「眠ろうとすると、頭の中で巨大な爆発音がして目が覚めてしまう……」 睡眠障害の1つかもしれません
眠ろうかなとウトウトしているときに、いきなり「ドカン!」と大きな爆発音が聞こえたら……。戦争や内紛などがない国に住んでいても、驚いて眠気が吹き飛んでしまうでしょう。経験したことがないと不思議に感じるかもしれませんが、入眠時や夜中にふと目覚めたときに、頭の中で爆発音がしたり、何かが爆発した感覚が起こったりする睡眠障害があります。「頭内爆発音症候群(EHS)」と呼ばれる病気です。
頭内爆発音症候群は比較的新しい病気で、まとまった症例の報告は1988年にイギリスのピアースが10例の患者さんについて行ったのが最初です。ピアースはのちに50例の報告も発表していますが、一般的にはかなりまれな病気と考えられてきました。しかし、 2015年の米国の大学生を対象とした大規模調査では、約18%がこれまでに一度は経験したことがあると回答していますから、実はよくある病気なのかもしれません。
頭内爆発音症候群の症状……大きな爆発音・雷鳴が聞こえる他、閃光を感じることも
頭の中で鳴る音は人それぞれで、大音響の「ドーン」「バーン」「バン!」という物がぶつかるような音や爆弾の爆発音、雷鳴、シンバルを打ち鳴らすような音などと表現されています。この爆発音は何の前触れもなく起こり、痛みを伴わず一瞬で終わりますが、患者さんにとってはとてもいやで恐ろしい体験のようです。
フラッシュのような強い光を感じたり、墜落するような身体の感覚を伴うこともあります。頭の中で何か大変なことが起こったと思い、脳卒中やクモ膜下血腫などの脳血管障害を心配して病院を訪れる人もいます。
もともと片頭痛を持っている人にこの病気が起きると、発作の間に片頭痛が悪化することがあります。また、爆発音のあとに金縛りが起き、その後、片頭痛を感じた人もいました。
爆発音が起こる回数はさまざまで、一生のうちに数回の人から、数夜連続して起きたかと思うとしばらく静かになることを繰り返す人もいます。このように発作が長期間にわたって続くと不眠になるため、睡眠障害の国際的な分類では「睡眠時随伴症」の1つに取り上げられています。
発作が起きたときに睡眠ポリグラフ検査が行えた例では、覚醒から浅い睡眠へ移り変わるときや浅い睡眠中に爆発音が聞こえていました。
頭内爆発音症候群の原因・治療法・主な治療薬
頭の中で大きな音が聞こえる原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、脳の網様体(脳幹にある意識を司る部分)の一時的なエラー説が有力です。脳が覚醒から睡眠へ切り替わる際、通常は感覚神経のスイッチが順次オフになりますが、この切り替えがうまくいかず、聴覚神経が一斉に発火してしまうことで大音響として認識されるという説です。また、ストレスや極度の疲労が引き金になることも分かっています。50年以上も頭内爆発音症候群と付き合っている人がいますから、直接、命にかかわる病気ではなさそうです。治療の決め手はまだありませんが、この病気は悪いものではなく生理的な現象に近いものであると説明して安心させると、発作が自然に無くなったり起こっても驚かなくなります。薬物治療としては、抗うつ薬の塩酸クロミプラミンやカルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)、抗てんかん薬(トピラマートなど)が有効 という報告もあります。







