ゴテゴテと飾られた国産に飽きた人に
2004年に日本に初登場したコンパクトミニバン。今回のモデルチェンジでエクステリアはフロントマスクを初め大きく変更、ドアパネル以外は全て一新されているそう。サイズは旧型より全長が15mm短い、全長4405×全幅1795×全高1670mm。ベーシックなコンフォートライン(293万円)と、豪華装備のハイライン(339万円 写真)をラインナップする
最近の国産ミニバン(というかマルチシーターモデル)のダウンサイジングを目の当たりにしたのか、それともVWにとっての“正真正銘ミニバン”、シャランが日本市場へ復活を果たしたことを記念したのか、ゴルフ トゥーランも2度目のビッグマイナーチェンジを機に、VWのミニバンラインナップとして、大々的に打ち出していくようだ。
カンファレンスでは、走りを諦めないミニバンを目指した、と説明された。日本のミニバンだって最近は走りを諦めていないぞ、と思いつつ試乗に挑んでみる。試乗コースは、箱根仙石原から芦ノ湖スカイラインを周遊するルートだ。
試乗会会場となる仙石原の箱根ハイランドホテルの駐車場で、まずはじっくり現物をチェック。水平グリルとヘッドライト(LED入り)が融合した今VW顔になった。ポロから新型トゥアレグまで、同じイメージの顔である。さすがに、パサートやマルチバンまで、とってつけた同じ顔(要するにマイナーチェンジで顔を変えるとどうしても違和感が残る)というのはどうかと思うが、とりあえずトゥーランでは新しい顔の収まりも悪くない。
エクステリアの見栄え質感は、以前に比べ、よりいっそうよくなっている。フロントマスクのみならず、リアからのイメージも最新世代VWに共通するイメージに仕立てられた。特に、リアピラー回りの新しいデザインが、新型トゥーランに躍動感を与えている。
乗り込めば、そこは質実剛健のイメージ以外の何ものでもない。素っ気ないほどシンプルにまとめられていて、国産ミニバン経験者やデザイン主義のフランス/イタリア車乗りは物足りなく思うだろう。逆に、昔からのドイツ車好きは、“そうそう、これこれ、こんな感じ”と馴染むに違いない。
ここに、ドイツ製ミニバンのチャレンジが、まずある。日本のミニバンは、田舎の応接間よろしくゴテゴテと飾り付けたり、いろんなデザイン要素を欲張って組み合わせてみたりと、賑やかな雰囲気のモデルが未だに多い。そこに親しんでいる人は、トゥーランのインテリアなど鼻にもかけないだろうが、逆に飽き飽きしてきた人には新鮮に映るだろう。実際、国産ミニバンの中には、デザインのシンプル性を表現しようとしているモデルもある。
加えて、基本的で必要十分な機能性とシンプルなデザインの組み合わせが合理的と捉えられる時代の流れになってきた。走りも機能も、そしてデザイン的にも生真面目なフォルクスワーゲンが、“ガイシャ”の枠を飛び越えてくる可能性は高い。VWグループには、世界一を目指す意気がある。
ハイラインはアルミパネルで高級感を演出。シート地はアルカンターラ&ファブリックを用い、運転席と助手席はスポーツシートが装備される
ちなみに、2列目は全て取り外し可能で、3列目は収納タイプ。シートの置場にさえ困らなければ、まるでワンボックスカーゴのような使い方も可能である。家具付きワンルームマンションの引っ越しくらいならできそうか。
ラゲージは7人乗車仕様で121リッター、3列目収納時で600リッター、更に2列目を取り外すことで最大1913リッターとなる。また助手席は長尺物に対応するため、完全に背もたれを倒すことができる