音にこだわるアイアン
そもそも上級者向けという、ある種の約束事のある軟鉄鍛造アイアンでは、なかなか新しい新機軸を打ち出すのは、難しい面がありました。ポケットキャビティやコンボアイアンにしたり、フェース面に異素材使ったりするのは、その中で特徴を出していく工夫として生み出されたものだと思います。現在も、軟鉄鍛造アイアンのセールスポイントは、「打感が良い」、「形状が良い(小ぶりでシャープ)」、「抜けが良い」、「操作性が良い(曲がりやすいという意味も…)」、そして「プロが使用すること」です。この辺は、20年前から変わっていないのです。
その中で面白いのは、ミズノの軟鉄鍛造アイアンです。
上記のような特徴を突き詰めた末に、おそらく生まれたであろう特徴は、なんと「音」。
打感が良いアイアンは、すべて打球音の響きが長いことに着目し、鋳造アイアンなどとの音の違いをクラブの特徴に挙げています。素材の品質や製法もさることながら、打音をアピールポイントにしたのは、いかにも「TN87」を生み出したメーカーのこだわりといったところです。
軟鉄鍛造と鋳造ではどちらが良いか、という議論は、昔からあります。
ライ角の調整が可能な点、金属組織が緻密であることなど、鍛造アイアンが優位な点は少なくないですが、形状的に鋳造アイアンの方が精度高く作りやすい場合も少なくなく、求める性能によって、これからも2つの製法が使い分けられるでしょう。
今後も、対象となるゴルファーによって、性能の違いがはっきりと判るモデルがラインナップされるでしょう。軟鉄鍛造アイアンの使用者も増えてくるのではないかと予測します。