の強みと売り上げも同時にアップさせることができると考えています」

原点に帰ることで、再度強みを構築し、消費者に自社のブランドを再度再認識させ、値下げ競争から抜け出すことができる。この好循環を狙えるのも、今回紹介した歴史あるメーカーだからこそだろう。大手メーカーに限らずとも、どの住宅企業も「自社の原点と分かりやすいブランド作り」が求められている。それは溢れる企業情報に辟易する消費者が求めていることでもあるからだ。
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