中古住宅・中古一戸建て/中古住宅の購入術

中古住宅(3) 大手メーカーが取り組むスムストック(2ページ目)

中古住宅(ストック住宅)についての連載の3回目。今回は、大手ハウスメーカーによる「スムストック」という取り組みをご紹介します。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

スムストックでは、一般のストック住宅とは異なる査定を行います。一般的な査定は、「建物」+「土地」で行いますが、スムストックでは建物の部分について、「スケルトン部分」と「インフィル部分」にわけて査定します。

建物の価値を実態に即して評価、査定

スケルトンというのは構造体のこと、インフィルは内装や設備のことです。当然ながら、耐用年数はスケルトンの方が長く、インフィルと別々に評価することで、住宅の価格をより明確にできるという考え方です。

現在のストック住宅の査定では、築後20年で建物の価値はゼロとされてしまいます。スケルトン部分は50年以上の耐久性があるというのが、大手ハウスメーカーでは一般的ですから、20年で建物評価がゼロになるというのは実態に則さない話ですよね。
スムストック査定

スムストック査定と一般査定では建物の評価に大きな差がでることがわかる。注=流通耐用年数20年で残値ゼロと査定した場合


さらに、定期的にメンテナンスを行い、適切なリフォームも実施することで、本来は価値を維持すること、もしくは向上させることもできるはずです。スムストックでは、そうした点も資産価値として正しく評価し、結果的に一般市場よりオーナーにとって有利な査定金額を提示できるようにしています。

新築と同様の保証で買い手にもメリット

ここまでは、売り手(オーナー)のメリットですが、買い手にもメリットがあります。それは、建物がどのような状況にあるのかわかりやすいということ。住宅が売買されるにあたって、その建物を建てたハウスメーカーが状態をチェック。ですから、瑕疵の問題などリスクを大きく回避できます。

構造躯体

大手ハウスメーカーの場合、構造躯体(スケルトン)の耐用年数は50年以上。写真は木質パネル一体構法や壁体内換気システムなど高度な技術を採り入れているエス・バイ・エルの構造躯体

また、スムストックの場合、各ハウスメーカーが実施する建物の保証は新たな買い手にも引き継がれます。それは、新築住宅を購入すると同じようなサービスを、ストック住宅であっても享受できるということです。このことは、一般のストック住宅ではほとんど実施されていない部分です。

で、ここで少し考えていただきたいことがあります。それは、ハウスメーカーで住宅を購入、建築することのメリット。ハウスメーカーがこのような仕組みを作っているのは、ユーザーが将来的に住宅を手放すときまできちんと面倒をみますよ、ということなのです。

私たちは新築時に住宅を売却することなんてほとんど考えませんが、いざ住宅を売る段になると大変苦労するものです。スムストックのような仕組みがあることで、「将来的に売却しやすい」ということも大切な価値。新築住宅を購入する際にも、重視していただきたいポイントです。

スムストックがスタートして2年以上が経過。まだ、実際上はハウスメーカー内でもサービス内容にムラがあり、また事業への取り組み方に温度差もあります。ですから本格的な知名度を得るのはこれからでしょう。

しかし、ハウスメーカーの住宅を新築で取得すると考えれば(もちろん、ほかに土地代もかかります)、スムストック住宅は圧倒的にお得だと思います。新築にこだわらないけれど、安全な住宅を購入したいという方には、スムストック住宅は検討に値すると思います。

【関連記事】
中古住宅(1) その現状と利点と問題点
中古住宅(2) 普及が進むホームインスペクション

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