火病

火病は急に怒り出す病気ではなく、怒りを抑圧することにより、心身に生じる異変のことです

心の病気の中には、その人の属する社会、文化の影響が大きな文化依存症候群と呼ばれるものがあります。

例えば、日本人に多いとみなされている対人恐怖症。その名の通り、対人状況で強い不安や恐怖感が生じる病気ですが、欧米人の目から見れば、奇異に見える文化依存症です。

今回は、日本のお隣、韓国の文化依存症である「火病」について解説しましょう。

ネット社会における火病への誤解 

まず最初に触れておきたいのは、火病が近年ネット上で、急に怒り出す人の代名詞のように使われていることです。実は、これは本来の「火病」に対する全くの誤解。火病の英語名が「anger syndrome」であることから、このような誤解が広がったたのでしょうか? 本来、「火病」という病気は、怒りを抑圧するが故に生じてしまう、心身の異変を指します。

火病の症状

火病(hwa-byung)の主な症状は下記の通り。怒りを長期間、心の底に抑圧させた結果、以下のような異変が心身に生じます。
  • 不眠
  • 激しい疲れ
  • パニック
  • 今にも死んでしまうような感覚
  • 冴えない気分
  • 消化不良
  • 食欲消失
  • 息苦しさ
  • 動悸
  • 体の痛み
  • みぞおちのしこり感
火病の症状は多様ですが、簡単に言ってしまえば、長い間、蓄積していた怒りのエネルギーを、みぞおちのしこりのように感じ始めてしまい、喉が詰まり、今にも死にそうな気持ちになってしまうのが、本来の火病の特徴です。これらの症状は韓国の人にしか起きず、日本人の自分には関係ない……と思うのは少々早計。問題の本質は、「怒りを心の底に長い間、抑圧してきたことによる不調」なので、日本人の場合も、同じように気持ちを押さえ込んでいると、火病とは異なる形で心身の異変が出現してしまうでしょう。

怒りのエネルギーへの治療法・対処法

火病の治療法は、個々の火病の症状によります。他の文化圏から見たときの症状自体の奇異さを抜きにすれば、精神医学的にどの病気に相当するかを考えます。例えば、怒りを抑えすぎてうつ病的な症状が出ているとみなされる場合は、うつ病の治療を行って治療することになります。

そもそも、怒りのエネルギーを心の底に溜めすぎてしまうことは、心の健康によいことではありません。できればその都度、怒りの気持ちを適切な方法で相手に伝えた方がよいでしょう。長い間、煙一つ出さず、ある日突然大噴火してしまう火山より、毎日ポンポンと火口から蒸気を出している火山のほうが、長い目でみればずっと安全(?)です。


ガイドの体験から感じること

ところで、ガイドは米国留学中、外国人留学生用の寮に一年間入っていました。寮の大食堂で、朝夕、食事を取るのですが、テーブルはイタリア人はイタリア人同士、インド人はインド人同士といった感じ。日本人は少なかったので、韓国人留学生とよく一緒に食事したものでした。それで、誰それがキレたとか、喧嘩したとかいった話は全然なかったです。もっとも、この男を怒らせたらヤバイと思うような体格の良い同級生もいましたが、実に寡黙な男でした。

韓国人留学生で一番心の病気に近いと思えるケースは、一人の女子学生が夜中に数時間、ボーイフレンドと長電話していたことでしょうか。寮の部屋は相部屋。部屋の電話のコードがドアの隙間から出ていて、パジャマ姿のまま、ゴロリと廊下にねっころがって、電話をしている姿は、寮の留学生たちの間では有名でしたが、これは個人的な性質で、民族として一まとめにするような問題ではないでしょう。まあ、そのような具合で、火病を発病した韓国人留学生は少なくとも私の周りにはいませんでした。本来の意味の「火病」は中年期の女性に発症する病気だからかもしれませんが……。

「怒りは敵と思え」という名言が諭すように、怒りはトラブルの元ですが、怒りを心に抑圧し続けるのは良くありません。パートナーの物言いにカチンとする度に怒りを抑えつけるのはNG。火病ではなくても、いつか何らかの異変が心身に現れてしまうでしょう。やはり、きっちり、パートナーに気持ちを伝えて、怒りのエネルギーを適切な方法で心から処理するのがいいのかもしれません。
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