収納リフォームの失敗、プランの問題点とは
収納リフォームは、モノを「仕舞う場所」を作ろうとすると失敗してしまいます。目的は仕舞い込むことではなく、使いやすい置き場を確保すること。仕舞う=二度と使わないでは、ただの死蔵品置き場になってしまいます。そこで、もしかしてウチにもある?ガイドYuuがよく見かける収納リフォームの失敗プランを、ワースト5にまとめました。失敗を防ぎ、成功するためのアイデアもご紹介しましたので、計画前にぜひチェックしてみて下さい。
<目次>
- 5位:扉の選び方が悪い収納プランは、後で悔やむことに
- 4位:アクション数が多い収納プランは、家事ストレスの元に
- 3位:奥行きが合わない収納プランは、死蔵品を生み出す
- 2位:ギュウギュウ詰め収納プランは、出しっ放しの元
- 1位:高さが合わない収納プランは、高い費用を掛けて失敗する
- 失敗してもひと工夫で成功収納にできる
扉の選び方が悪いプランは、後で悔やむことに
〈収納リフォームの失敗-5位〉
収納リフォームでの失敗、ワースト5の第5位は、扉の選び方が悪いプランです。しまうモノ、開閉する姿勢、収納前の面積によって使いやすい扉の形は異なります。狭くてベッドでいっぱいの寝室や、キッチンの通路側の収納に観音開きの扉を付けてしまえば、扉が身体やベッドにぶつかり開ききらなかったり、開閉するたびに身体をねじる必要があったりと、使い難い失敗収納になります。
狭い場所なら開閉しやすく通行のジャマにならない引き戸を選ぶ、フルオープンして中を見渡したいなら折れ戸を選ぶなど、適材適所の扉選びでプランを立てることが使いやすい収納にするポイントです。
通路幅が取れないキッチンの収納は引き戸にしておくと使い勝手がよく、地震にも強い。壁面いっぱいの引き戸収納(パナソニック)
特に通路幅が狭いキッチンでは、収納の扉を開け放したまま作業ができるよう、引き戸にしておくといいでしょう。観音扉にするなら、扉幅を細くするなど、開けた時にジャマにならないようにしておきましょう。また地震時に中身が飛び出さないよう、耐震ラッチで対策しておくことも忘れずに。
注意したいのが扉が無い「見せる収納」です。見せる収納はおしゃれですが、中に入れるモノを厳選する必要があり、またこまめな整理整頓と掃除が必須です。特にキッチンの場合、調理の際に出る油煙で、表に出ているモノがベタつきやすいので、できるだけ扉を付けておくことをお勧めします。
アクション数が多いプランは、家事ストレスの元に
〈収納リフォームの失敗-4位〉
収納リフォームでの失敗ワースト5の第4位は、アクション数が多いプランです。アクション数とは、中にあるモノを出し入れする手間の数のことで、扉を開けるだけなら1アクション、その中に引き出しがあれば2アクションになります。例えばキッチンで、毎日の使用頻度が高い「おたま」を、扉の中に設置されたスライド式の引き出しトレーに入れると
- キッチンの収納扉を開ける
- 引き出しトレーを引き出す
- お玉を取り出す
- 引き出しトレーを押し込む
- キッチンの収納扉を閉める
キッチンで毎日よく使うモノなのにもかかわらず、取り出すだけでこれだけのアクション数が必要になります。これでは家事の手間は倍増し、家事ストレスが溜まってしまいます。
また、おしゃれに見せるために、ビンに詰めて引き出しに入れて、それをまた扉で覆うといったような収納プランにも注意が必要です。こまめな人ならまだしも、そうでない人にはかなりの手間になることを覚悟する必要があります。
キッチンの収納リフォームの際には、品目ごとのアクション数の確認を忘れずにしておくことが失敗を防ぐコツ。使用頻度の高いモノは、できるだけ1アクションで出し入れできるようにしておきましょう。
ちょいと軽く引出すだけで、斜めに倒れてスッと出し入れができる仕組みのキッチンキャビネット。使用頻度の高いモノを入れるのに便利(LIXIL)
キッチンで使用頻度が高いモノを出し入れしやすくするアイデアには、レードルハンガーと呼ばれるタオル掛けのようなパイプにフックを取り付けて、アイレベルにつり下げる方法や、最近では軽く引き出すだけでパッと手が届く位置に様々な収納の工夫がされているシステムキッチンもあります。
上手に活用したいのが、観音開きの扉の裏面です。扉裏にフックを付けて、鍵や爪切りなど細かい物にチェーンを付けてつり下げておくと、出し入れが楽なだけでなく、行方不明になることが減ります。良い収納とは見つけやすく、出し入れがしやすい収納のこと、様々なアイデアで毎日の動きがスムーズになるよう工夫しましょう。
奥行きが合わないプランは、死蔵品を生み出す
〈収納リフォームの失敗-3位〉
収納リフォームでの失敗ワースト第3位は、奥行きが合わないプランです。奥行きが深い収納に小さなモノを詰め込めば、奥にあるモノは見えなくなり、探すのは大変、出し入れも大変、だんだん手前にあるモノしか使わなくなっていきます。食品庫の中でいつの間にか賞味期限が切れているのも、たいていは奥のほうに埋もれた食品です。奥行きが合わない収納プランは、死蔵品を生み出す失敗収納なのです。
