中古住宅・中古一戸建て/中古住宅の購入術

中古住宅(2) 普及が進むホームインスペクション

ストック住宅(中古住宅)購入の難しさは、建物の状態がどうなっているのか、わかりづらいことにあります。一方、その難しさを解消すべく、近年、第三者が建物を診断する「ホームインスペクション」という新たな仕組みが普及しつつあります。その内容を専門家に伺いました。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

「これからは新築住宅より、ストック住宅(中古住宅)の時代になる」と強く主張している人がいます。さくら事務所社長で、日本ホームインスペクターズ協会理事長の長嶋修氏がその人です。今回は、長嶋さんへのインタビューを通じて、これからのストック住宅のあり方を考えてみたいと思います。

第三者が建物を診断するホームインスペクション

長嶋氏

長嶋 修氏 不動産コンサルタントとしての活動のほか、国土交通省の検討会などの委員やマスコミ出演など幅広く活躍。「住宅選びこれだけ心得帖」(日本経済出版社)など著書も多数

ストック住宅の問題点は、(1)欠陥の有無(2)購入後どのくらいのリフォーム費用がかかるのか(3)あと何年住み続けられるのか、大きくこの3点があります。これをクリアするのが、「ホームインスペクション」(住宅診断、住宅検査)という仕組みです。

長嶋氏
 ストック住宅の購入には、良い物件を見極める力が求められます。ただそれは一般の方には難しいこと。ホームインスペクションというのは、建物の状態が現時点でどうなのか、専門知識を有する第三者(ホームインスペクター)が劣化の診断を行うというものです。人間に例えると健康診断のようなものですね。

ストック住宅といっても様々。以前、長嶋氏のセミナーで教わったことで印象的だったことがありますから、ここでご紹介しましょう。それは、ストック住宅はぱっと見だけでは、劣化の具合を判断しづらいということです。

ある一定期間を経ると、住宅の外観には汚れやクラック(ひび割れ)が目立つようになります。築後30年以上の建物にはクラックが少なからず見受けられると思います。クラックがあると、どうしても雨水が浸透して内部構造の劣化があると思われがちです。

素人目にはわからない建物の状態と価値

クラック

古い木造住宅にみられるクラック(ひび割れ)。ただ、これがあるからといって必ずしも建物の現状に不具合があるともかぎらないのが、ストック住宅を判断する難しいところだ

しかし、ホームインスペクターが調べると、クラックがあっても内部への雨水の浸入はなく、内部構造が健全であるというケースもあるとのことでした。つまり素人目では簡単に劣化の度合いや建物の価値は判断は難しいということが、このことからもわかります。

長嶋氏 逆のケースもあります。購入された後しばらくして2階の雨漏りがひどくなったという相談でした。床にたらいを置いたところまるで水琴のような状態に。この物件を診断したところ、建て替えをするしか対処方法がないことがわかりました。

これは本当に不幸な事例ですよね。さくら事務所はホームインスペクションの老舗。マンションや新築住宅を含め数多くの診断と検査実績から、ストック住宅についての様々な経験と蓄積あり、これ以外のも様々なケースに遭遇されているとのことです。

さて、次のページでは、ホームインスペクションでどのようなことを行うのかから話を進めていきます。
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