予防接種・ワクチン/日本脳炎の予防接種

日本脳炎ワクチンの予防接種・間隔・副作用

【小児科医が解説】ウイルスによる脳炎から重篤な後遺症リスクを持つ「日本脳炎」。予防のための日本脳炎ワクチンの効果、予防接種の間隔、発熱や腫れなどの副作用、安全性・危険性について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

日本脳炎とは……重篤な後遺症リスクを持つ感染症

日本脳炎ワクチンの予防接種

日本脳炎はアジアで広く流行している病気で、日本でもかつては患者が多くみられました

脳炎を起こし、重篤な後遺症を残しやすい日本脳炎。1966年までは年間1000人以上の日本脳炎患者が発生していましたが、ワクチンの普及、蚊に刺される機会の減少、一般住居とブタの生活との区別化など衛生面の改善によって減少し、最近は年間感染者は10人以下になっています。

日本脳炎」を起こすウイルスは、フラビウイルス科に属する日本脳炎ウイルスで、人は主にコガタアカイエカという蚊に刺されることで感染します。

症状としては、蚊にさされてから7~10日後に、38℃以上の高熱が数日続き、頭痛・吐き気・嘔吐・めまいなどが見られ、脳炎を起こすと、光に過剰に反応する光線過敏、筋肉が固くなる筋強直、勝手に手足が動く不随意運動、手足の震えである振戦、上肢に多い麻痺、子どもで多いけいれんなどを起こします。

治療方法が無いために、予防が重要で、蚊に刺されないことが一番ですが、ワクチンが開発されているので、ワクチンで病気を防ぐことが重要になっています。

しかしワクチン接種率の低下によって、今後再び感染者が増加することが危惧されています。日本では一番に九州、次いで中国地方に多い病気。日本以外のアジア地域では現在でも日本脳炎の流行していることがあります。海外渡航時に、訪問国の感染症情報には注意しましょう。グローバル化で海外との行き来も多い中、日本脳炎を過去の病気と考えるのは危険。ワクチンによる確実な予防はとても重要です。
 

日本脳炎ワクチンの効果・定期接種で無料で受けられる

日本脳炎ワクチン

日本脳炎ワクチンで、溶解の上、皮下に注射します

日本脳炎ワクチンは日本脳炎ウイルスに対する免疫をつけるためのワクチンです。「定期接種」なので予防接種法に基づいて定期的に公費で接種することができ、接種することが推奨されています。

日本脳炎の感染者数が減った理由の1つにワクチンの効果が挙げられます。ワクチンによる日本脳炎ウイルスに対する抗体産生はよく、病気に罹らないレベルまで抵抗力をあげることができます。アジアでの治験では、2回接種でも80%以上の有効率があると報告されています。

日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンで、ワクチン接種後に発症リスクがあるようなウイルスそのものは入っていません。ウイルスを処理して無毒化したものです。以前使っていたマウスの脳成分から作られた日本脳炎ワクチンは2010年3月9日で使用されなくなりました。替わって、アフリカミドリサザルの腎臓の細胞から作られたワクチンが使われています。
 

日本脳炎ワクチン予防接種の対象年齢と接種間隔

日本脳炎ワクチンは1期に初回と追加で、2期になっております。以前は3期がありましたが、2005年より廃止されました。

1期は生後6ヶ月から90ヶ月(7歳6ヶ月)まで。1期の初回は2回、追加は1回です。1期の初回から追加までは約1年空けて行います。2期は9歳以上13歳未満です。標準的な接種方法は3から4歳までに1期初回を終え、1期初回接種の2回が終わってから1年後に追加を行います。1期初回の2回は、6日から28日の間隔をあけて行います。

日本脳炎ワクチンとは別のワクチンを接種するまでに空ける期間では、6日以上です。もし、風邪を引いたりして、予定通りできずに間隔があいてしまっても、大事なのは回数なので、規定されている回数を行う必要があります。

蚊を介して感染することが多いので、夏前に接種しておくのが望ましいですが、1年中接種可能。公費対象年齢までに接種するために、1期の追加の90ヶ月(7歳6ヶ月)から逆算してワクチンを行いましょう。
 

日本脳炎ワクチンの接種量

上腕の皮下に注射します。DPT三種混合ワクチンと同様、赤くなったり腫れたりするので、左右交互に皮下に注射します。1回0.5mlですが、3歳未満の場合は0.25mlになります。量が少ないと免疫力をつける力が弱まるため、通常量である3歳以上から推奨され、私自身もそのように勧めております。
 

日本脳炎ワクチンの副作用……発熱・腫れなど

日本脳炎ワクチンの副作用としては、注射部位が赤くなったり、腫れたり、痛みが出たりすることが挙げられます。発熱や不機嫌などの全身の副作用もあります。発熱は1期初回で約3%、1期追加で約8%です。

発熱や痙攣、麻痺などを起こす急性散在性脳脊髄炎の報告がありましたが、ワクチンとの因果関係ははっきりしていません。比較的年齢の大きな子どもでは、痛みのため、顔色が悪くなったり、気分が悪くなったり、冷や汗が出たり、意識がなくなったりする可能性(迷走神経反射)もあるので、接種後30分程度は医療機関内にいるのがよいでしょう。
 

日本脳炎ワクチンの課題

以前はマウスの脳で作ったワクチンが使われていましたが、急性散在性脳脊髄炎を理論的に起こす可能性があり、因果関係を否定することができなかったため、2005年5月30日から一時的にワクチンの定期接種が行われず、希望者のみになっていた時期がありました。1995年~2006年度に生まれた方は、平成2005~2009年度に日本脳炎の予防接種を受ける機会を逃している可能性がありまうので、母子手帳を確認しておきたいものです。計4回接種している方が望ましいと言えます。

2009年6月2日からアフリカミドリサザルの腎臓の細胞から作られたワクチンが使われています。つまり、約5年間はワクチン接種率が非常に低下しており、この期間に未接種の子供は日本脳炎に罹る可能性が平均よりも高いと考えられます。

そのため、接種していない人にもこれから接種することが勧められています。公費対象の年齢を過ぎると自費になりますが、自治体によっては接種年齢が過ぎても公費で行っている場合もあるので、各自治体に問い合わせてみて下さい。

日本脳炎は罹ると治療方法はなく、生存者の45~70%に精神障害などの後遺症があるとされています。実際には、パーキンソン病と言って、足の動きが悪くなる病気に似た症状、痙攣や麻痺、精神発達の遅れ、精神障害などの後遺症があります。ワクチンでしっかり予防するようにしましょう。

【関連記事】
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます