世界有数の地震大国、日本。賃貸住宅のオーナーは、ご自身のご家族はもちろんですが、入居者の生命や財産を大地震から守らねばならないという「努力義務」を負っていることを、忘れてはいけません。 

巨大地震は、皆さんのまわりで必ず起きる。いつか絶対に 

阪神・淡路大震災1

阪神・淡路大震災:(財)消防科学総合センター

大地震というと、皆さんの記憶に新しいところでは、
1995(平成7)年の阪神・淡路大震災(死者・行方不明者6,437人)
2004(平成16)年の新潟県中越地震(死者68人)
2008(平成20)年の岩手・宮城内陸地震(死者・行方不明者23人)

日本列島では毎年のようにどこかで大きな地震が起こって被害が出ています。首都圏直下型の大地震も、いつ起きてもおかしくないと言われています。

今から4年ほど前、平成19年の2月に、私はある大手企業の依頼を受けて石川県でセミナーの講師を務めることになりました。テーマは、最新の賃貸経営です。

事前の打ち合わせの際、担当者から、「谷崎さん、石川県では過去ほとんど地震がなく、関心が薄いので、耐震化に関する内容は外しませんか?」という提案を受けました。私は不満ながらも、セキュリティの項目に差し替えましょうということになり、セミナーを終えて帰京しました。

そして、ちょうど1カ月後の3月25日、石川県能登半島沖で、大規模な被害をもたらしたマグニチュード6.9の大地震が起こってしまったのです。本当に、いつどこで起こるのか分からないのです。

阪神・淡路大震災時の私の友人の体験ですが、すさまじい揺れと大轟音に飛び起き、這うようにして外に逃がれた際に目にしたものは、自宅前の高速道路が倒壊しているという、すさまじい光景でした。周囲の何軒もの人家も倒壊しており、とてもこの世の光景とは思えず、両膝ががくがく震えて立っていられなくなったと話しておりました。

平成16年8月、政府地震調査会は「南関東で30年以内にM7程度の大地震が発生する確率は70%」と発表しました。平成17年2月には政府の中央防災会議首都直下地震対策専門委員会が首都直下地震の被害想定を公表しています。

これらを踏まえた東京都防災会議の報告書では、「東京湾北部地震(想定マグニチュードは7.3)が発生した場合、都内建物約270万棟のうち約12.7万棟が全壊し、約34.6万棟が半壊するとし、甚大な被害を予測しています。つまり東京で大地震が起きると、東京中の建物の2割近くが倒壊する恐れがあるというのです。生命や財産を守るために建物の耐震化が急務です。
 

裁判でオーナーが損害賠償を支払う判決も出ています

阪神・淡路大震災2

阪神・淡路大震災:(財)消防科学総合センター

賃貸住宅オーナーは安全な建物の部屋を貸すことが基本原則です。民間同士の契約なので、お互いが納得すればどんな建物でも貸すことは可能ですが、大前提として、建物所有者はそこで生活する人の安全を確保する責任があります。

阪神・淡路大震災で賃貸マンションが倒壊し入居者が死亡されたケースでは、建物の壁厚、壁量、そして鉄筋の量が不十分で、鉄骨の溶接にも欠陥が発見され、建物が通常の安全性を持っていなかったと裁判所が判断し、遺族に対して損害賠償の支払いをオーナーに命じる判決が出ています。

神戸地方裁判所 平成11年9月20日判決「賃貸マンションの貸主の土地工作物責任」

このケースでは、入居者が死亡した原因は地震という不可抗力によるものだけとは言えず、通常の耐震基準を満たしていれば建物は倒壊しなかった可能性があり、耐震基準を満たしていなかった建物にも原因があると判断されたのです。逆に言えば、建物が耐震基準を満たしていれば、たとえ倒壊したとしても、オーナーの責任は発生しなかったのです。

阪神・淡路大震災では昭和56年の新耐震基準以前の建物に被害が多く出ました。それを教訓に、学校や病院、そして賃貸住宅を含む民間住宅などの耐震診断、改修の早急な対応が求められ、耐震化計画の作成が都道府県に義務付けられました。オーナーも所有する建物の耐震改修にしっかり取り組む必要があるのです。何もしなければ、損害賠償を支払う事態になりかねません。

みなさんは、ご自身のアパートが、昭和56年以前であるかどうかを、チェックしてください。もし万一、56年以前であれば、耐震補強や建替えの必要が出てくる可能性が高いのです。