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阪神大震災から17年 我々は教訓から何を学んだか?

2012年1月17日、阪神・淡路大震災の発生から17年が過ぎました。月日が経つのは早いもので、震災の年に生まれた子供たちは高校生になりました。しかし、6400余名の尊い命を奪った大震災の教訓は十分に活かされておらず、住宅の耐震化率は79%どまりです。今一度、天災は忘れた頃にやって来るということを、再認識する必要があります。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


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わが国の住宅耐震化率は約79% 100%達成には時間がかかりそうだ。

2012年1月17日、阪神・淡路大震災の発生(1995年)から17年が過ぎました。月日が経つのは早いもので、震災の年に生まれた子供たちは高校生になりました。改めて、6400余名の尊い命を奪った大震災による被害状況を簡単にまとめると下表の通りです。淡路島を震源地とする最大震度7(マグニチュード7.3)の揺れは兵庫県を中心に伝播し、およそ64万棟の建物被害と火災を引き起こしました。

地震の発生が早朝5時46分だったこともあり、阪神・淡路大震災では寝室での被害が最も大きかったことが分かっています。死亡の原因を調べてみると、全体の73%が圧死、12%が焼死でした(総務省消防庁調べ)。寝室での就寝中に家屋が倒壊したり、あるいは室内の家具が転倒してきて押しつぶされたのが主因とされています。

阪神・淡路大震災による被害状況

 

1923年(大正12年)の関東大震災(マグニチュード7.9)では、およそ10万5000人の死者の約87%(9万2000人)が火災によって死亡しました。家屋の全壊による死者は全体のおよそ1割(1万1000人)にとどまっており、こうした焼死者の多さが建物の難燃化を推し進める原動力となりました。幸いにして、阪神・淡路大震災で焼死者の割合が1割程度で済んだのは、関東大震災の教訓が活かされた結果なのです。

わが国の耐震化率は79% 激震地・兵庫県でさえ目標にはとどかない 

しかし、その関東大震災から88年。住宅の不燃化は促進された一方で、いまだ耐震化は思うように進んでいません。国土交通省によると2008年現在、わが国の住宅耐震化率は約79%にとどまっています。さすがに激震地となった兵庫県は耐震化率82.4%(08年)と全国トップクラスの達成率ですが、それでも「2015年に97%にする」とした県の目標は達成が困難なことがすでに分かっています。一体、どうしてなのでしょうか?――

内閣府が2009年12月に行った「防災に関する特別世論調査」によると、耐震補強工事を実施しない理由として、回答者の2人に1人が「お金がかかる」ことを理由に挙げています。また、約22%の人が「必要性を実感できないから」と答えており、どうやら阪神・淡路大震災の惨劇は、“他人事”として受け止められている印象です。「のど元過ぎれば、熱さ忘れる」といった危機意識の低さを、私ガイドは感じずにはいられません。

 【耐震補強工事を実施しない理由】 (重複回答)
  • お金がかかるから………………………………………………………50.6%
  • 必要性を実感できないから……………………………………………22.1%
  • 集合住宅や借家に住んでおり、自分だけでは判断できないから……21.2%
  • 効果があるか不明だから………………………………………………14.2%
  • どうやって着手・施工したらいいか分からない  ………………………10.2%
  • 面倒だから………………………………………………………………6.7%
  • 見た目が悪くなるから……………………………………………………1.2%
(出所)内閣府 「防災に関する特別世論調査」


読者の皆さんはご存じだったでしょうか。東京では19.7%の確率で、今後30年以内に震度6弱以上の地震が来ると予測されています。切迫性が高まっている東海地震(マグニチュード8程度)の想定エリアでは、静岡県の89.5%を筆頭に横浜の66.7%、甲府の55.3%とかなり高い発生確率がはじき出されています(下表参照)。

今後30年以内に震度6弱以上の地震が来る確率

 


こうした事態を意識してか、2010年10月に閣議決定された「円高・デフレ対策のための緊急総合経済対策」の中に、地方自治体における住宅耐震化支援や耐震化の合意形成が困難なマンションに対して耐震診断の直接支援を図ることが盛り込まれました。概要は次の通りです。

【住宅・建築物の耐震化緊急支援】 ※適用条件および申込み期限あり
  • 住宅の耐震改修および建て替えについて、国が1戸当り30万円を緊急支援する。
  • 緊急に耐震化が必要な建築物、合意形成が困難な分譲マンションの耐震診断について、国が直接的な支援(上限200万円/棟)を実施する。

住宅の「安全」「安心」は、日頃からの備えに依拠することは言うまでもありません。「短命住宅」の汚名を返上するためにも、耐震性を兼ね備えた長期耐用住宅の推進が、今日、わが国では強く求められます。




※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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