術前検査
麻酔事故の原因は様々でしょうが、獣医師がその猫の状態をどこまで把握できているかで防げる場合があるかも知れません。所見や術前検査から、もしかしたら隠された病気がないか? その猫の今現在の状態を適切に評価されているか?など洞察力が必要とされます。獣医師の経験によるカン?も必要かもしれません。少しでも安全性の高い手術を行うために、術前検査で貧血の有無、肝臓・腎臓の機能、血液中のタンパク濃度など、心臓・肺に異常がないかを事前にチェックしてもらいましょう。
■術前検査項目
- 血液検査(すべての項目)
- 心電図
- 胸部レントゲン
- 尿検査
■最低限の検査項目
- 触診
- 体温測定
- 心音チェック
- 検便
下記のうちのどの血液検査を行う必要があるかは、獣医師とご相談を。
1.血液一般検査(CBC)
- 赤血球数検査ヘマトクリット(Ht)
血液中に含まれている赤血球の割合を調べます。赤血球が減ると運ばれる酸素の量が少なくなり、貧血が起こります。増えすぎると、血液が濃くなって流れにくくなり、血管がつまりやすくなります(多血症)。 - 白血球数検査
白血球は、身体を細菌やウィルスから守る働きをしています。もし白血球数が増えていると、身体のどこかで炎症が起きていたり、細菌やウイルス感染をしている可能性が疑われます。
- BUN 尿素窒素検査
タンパク質(食物など)の老廃物で、腎臓の排泄機能が悪くなると尿素窒素が尿中にうまく排泄されなくなり血液中の濃度が上がります。
増加……急性/慢性腎炎、腎不全、脱水、尿路閉塞(尿路結石)、糖尿病、感染症など
低下……タンパク質欠乏、肝障害など - Cr クレアチニン検査
筋肉が活動したときにできる物質で、尿素窒素(BUN)と同じく、腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄される一種の老廃物です。もし障害があるとうまく排泄されず血液中の濃度が上昇します。クレアチニンは尿素窒素とは異なり、腎機能の障害以外ではほとんど影響を受けないので、正確に腎機能障害の程度を知ることができます。
増加……腎機能障害、筋障害など - GPT(ALT) アラニンアミノトランスフェラーゼ検査
肝臓の細胞の中に最も多く含まれていますので、特に肝機能検査を目的として行われます。
増加……肝障害(急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変ほか) - GOT(AST) アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ検査
心筋の細胞の中にある酵素で、肝臓や骨格筋などにも含まれています。この酵素は細胞に異常があると血液中に放出されるので、血液中の酵素量を測定して、心臓や肝臓に障害が起きていないか調べることができます。
増加……肝障害(急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝ほか)、筋疾患、筋炎、心筋炎、心筋梗塞など - ALP アルカリフォスファターゼ検査
肝臓・骨・小腸・胎盤の働きに関係があるとされている酵素で、肝臓から十二指腸に至る胆汁の流出経路に異常があるか、骨の病気、肝機能、骨盤の機能が正常かどうかも分かります。
増加……胆管肝炎、骨疾症、ステロイド剤など - TP 総蛋白検査
全身状態を判断する目的で検査されます。
増加……炎症、感染症、脱水、FIP、多発性骨髄腫など
低下……栄養不良、肝障害、腎障害など - ALB アルブミン検査
肝臓で合成され栄養源となり栄養状態を表すので、肝機能が低下したり、病気などで栄養が悪くなると減少します。
増加……脱水など
低下……栄養不良、肝障害、腎障害など
- 猫白血病ウイルス(FeLV)
- 猫免疫不全ウイルス(FIV)