土地活用のノウハウ/入居者ニーズとマーケティング

入居者の心を掴むギャラリー併設アパート・マンション

駅からバス12分、さらに徒歩7分の郊外マンションを見に行きましたが、エントランスを見て驚きました。60平方メートルもあるロビーは素敵なギャラリー風になっており、テーマが「ビートルズ」なのです。地元では「ビートルズ・マンション」と呼ばれ、話題となったコンセプト型の低層型マンションだったのです。「入居希望者が常に空きを待っている状態」という、大成功の事例となっているギャラリー併設マンションを紹介します。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

ビートルズが奏でられる癒しの空間


ビートルズ

ビートルズが流れる素敵なロビー

「谷崎さん、一度私の賃貸マンションを見に来てください」。そう誘われて私が向かったのは、オーナーBさんの物件でした。埼玉県のある駅からバスで12分、さらに徒歩で7分という、かなり不便な立地です。

現地へ向いながら「賃貸住宅経営の立地条件としては不適切では?」と、若干困惑しながら坂道を歩きました。周りは、住宅開発されてきたとはいえ、畑もちらほら見受けられる環境です。

そして、出迎えられた、エントランスを見て驚きました。この物件は、地元では「ビートルズ・マンション」と呼ばれ、話題となったコンセプト型の低層型マンションだったのです。

単身向けの22平方メートルの1Kタイプが20室という点は、いわゆる普通のマンションですが、エントランスから各部屋に向かう途中のロビーが60平方メートルもあって、そこが素敵なギャラリー風になっていることが、大きな特徴です。

ギャラリーのテーマは、「ビートルズ」です。ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター。お馴染みのメンバー4人のセピア色の写真パネルがセンス良く飾られています。傍らにはジュークボックスもあって、日中は常にビートルズのヒットナンバーが静かに流れています。

また、70年代のアメリカンスタイルのソファや家具が置かれています。ビートルズの母国のイギリスではなく、アメリカの家具である理由は、Bさんが以前、アメリカに住んでいらっしゃったからだそうです。Bさんによると、「どれもアメリカからまとめてコンテナで運んできたもので、価格もびっくりするくらい安いのですよ」とのこと。

このマンションは、常時満室なだけでなく、「入居希望者が常に空きを待っている状態」という、大成功の事例となっているこのマンションです。


不利な立地条件なのに入居希望殺到!そのわけは……


Bさんはこういいます。

「もちろん、単純に考えれば、25平方メートルを20室つくり、普通の賃貸住宅にすることもできました。しかし、発想を転換してみたのです。25平方メートルをやや削って22平方メートルにする。それによって、生まれた3平方メートル×20室分=60平方メートルを入居者の癒しの共用空間として、ロビー空間に充てることを考えたのです。

 素敵な共用空間を持つ22平方メートルと、持たない25平方メートルを比べたら、入居希望者はどちらに魅力を感じるだろうか?

 入居者は、25平方メートルの自分の部屋と、60平方メートルの素敵なロビー、どちらに友人を招きたくなるだろうか?」

Bさんはそう考えて「22平方メートルプラス共用空間」を選択し、そこをビートルズ・ギャラリーとすることにしたのでした。なぜ「ビートルズ」が選ばれたのでしょうか?

 Bさんによると、「私はビートルズが大好きなのですが、アメリカから日本に帰ってきたとき、ビートルズとその曲が日本でもとても多くの方に愛されていることに、あらためて気が付いたんです。

自分のマンションの共用空間をギャラリーにしたいと考えたとき、誰もが好きなビートルズが、まず頭に思い浮かびました」

誰からも愛されやすいテーマで統一された、お洒落な空間を持つこのマンションは、駅からのアクセスが不便という立地のマイナス面を克服し、たちまち人々の心を掴みました。

ちなみに、Bさんのこのマンションに入居を希望する人は、熱心なビートルズファンばかり、というわけではなく、むしろ普通に好きだという方がほとんどなのだそうです。
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