このようなことが起きやすいのが、観音扉のキッチンキャビネットと押入れです。キッチンキャビネットはイマドキは引き出し式が主流となり、奥まで使いやすくなっています。
押入れは布団などの大物を収納するなら問題無く使えますが、それ以外の小物を収納したい場合は、中に引き出しセットを組み込むなど、出し入れがしやすい工夫をしておきましょう。
2,400冊の本をそのまま押入れに仕舞い込むと段ボール詰めになるが、スライドラックを組み込めば書庫になる(押入れを再活用しよう、リフォームで3つの大変身より)
収納面積を増やそうと、納戸のような奥行きの深い収納庫を作るリフォームプランを見ることがありますが、単に大きな収納庫を作っても、そのままでは死蔵品置き場になるだけです。図面上、収納がたくさんあっても、奥の方が上手く使えなければ、あまり意味は無いのです。
奥行きの深い収納庫は、後ろ半分を使いこなすことで収納として蘇ります。むやみに収納面積を増やさなくても、今ある収納にひと工夫して、使える収納に生まれ変わらせましょう。
ギュウギュウ詰めプランは、出しっ放しの元
〈収納リフォームの失敗-2位〉
収納リフォームでの失敗ワースト第2位は、ギュウギュウ詰めのプランです。効率を上げようとスキマなく詰め込むプランは、出しっ放しが増える失敗収納になりがちです。例えばギッシリと詰め込んだ食器棚、ギュウギュウと衣類を押し込めたクローゼット、どちらも中が見えにくい上に出し入れが大変なので、結局キッチンに積み上げたり、部屋の中に吊るしっ放しになったり。
持ちモノは年齢と共にどんどん増えていきます。よく収納リフォーム直後に、スカスカで大きすぎた、という言葉を聞きますが、数年経てばギュウギュウ詰めになっている家が少なくありません。最初はスカスカくらいでちょうどいい、余裕のあるプランを立てましょう。
収納面積の目安は、作り方にもよりますが、床面積の10%以上は欲しいところです。ガイドYuuが床面積8%の収納の家と、18%の家と実際に住み比べてみて、暮らしがどう違ったか。下記にまとめてありますので、ご覧になってみて下さい。
高さが合わないプランは、高い費用を掛けて失敗する
〈収納リフォームの失敗-1位〉
収納リフォームでの失敗ワースト5の第1位は、高さが合わないプランです。人には自然な動作領域と呼ばれる範囲があり、そこから外れた場所にある収納はだんだんと使わなくなり、出しっ放しか入れっ放しになります。自然な動作領域の高さは、ひざから目の高さまでです。この高さでの失敗をしやすいのが、天袋、吊り戸棚、床下収納です。例えばキッチンの吊り戸棚。一度中に入っているモノをテーブルの上に並べてみましょう。古い保存容器や、使わないラップ、いつか使うかもと取ってあった空き瓶などが入っていませんか? 使いにくい高さだから、使わないモノを入れ、結局忘れて死蔵品になる、高い位置にある吊り戸棚は、そんな悪循環が置きやすい場所です。
床下収納庫も同じです。収納不足を補うために、とりあえず付けておくか、というような収納プランの立て方は、高い費用を掛けて死蔵品置き場を作ってしまうことになりかねません。
脚立に乗ったり、低く屈んだりなど、無理な姿勢での出し入れが必要な収納は、「出さナイ・片づけナイ・中身を覚えていナイ」の3ナイ収納になりやすいのです。
このような失敗収納を克服するには、使いにくいと感じる収納は付けない勇気を持つこと、また付けるなら少々値段は張っても電動昇降式など使いやすい工夫を加えておくことです。普段よく使うモノは、自然な動作領域の中に作るようリフォームの計画を立てましょう。
吊り戸棚を徹底活用するリフォーム術は下記でご紹介していますので、あわせてご覧下さい。
失敗収納もひと工夫で成功収納にできる
収納リフォームを失敗するの人の共通点は、仕舞う場所と考えてしまうことです。収納とは、仕舞う場所ではなく、中にあるモノを活かすための場所と考えてみましょう。そのために大事なことは、まずそのモノを使う場所と近い位置に収納する、そして見つけやすくする、出し入れしやすくする、この3つに注意してプランすれば、使い勝手のいい収納になり、家の中が片付くようになります。
失敗収納でも引き出しを付けたり、高さを変えたり、扉にひと工夫加えるだけでも、使いやすさは向上します。様々なアイデアで使いやすい収納プランを目指しましょう。
パッと出してパッと仕舞えるキッチンで一番便利なスキマを活用した収納システムを、メーカー別に比較した記事は下記にありますので、参考にしてみて下さい。
また収納リフォームで依頼が多いのは、たくさんの衣類が収納できるクローゼットを作りたいというものです。使いやすい扉の選び方、壁面vs.ウォークインではどっちが便利?カビの被害の防ぎ方など、クローゼットリフォームのポイントは下記でご紹介しています。
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