タイバーやタイスライダーとは?
以前「ネクタイの表情を変える、本格的なタイスライダー登場」の記事で、Bespoke Tailor Dittos(ビスポーク テーラー ディトーズ)のオリジナルタイスライダーを紹介しましたが、今回はネクタイ留めについて少し詳しく説明します。
タイスライダー(tie slider)、または単にスライダーという呼び名は、日本ではなぜか1930’s(サーティーズ)スタイルが好きな人たちの間で定着しています。アメリカではどうだったのかと思い、あの重くて分厚い「エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典」で調べたところ、1920年から1930年代に流行したようです。出自や登場した年代は分かりませんが、1920年以前からありました。当時はタイクラスプ(tie clasp)またはタイクリップ(tie clip)という呼び名が一般的で、ときどきタイバー(tie bar)とも呼ばれていました。残念ながらタイスライダーという言葉は出てきませんでした。もしかするとイギリスでの呼称だったのかもしれませんね。
当初のデザインはアールヌーボーの影響からか、バラやユリなどの花柄が多かったようですが、次第にテニスラケットやゴルフクラブ、犬、馬といったスポーツに関するモチーフに変わっていきました。
現在はタイクリップやタイバーと呼ぶことが多いです。構造は板バネの有無はありますが、どれも基本的にネクタイとシャツの前立て部分を挟んで固定する仕組みです。
現在のものはクリップ式が主流です。デザインもモダンです。 Photo:石井幸久
タイピンはタイバーとどう違う?そのつけ方は?
ネクタイ留めの中でも前述の挟み込むタイプとは異なり、ピンで突き刺して留めるタイプが、タイピン(tie pin)あるいはスティックピン(stick pin)と呼ばれるものです。昼間の礼装用のアスコットを留めるときに使われ出したのが最初だと思います。年代は分かりませんが、挟み込むタイプより確実に古いです。形状は金属製の棒で、先が尖った方を生地に突き刺し、キャップで留める仕組みです。
アンティークのものを見ると、上方に宝石やエナメルの装飾が施されたものが多く、単に道具として普及したというより装飾性の高い高級装身具だったようです。
また、礼装用としてだけではなく、シルクのストールを留めたり、一般的な結び下げタイを留めることもあります。ネクタイの場合は結び目のすぐ下に刺すことが多いです。残念ながらこのクラシックなタイピンはあまり見かけなくなりました。
スティックが短いため飾る場所が限られてきますが、薄地のネクタイなら留めることもできます。 Photo:石井幸久
ラペルを飾る歴史は意外と古く、1930年代にはラペルチェーンというものがありました。こちらもスティックの長い古典的なタイピンと同様に自然消滅してしまいました。紳士の装身具はもともと数が少ないので、ラペルピンの楽しみ方も広げていきたいですね。
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