コレステロールの摂取制限は本当にいらないのか
前のページでも述べたように、コレステロールを含む食べ物を食べても、それほど体に影響は大きくありません。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」においても、目標量の算定は控えられました。コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかったためです。コレステロールは、動物性たんぱく質に多く含まれていますが、制限するとたんぱく質不足につながり、特に高齢者は低栄養になる可能性があるので注意することも示されています。
また2013年にアメリカ心臓病関係の学会ACC/AHAがガイドラインにおいて、コレステロールの摂取制限を設けないと発表して話題となりました。日本動脈硬化学会では、この発表について健康な人については賛同するが、すでに高LDLコレステロール血症患者にもあてはまるものではなく注意が必要だと声明をだしました。
コレステロールを増やさないために
コレステロールを低下させる作用のあるオレイン酸が豊富なオリーブオイル |
LDLコレステロール値や中性脂肪、血糖値などが気になる方は、次のようなことを意識してください。
■食べ過ぎて中性脂肪を増やさない
体内の中性脂肪が多くなると、sdLDLコレステロールが増える原因になります。食べすぎや余分なエネルギーを摂取すると、中性脂肪として蓄積されてしまいます。アルコールの飲みすぎ、ケーキなどの甘い物のとりすぎにも気をつけましょう。
■脂肪酸の選び方
脂質も適度に必要な栄養素です。オリーブオイルに含まれるオレイン酸や、青魚に多いEPAやDHAなどのn-3系の脂肪は、コレステロールを減らしたり、善玉コレステロールを減らさないようにしたりする働きがあります。ただしオレイン酸やn-3系の脂肪酸は、たくさん食べればカラダによいというのではありません。たくさん摂取すればカロリーオーバーになりますから、中性脂肪を増やす原因になります。
詳しい脂肪酸のお話は、こちらから。
■アルコールは控えめに
適量ならば、HDLを上昇させる効果があるとみられていますが、多量に飲めば逆にLDLを上昇させます。厚生労働省の提唱する「適量」は、1日あたり男性で純アルコール20g。だいたいビール1本、日本酒1合、ウィスキー(シングル)3杯、ワイン2~4杯程度です。
お酒が進むとまた料理も美味しくなりますから、低カロリーなものを選ぶなど、食べ過ぎにならないようにということも気をつけて、ほどほどを楽しみましょう。
他にも、野菜や果物に多く含まれている水溶性食物繊維や青菜などに含まれているクロロフィル、昆布に含まれているフコイダン、酢などにもコレステロールを低下する働きがあるという研究報告があります。脂肪が少ない植物性食品をあっさりいただく和食を中心に心がけると、無理なく実践できそうですね。ただし和食は、塩分摂取量が多くなりがちですので健康のためには減塩も心がけましょう。
また日本動脈硬化学会では、トランス脂肪酸の摂取を減らすことも推奨しています。トランス脂肪酸については、「健康に影響? トランス脂肪酸」をお読みください。
運動も積極的に、禁煙も
食生活とは別ですが、脂肪はエネルギー源となるので、継続的に運動をすれば減らすことができます。また適度な運動は、善玉コレステロールを増やす効果もあります。歩数の多い人ほどHDLコレステロールが多い傾向があるという調査報告もあります。また酸化を防ぐためにできればタバコをやめることなども心がけてみてください。
参考/
・脳卒中の予防(一般社団法人日本脳卒中学会)
・脂質「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)
・コレステロール摂取量に関する声明(日本動脈硬化学会)
■関連リンク
・脂質異常症を予防するために(食と健康)
・よく聞く脂肪酸ってなーに(食と健康)
・血液サラサラ生活習慣病予防に役立つ「植物油」をチェック!(食と健康)
・健康に影響? トランス脂肪酸(食と健康)