空間演出で物件の差別化を!
オーナーのセンスが伝わります
同じことが、ギャラリー併設アパート・マンションにも言えるのです。単に「くつろげる共用スペース」という、実益面だけが目的ならば、エントランスロビーにソファを置くだけでもいいのかもしれません。しかし、それでは入居者は実益以上の「付加価値」を感じません。
その空間がくつろげる場所であるとともに、お洒落であったり、楽しかったり、センスのよい空間であることによって、入居者は、「友人を呼んでみたい場所」、「自慢できる住まい」として認めてくれるでしょう。そこが、「ギャラリー」であることのポイントです。
ギャラリーには、やはりよいテーマがほしいところです。Bさんが選んだビートルズ以外にも、多くの人にとって魅力的なテーマは、ほかにもたくさんあります。
たとえばアンディ・ウォーホルなどの多くの人々に親しまれているアーティスト。エミール・ガレの工芸作品やディズニーなども同様に万人に愛されています。
そして、当然のことですが、これらは本物を飾る必要はないのです。ギャラリー併設アパート・マンションは美術館ではないのですから、ちゃんと市販されているポスターをお洒落な額に入れるだけでも、空間を魅力的に演出してくれるでしょう。オーナーのセンスとメッセージは、しっかりと入居者や訪問者へ伝わります。
ちなみに私の知っている例では、マンションのエントランスからエレベーターホールへと続く廊下を美しいギャラリーにしたオーナーが、そこに北大路魯山人作の本物の陶器をいくつか置いたというものがありました。オーナーが長年蔵にしまっていた宝物です。当然ですが、保険も含め、セキュリティ対策のためのコストはそれなりにかかっています。
魯山人は特別な例として、「せっかくだから若干コストがかかっても本物を置きたいが、何がいいだろう……」という場合、オーナーさんのご自宅リビングの食器棚、押入れなどにこんなものは眠っていませんか?
たとえば・・・・
・ロイヤルコペンハーゲンやウエッジウッドなどの陶磁器
・リヤドロやマイセン、ヘレンドの磁器人形
・バカラやスワロフスキーのグラスやガラスインテリア
・景徳鎮や古伊万里、輪島塗の壺や置物・・・・・・・など。
これらは、立派にギャラリーの主役、脇役となって、空間演出するのに十分な魅力をもっています。ただし、コンセプトはしっかりと考えてください。和風も洋風もごちゃ混ぜであったり、単に古めかしく見えてしまうようでは、逆にマイナスになってしまいます。オーナーさんの自己満足や独りよがりであると失敗します。
必ず、インテリアデザイナーなどのコーディネーターに相談しましょう。
キャラクターで空間演出。ガンダムも?
ウォーホル、ガレ、魯山人……と来ると、こんな声も聞かれそうです。「賃貸住宅のマーケットには若い人が多い。ギャラリーマンションのテーマとして、アニメや漫画のキャラクターというのもあっていいのでは?たとえば機動戦士ガンダム……」私もガンダムはありうるのではないかと思います。ファンの数が大変多く、大きな市場をもっています。一定の世代に限ってはまさに「万人が愛するキャラクター」と言ってよく、ガンダム・ギャラリーマンションは確かに成立するかもしれません。ほかにも、ディズニーキャラクター、サンリオキャラクターなど、広く万人に愛されるキャラクターも存在します。
ただし気をつけたいことがあります。アニメや漫画に限らず、熱いファンがいるからといってそこを狙いすぎるのは危険です。差別化しすぎ・やりすぎにつながります。ファン以外にはそっぽを向かれてしまうため小さな市場からしか入居者を探せないとなると、賃貸住宅経営上、大きな足かせとなってしまうでしょう。
冒頭のBさんの事例を思い出してみてください。ビートルズギャラリーマンションには、ビートルズファン以外の人も入居を希望しています。他の物件との差別化はされていますが、「排他性」は無いのです。空間演出を一生懸命工夫するのはいいのですが、やりすぎて、物件を排他性の帯びたものにしてしまうことがないよう、注意が必要です。
もうひとつ、ギャラリー併設アパート・マンションへキャラクターを導入しようと考える場合、気をつけておかなければならないのは「権利関係」の問題です。たとえばオーナーが個人的に所有するキャラクター商品をギャラリーに置いたとします。それを「○○○○(キャラクターの名前)いっぱいのマンション!」などと広告に謳った場合、問題となる可能性があります。安易に判断せず、キャラクターを扱う企画に詳しい管理会社やコンサルタントを探し、しっかりと相談しておくことが大切です。