増改築リフォームは事前の準備で出来栄えも費用も変わる
増築や改築など大掛かりなリフォームを、増改築リフォームと呼んでいます。増築とは床面積を増やすことを言い、改築は建築基準法上の用語では新しく作り替えるといったような意味ですが、一般的には構造部にまで工事範囲が及ぶ大掛かりなリフォームのことを指します。増改築リフォームは床面積が変わったり、構造部に大きく手を入れるような工事を行いますので、事前に法令の確認を行う必要があり、またリフォーム会社選びや、費用の掛け方にも注意が必要です。事前の準備次第で、出来栄えも費用も大きく変わるのが増改築リフォームなのです。
今回は、増改築リフォームを進める手順、成功のポイント、改築費用を安く抑えるコストダウンのコツ、減税を受けるために必要な増改築等工事証明書についてご紹介します。
<目次>
- 増改築リフォームは様々な法令の制限を受けることがある
- 耐震性能の確認は必須、経験豊富なリフォーム会社を選ぶ
- 小さなコストダウンの積み重ねで改築費用を抑える
- 減税時に必要となる増改築等工事証明書を忘れずに
増改築リフォームは様々な法令の制限を受けることがある
〈手順-1〉
増改築リフォームは、規模にもよりますが、小さな改修工事と違って様々な法令の制限を受けることがあります。特に床面積が増える増築工事は、建ぺい率や容積率、高さ制限など、法令を守って工事を行う必要があります。増築は、基本的に10平米以下(約6畳)であれば建築確認申請は不要ですが、防火地域もしくは準防火地域に指定されている場合は1平米の増築であっても確認申請が必要になります。防火の規制は都市部はもちろんのこと、郊外でも大通り沿いは指定されていることが多いので注意が必要です。
大規模な修繕や模様替えを行なう際にも確認申請が必要になりますが、判断が難しいので建築士に相談しましょう。
建築確認申請を行う際には、図面の作成や申請手数料などの費用が掛かります。また申請が降りるまでに時間が掛かることもありますので、計画段階でリフォーム会社に確認しておきましょう。他にもその地域ならではの条例もあります。まずはお住まいの市町村に確認してみるといいでしょう。
少しくらい平気だろうと法令に違反して勝手に工事をしてしまうと違法建築になってしまいます。法律に違反した住宅は後で大掛かりな増改築リフォームをしようとしても建築確認申請が受け付けてもらえない、ローンが通らない、売却しにくいなどの不都合が起きますので注意して下さい。
【増改築リフォームの計画前にやっておくこと】
- 建ぺい率、容積率、高さ制限、隣地境界線までの距離などの確認
- その他の法令や、地域の条例の確認
- 確認申請が必要かどうか、またその費用の確認
- 既存不適格建築物(※)の場合は建築士に相談
耐震性能の確認は必須、経験豊富なリフォーム会社を選ぶ
増築工事はもちろんのこと、リビングを広くするために壁を壊す、窓を大きくするなどの改築工事を行なう場合には、耐震性能の確認が必要です。阪神淡路大震災では、増改築リフォームで耐震バランスが崩れたために倒壊した住宅も多く見られました。住宅の耐震性能を保持するためには家全体のバランスが大切です。増改築を行った新しい部分だけを強固にするような工事をしてしまうと、ねじれが起き、かえって耐震性能が落ちることがあります。
増改築リフォームの際には、全体の耐震性能をしっかり確認してくれる、経験豊富なリフォーム会社を選びましょう。リフォーム会社の選び方は、このページの最後の関連リンク先にご紹介していますので、ご覧下さい。
また工法により、増改築の難易度は変わります。ハウスメーカーで建てた家の大規模な増改築リフォームは、そのメーカーで行なうのが原則と考えておきましょう。
小さなコストダウンの積み重ねで改築費用を抑える
家族の意見がまとまったら、何社かのリフォーム会社にプラン提案と見積もりを依頼し、比較検討をしましょう。増改築リフォームの費用は大きいものですが、小さなコストダウンの積み重ねで費用を抑えることができます。増改築の費用を安く抑えるポイントをいくつかご紹介します。【屋根・外壁のコストダウンの工夫】
- 屋根の葺き替え時に合わせて増改築する
- 外壁の塗り替え時に合わせて増改築する
- 屋根の形はできるだけ単純にする
- 外壁の凸凹は減らす
【水まわりのコストダウンの工夫】
- 水まわりの移動はできるだけ避ける
- 移動させるなら、既存の屋外排水管が使える位置へ
- 水まわりを新設する時は、既存と近い位置にまとめる
【間取りのコストダウンの工夫】
- ほんの少しの増築は割高になるのでできるだけ避ける
- 1階2階を一緒に出す総2階の増築はコストパフォーマンスがいい
- 耐力壁の撤去や移動は、補強に費用が掛かるのでできるだけ避ける
- サッシは引き違いタイプが割安
- 設備建材のサイズはできるだけ標準品を使う
増改築費用をコストダウンする早道は、リフォーム会社にローコスト提案をしてもらうことです。ローコストな提案をするには安物を使えばいいというものではなく、技術が必要です。ここでもリフォーム会社選びが大事なポイントとなりますので、しっかり選びましょう。
減税時に必要となる増改築等工事証明書を忘れずに
耐震リフォーム、バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、同居対応リフォームや、住宅ローンを使用して要件を満たす増改築工事を行った場合、所得税の控除や固定資産税の減額などを受けることができます。その際、必要となる書類に増改築等工事証明書があります。増改築等工事証明書には、建築士の証明が必要になりますので、忘れずに確認をしておきましょう。
増改築等工事証明書の見本。建築士の証明が必要。見本や証明書ダウンロードは公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター「リフォネット」にある。
大規模な増改築が必要な場合、建替えを選んだほうが効率がいいこともあります。建て替え、リフォームそれぞれのメリット・デメリットを下記でご紹介していますので、それらを理解した上で、本当にどっちが得かを判断しましょう。
リフォーム会社の選び方については、下記で初級~中級~上級と3段階でご紹介しています。増改築リフォームの費用は決して小さなものではありません。我が家を任せていいかどうか、多額の費用を掛ける価値があるかどうか、しっかり見極めて頂ければと思います。
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