湯乃上館で温泉を満喫!
湯乃上館には浴場がなく、目の前にある直営の共同浴場「漆仁乃湯」に通う形式の宿です。昔は、どこでもこの形式でしたが、次第に旅館が内湯を持つようになったのです。老舗旅館に行くと「内湯旅館」などと書いてあるのは、その為です。今では逆に外湯に通う旅館の方が珍しく、歴史的な宿に泊まったと実感できます。出雲湯村温泉の共同浴場は、温泉好きには湯が良いことで有名。湯乃上館の経営なので、共同湯に入り放題なのは嬉しい限りです。宿から通うのは面倒かと思ったのですが、目の前なので宿の風呂場に行く気分で全く問題ありませんでした。
入り放題といっても、共同湯の入浴料は安いので、お得感が無いと思うかもしれません。しかし、写真の家族湯まで無料なのですから嬉しい限り。宿泊者はさらに、営業終了後や営業開始前の誰も居ない共同湯に入る事もできるのです。有名な温泉を貸し切るのは温泉好きの夢。泊まるだけで、その夢が実現するのですから、私は思わず大興奮してしまいました。カードのCMではありませんが、温泉好きにとって、まさにプライスレスな感動なのです。
漆仁乃湯とは、目の前の斐伊川の昔の名前、漆仁川にちなんだもの。お湯は単純温泉ですが、薄い水色をした不思議な湯です。主成分は塩分ですが、微妙な含蓄、感触を感じる湯で、内湯のフレッシュ感が際立ちます。露天風呂は内湯の捨て湯なので、フレッシュ感が明らかに落ち、湯もかすかに白濁気味ですが、塩分主体の湯であたたまるので、外気で涼みながら露天に浸かるのも気分がよいのです。
他に川が増水すると水没してしまう幻の露天風呂がありますが、入れるかは運次第なので期待してはいけません。脱衣場も無い自然の湯ですが、川底から湯が湧いており、奈良時代の出雲風土記にも登場するこの温泉地の原型を見る思いがするので、温泉好きなら是非入っておきたいものです。
次ページで、湯乃上館の食事をご紹介します。