睡眠導入剤は不眠解消に有効ですが、いろいろ工夫してもダメだった時の、最後の手段にしておきましょう!
まずは、寝る前に大食しない、中枢神経を刺激する薬物であるカフェイン、ニコチン摂取は夜間は控える、適度に運動してすっきりするなど、良い睡眠が得られやすい習慣を試してみましょう。
それでも不眠が収まらなければ、いよいよ睡眠導入剤を考えます。睡眠導入剤とは、一般に脳内のベンゾジアゼピン受容体に作用する薬物です。睡眠導入剤のなかでも代表的なベンゾジアゼピン系睡眠導入剤について、作用機序、種類、副作用の基礎知識をわかりやすく解説します。
ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤の作用機序・種類
ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤の作用機序では「GABA」と呼ばれる物質が重要です。GABAは中枢神経系を抑制する、代表的な脳内神経伝達物質。ベンゾジアゼピン系薬物にはGABAの脳内作用を増強する働きがあります。少し専門的ですが、メカニズムについて簡単に解説しましょう。体内に取り込まれたベンゾジアゼピン系薬物は、脳内の「GABA A受容体」という部分に結合します。ベンゾジアゼピン系薬物が結合したGABA A受容体に、GABAが結合すると、塩素イオンの神経細胞内への流入が、GABA単独で結合した場合より促進されます。これによって、脳内の活動はスローダウン。それが心の不安、緊張を和らげ、眠気をもたらします。ベンゾジアゼピン系薬物のうち、抗不安作用が強いものは抗不安薬に、催眠作用が強いものが睡眠導入薬に分類されます。
ベンゾジアゼピン系抗睡眠導入剤の種類は、服用した薬の濃度が体内で薄まったことを示す「半減期」によって、超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類されます。半減期が短ければ短いほど、迅速に血中濃度がピークに達し、その後、すみやかに血中から除去されます。効き目が早く、体からすぐ抜ける薬だと言えるでしょう。寝つきが悪い場合は、作用時間が一番早い超短時間型の睡眠導入剤を入眠前に服用する事が適しています。
ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤の副作用・問題点
ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤の副作用としては、まず依存性の問題があります。睡眠導入薬を1ヵ月以上連続服用すると体に耐性ができてしまい、以前と同じ用量では薬が効かなくなってきます。また、急に服薬を中止してしまうと、強いイライラ、吐き気、服用前よりも強い不眠症状である「反跳性不眠(はんちょうせいふみん)」などの不快な退薬症状が、程度には個人差がありますが、現れてきます。こうした依存性のため、ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤の連続服用は、原則的には1ヵ月以下が望ましく、また、睡眠導入薬をやめる際には、いきなりではなく、段階的に減量していく必要があります。
ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤は、服用後の自動車運転など、してはいけない
ことに注意しておけば、通常の用量、健康状態では、深刻な副作用がほとんどない安全な薬ではありますが、過剰服用には厳重な注意が必要。特に、他の薬物の服用時には注意が必要です。例えば、飲酒時に大量の睡眠薬を服用すると、アルコールの中枢神経抑制作用と、ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬による中枢神経抑制作用が互いに増強しあい、呼吸停止など命に関わる事態が生じる可能性があります。
主なベンゾジアゼピン系睡眠導入剤一覧
以下に主なベンゾジアゼピン系睡眠導入剤一覧を挙げます。左側は一般名で、()内は商品名です。処方時には()内の商品名が使用されることが多いです。■ 超短時間型(作用時間が2~4時間)
トリアゾラム (ハルシオン)
■ 短時間型(作用時間が6~10時間)
ブロチゾラム (レンドルミン、レンドルミンD)
ロルメタゼパム (ロラメット、エバミール)
リルマザホン塩酸塩水和物 (リスミー)
■ 中間型(作用時間が12~24時間)
フルニトラゼパム (サイレース、ロヒプノール)
ニトラゼパム (ベンザリン、ネルボン)
エスタゾラム (ユーロジン)
ニメタゼパム (エリミン)
■ 長時間型(作用時間が24時間~)
クアゼパム (ドラール)
フルラゼパム塩酸塩 (ベノジール、ダルメート)
ハロキサゾラム (ソメリン)