労務管理

派遣にとって待機時間は重要!「待機中」の対処法

派遣にとって待機時間は重要。派遣先での業務が終了し、次の派遣先が決まらない期間を「待機」と言います。転職活動を始めることもできず、いつ決まるか分からない状況にモチベーションも下がりがちです。派遣会社が「待機中」に何をするべきか、行わなければならない義務も合わせてお伝えします。

小西 道代

執筆者:小西 道代

労務管理ガイド

派遣にとって待機時間は重要!

派遣社員の「待機」とは、どのような状況を指すの?

ある派遣先での派遣期間が終了し、次の派遣先での派遣期間が開始するまでの期間を
待機」
と呼んでいます。法律上の言葉ではなく、派遣業界での一般的な呼び方です。派遣契約は6ヶ月や1年といった期間を定めて締結され(期間が無制限の派遣契約は不可)、派遣先が派遣の継続を希望すれば、更新されます。派遣契約が更新される場合は、今の契約が終了した翌日に次の契約がスタートするため「待機」は発生しません。
 
派遣先にとっても、業務に慣れた人材に来てもらうことがベストであり、更新を希望されないということは、派遣会社の対応または派遣スタッフのスキル等に何らかの問題があるかもしれません。もちろん、派遣会社や派遣スタッフ側の問題ではなく、派遣先の事情や業務量の調整等によっても、派遣契約が更新されないこともあります。その場合、今の契約期間をもって派遣契約は終了となり、派遣会社は次の派遣先を探さなければなりません。次の派遣先が見つかるまでの期間が「待機」です。
 

「待機」中の雇用契約はどうなっているの?

派遣スタッフの雇用契約には、契約期間が定められた有期雇用契約と、契約期間の定めがない無期雇用契約があります。派遣会社とどちらの雇用契約を締結しているかによって、待機中の待遇が変わります。有期雇用契約の場合、派遣会社と派遣先が締結する派遣契約の期間を合わせて、同じ期間としていることが多いです。派遣で働き始める前に派遣会社から受け取る「就業条件明示書」が「労働条件通知書(件)就業条件明示書」となっている場合がこの例です。
 
この場合、派遣契約が更新されないと雇用契約も更新されないことになり、契約期間満了によって退職となります。ただし、有期雇用契約を何度も更新していて、同じ派遣会社に通算5年以上雇用されているときは「無期転換ルール」の対象となり、より安定した無期雇用契約とすることができます。
 
派遣会社と無期雇用契約を締結していれば、派遣先との派遣契約が更新されずに終了したとしても、派遣会社は次の派遣先を紹介する義務があります。派遣先が変わることを理由に、派遣スタッフの待遇を大きく変えることはできません。原則、雇用契約書に記載された労働条件が基準となりますので、業務内容や通勤時間の変更など、どこまで受け入れることができるかは、事前に派遣会社と相談しておきましょう。
 

「待機」中の給与は支払われない?

本来、給与の支払いは「ノーワーク・ノーペイ」が原則です。働いていない以上、その時間分の給与は控除されることが通常です。「待機」は、派遣会社が次の派遣先を紹介していないことが原因で働いていない状況となっていることから、派遣会社は自社の責任で生じた欠勤として「休業手当」を支払う義務があります。休業手当の金額は、法律で「直近3ヶ月の平均賃金×60%」と決められています。派遣会社によっては、100%の給与を支払って自社内で働いてもらうということもあるようです。業務内容に問題がなければ、少しでも給与が多く支払われる方を選びたいところです。
 
派遣会社と有期雇用契約を締結していて、派遣契約と雇用契約の期間が同じ場合に次の更新がない場合、派遣会社は次の派遣先を紹介する義務がなくなります。しかし、派遣会社も、これまで教育研修などの時間をかけて大切に育ててきた派遣スタッフが退職することを望みません。できる限り次の派遣先を探して紹介してくれるはずですが、この「待機」は雇用契約終了後に発生しているため、派遣会社に休業手当の支払い義務がありません。
 
なお、有期雇用契約であっても、その契約期間の途中で派遣契約が終了する場合は、無期雇用契約の場合と同様、契約期間の終了まで休業手当の支払いを請求することができます。
 

派遣会社に義務づけられた「雇用安定措置」とは??

派遣で働くときに知っておかなければいけないのが「抵触日」です。事業所単位と個人単位の2種類があり、派遣で働くことができる「3年」を超える最初の日を指します。

事業所単位:その事業所で初めて派遣を受け入れた日から3年を超える日
個人単位:一人の派遣スタッフを同じ部署で受け入れた日から3年を超える日

 派遣契約の次の更新で抵触日を迎える場合、法律により、派遣会社は次のいずれかの対応をしなければなりません(無期雇用者や60歳以上の者は除く)。
  • 派遣先へ直接雇用の依頼
  • 新たな派遣先の提供
  • 派遣元で派遣労働者以外としての無期雇用
  • その他雇用の安定を図るための措置(教育研修など)
 派遣スタッフが抵触日を迎える前(1年~3年未満の間)であっても、上記の対応は努力義務とされているうえ、派遣会社は派遣スタッフが長期のキャリアアップを図ることができるよう「年に8時間以上」の教育研修が義務づけられています。業務に必要な資格取得支援の教育を行う例や、派遣会社の研修施設に通えない派遣スタッフのためe-ラーニングの整備を進めている例もあります。
 
派遣会社から「待機」と言われたとき、休業手当が支払われる場合は、自分のキャリアを見直すためにキャリアコンサルティングを受けてみたり、興味ある新たなスキルを身につけるため教育研修を受けることでモチベーションを維持することができます。休業手当が支払われない場合は、生活の安定が最優先であるため、派遣会社に「待機」の期間を確認したうえで、自身でもある程度の期間を決めて転職活動に入ることも考えなければなりません。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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