顔をあわせやすい間取りにしよう
家族が仲良く暮らせる家にするには、(1)顔をあわせやすいプランであること、(2)コミュニケーションがとりやすいこと、この2点が必要だと思います。同じ家に住む家族として互いに気遣いながら仲良く暮らすには、それぞれの様子をさりげなく把握し、会話のきっかけが自然と生み出される工夫が必要になります。そのためには、まず、できるだけ顔をあわせやすいプランになるように心掛けましょう。
子どもと顔をあわせやすい間取りにして、子どもの様子を常に把握できるようにしたいものです
個室への行き来にリビングを通る間取り
子どものいる家庭で採用されることの多い「リビング階段」は、その名の通りリビング内に階段を設けるプランのこと。家族が顔をあわせやすい間取りとしておすすめです。住宅メーカーの「子育てしやすい」とか、「20代、30代向け」といったキャッチフレーズのついた住宅商品のほとんどがリビング階段のプランを用意しています。リビング階段なら、学校から帰ってきたときも、外出するときも、個室への行き来の際に必ずリビングを通ることになるので、それとなく親は子どもの様子を察知できます。実際に子どもが「ただいま」と言うときの表情を見て、「元気がないな」とか、「機嫌がよさそう」などと、母親がわかることはありそうです。子どもの小さな変化に気が付けば、深刻な事態になる前に対処ができる可能性がありますね。
2ボウルの洗面室で滞在時間を増やす
もうひとつおすすめなのは、洗面室を2ボウルにすることです。家族の多い人なら経験があると思いますが、朝は狭い洗面室に家族が集中します。洗面ボウルが複数あれば、便利なうえに、短時間であっても並んで歯磨きをすることで、毎朝、子どもの様子を把握できるのではないでしょうか。吹抜けで階下と個室をつなぐ
顔をあわせる機会を増やす間取りを採用したら、さらにコミュニケーションをとりやすい工夫をすることが必要です。そのためには、顔をあわせる場所に家族が自然と集まってくる仕掛けをしましょう。そのひとつの方法として提案したいのは、吹抜けです。吹抜けは空間の開放感が増すだけでなく、上下階の空間がつながり、それとなく気配が伝わります
吹抜けをつくると、上下階の音や気配が伝わりやすくなります。階下で楽しそうな笑い声がすれば個室にいる子どもは気になるでしょう。また、料理をする音やニオイなども、ダイニングやキッチンへの誘導につながるかもしれません。ある新築した家族を取材したとき、「お菓子をつくり始めると部屋にいてもわかるらしく、娘が手伝ってくれる機会が増えたんです」と吹抜けの効果を喜んでいた女性がいました。
家族が集うたまり場をつくる
住宅の中に「たまり場」をつくるのもよい方法です。ここで言うたまり場とは、なんとなく人が留まっていたくなる場所のこと。広い空間である必要はありませんが、落ち着ける場所であることが重要です。そして、家族が同じ空間にいながらも、思い思いのことができるようになっていると、滞在時間が長くなると思います。例えば、ピットのような空間はどうでしょうか。ピットとは本来、穴とか、くぼみのことで、住宅の床を一段掘り下げてつくり出す空間のことです。床が低くなっているので、潜り込むような感覚が生まれ、その空間は他の空間と心理的に区切られます。
また、ヌックのような場所をつくるのもいいかもしれません。ヌックとは、奥まった場所のことです。リビングの一画に書棚を設けたり、パソコンを置いたりして、家族みんなが利用できるようにするとよいでしょう。
子どもが小さいうちは親子の触れ合いを重視して、家族そろって食事をしたり、団らんの時間を積極的につくりたいものですね
このように、家族の触れあう場所をつくり出し、コミュニケーションを深めやすい設計を取り入れるようにして、家族仲良く暮らしたいものです。家庭が円満であれば、家そのものにも愛着が生まれます。それによって、長く暮らしたいという気持ちも育まれるような気がするのです。
【関連記事】