「高脂血症」は、2007年4月より「脂質異常症」に変わりました。「脂質異常症」は、血液中に中性脂肪や悪玉コレステロールが増えすぎて、あるいは善玉コレステロールが少なすぎる状態で、そのままにしておくと動脈硬化、さらに脳・心臓疾患を引き起こすかも……。今回は「脂質異常症」の基礎知識と予防のための食生活についてご紹介します。

(この記事は、以前の2005年「高脂血症」の記事をもとに、2008年に「脂質異常症」への変更を加えた内容になっています。)

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高脂血症から脂質異常症へ

血液中の脂質、特に中性脂肪やコレステロールが多すぎて血液の粘りが増している、いわゆる血液がドロドロと表現される状態で、医学的には以前は血液中の脂質の濃度が高い状態を「高脂血症」と呼ばれていましたが、2007年4月に「脂質異常症」と変更されました。

これは、「日本動脈硬化学会」が「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2007年度版」を発行し、診断基準を改定した事に基づいています。

成人では約1/4程度、2,000~3,000万人が「高脂血症」と言われ、年々低年齢化している傾向が見られました。高脂血症では、血液中にある脂質のうち総コレステロールと中性脂肪の値が特に多くなっている状態をさしましたが、脂質異常症では、総コレステロール値を診断基準から外しました

というのは、総コレステロール値が高くても善玉といわれているHDLコレステロール値が高く、悪玉と言われるLDLコレステロールが低ければ、動脈硬化の心配はありません。しかし従来の基準では、総コレステロール値で治療が必要かどうかが決められ、無駄な投薬治療が行われる場合もあったたそうです。

またHDLコレステロール値が低い方が、心疾患のリスクが高いことから、「高脂血症」と呼ぶのは適していないという事で、「脂質異常症」に変更されました。

血液中の脂質は4タイプ

血液中の脂質濃度
血液検査で脂質の濃度をチェック
まず診断基準を理解するために、脂質異常症に関わる用語の説明からしていきます。

血液中の脂質(総称=血脂)には、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸などがあります。脂というと、現代では敬遠されがちな栄養素ですが、これらは人体の細胞の基礎代謝に必要な物質で、正常な状態では血液中で一定の濃度に保たれています。しかし、エネルギー源である糖質や脂質を取りすぎると、余った分が中性脂肪という形で脂肪細胞に蓄えられます。
  • 遊離脂肪酸=エネルギーとなる。
  • 中性脂肪(トリグリセライド)=脂肪細胞の中に貯えられ、必要に応じて脂肪酸になり、エネルギーとして使われる。
  • コレステロール=細胞膜の構成成分。ステロイドホルモンの材料、胆汁酸の材料になる。
  • リン脂質=細胞膜の構成成分。水に溶けにくい物質を水になじませる働きがあり、胆汁やコレステロール、中性脂肪を溶かして運搬する。

コレステロールのいわゆる善玉・悪玉などの詳しい説明は、こちらをご覧ください。

脂質異常症の診断基準

高脂血症から脂質異常症の診断基準は、次のように変更されました。
資質異常症の診断基準(空腹時採血)
分 類 改定前(検査値) 改定後(検査値)
総コレステロール ≧220mg/dl  -
LDLコレステロール(悪玉が多い) ≧140mg/dl ≧140mg/dl
HDLコレステロール血症(善玉が少ない) >40mg/dl >40mg/dl
トリグリセリド(中性脂肪が多い) ≧150mg/dl ≧150mg/dl
動脈硬化症疾患診療ガイドライン2007版

動脈硬化の原因にもなる脂質異常症

脂質異常症になった結果、動脈硬化を引き起こし、ひいては心臓では狭心症や心筋梗塞、脳では脳梗塞などを招いてしまうリスクがあります。また、血中の脂質が増えることから糖質の代謝にも異常が生じ、肝臓や膵臓の病変を招き、脂肪肝や急性膵炎、胆石を発症する場合もあります。またコレステロール値が過剰であれば注意が必要ですが、極端に摂取を制限してもホルモンや胆汁酸の分泌に不足してしまいます。

しかも困ったことに、脂質異常症はあまり自覚症状がありません。自覚している人はわずか3割程度(平成11年国民栄養調査)にすぎないのです。突然こうした疾患を引き起こすのでサイレントキラーと呼ばれています。

一般に男性は30代から、女性は50代から、ほぼ2人に1人が脂質異常症の状態にあると考えられています。女性の方がなりにくいのは、女性ホルモンのエストロゲンが血液中の脂質が正常になるように働いているからです。しかし、閉経後はエストロゲン分泌量が激減するため、LDLコレステロールが増加しがちです。

脂質異常症の原因や食事との関わりは次のページで・・・・>>