料理屋　仁

芦屋で今もっとも気になる和食店、料理屋「仁」 

晴れた日に阪急「芦屋川」駅に降り立つと、遥か南には銀色に輝く海、北を仰ぎ見ると間近に迫る六甲山系に連なる緑の斜面のあちこちに瀟洒な邸宅が顔を覗かせ、昔ながらの芦屋の雰囲気をひたひたと感じることができます。

そして、この閑静な山手の駅から北へほんの100メートルほど歩いたところに、今年2月で開店4年目を迎える創作感溢れる和食店「仁」があります。

ご主人は中林秀仁さん。実家は札幌の料理店とお聞きしましたから、小さいころからしっかりと「美味しいもの」を舌に刻みつけられて育たれたことでしょう。主に大阪の料亭や割烹での修行の後、ここ芦屋川を選んで33歳で独立されたというわけです。

店内は、ご主人と着物姿できびきびと動かれる奥様だけでなんとか眼の届くようにと、楡の一枚板のカウンターが5席、3つのテーブルに計10席、の計15席のみ。
白壁に映える古色蒼然とした重い蔵戸をガラリと開けると、天井も床も黒で統一されたしっとりとした空間となっており、その黒一色に対比するように右手の壁一面に造り付けられた朱の棚は、さながら「根来」の風格。そしてそこには修行時代からコツコツと集められてきたユニークかつ吟味された器たちが並んでいます。

次ページでは、コース料理を御紹介していきます。