カーテンレールの上を歩くのは、許しましょうか
同居人(飼い主)は餌をくれるし、トイレの掃除もしてくれる、かわいがってくれる、けれど「これ」をしたら同居人に叱られる、同居人が嫌がる、同居人が悲しむ、だからやってはいけないことがあると覚えてもらいましょう。
猫の知能は、2~3歳の子供と同じ程度といわれています。一度いけないといわれたことを二度と繰り返さない賢い猫もいますが、何度叱られても同じ事を繰り返す懲りない猫もたくさんいます。しつけは、それぞれの猫にあった方法で教えないと効果がありません。
リーダーが存在する群れで行動する犬とは違い、単独行動の猫にとって飼い主は優位ではないので、一方的な命令で従わせることはできません。ただ、猫は自分が不愉快に思ったことをなかなか忘れない動物です。猫にして欲しくないことを覚えてもらうときは、猫がそれをしたら嫌な思いをしたという条件付けで覚えさせる方法が適しているでしょう。
<目次>
猫をしつける意味とは?
猫という動物を理解し、その習性を利用し、自分の飼っている猫を観察することで、しつけに近いことは十分できる思います。猫が何かいたずらをしても、それを悪さをしたとは思わないでください。猫は何か悪いことをしようとしてやるのではありません。一緒に住む人間にとっては、テーブルの上に乗る・花瓶を壊す・流しの中に入り込む、などなど……がどんなに迷惑な行為であっても、猫にとっては意識していない普通の行動でしかありません。
猫のしつけは、悪いことをする猫を矯正するためにやるのではなく、同居する人間にとってやって欲しくないことを覚えてもらうためのものとご理解ください。
しつけには猫の苦手を利用
猫には苦手なものがたくさんありますが、その中でも騒々しい子供が苦手な猫が多いです。知り合いのお年寄りのお宅では、お孫さんが遊びに来ている間中猫は雲隠れ。呼んでも出てこず、どこを探しても猫の姿は見えず。でもお孫さんが帰ってしまうと、いつの間にどこから現れたのか座布団の上でくつろいでいる猫がいるとか。子供の大きな甲高い声や、想像できない突発的な動き、乱暴なさわり方や抱き方が大嫌いな猫は多いはずです。でも 猫だって初めてお孫さんと対面したときから露骨に姿を隠してしまうことはなかったでしょう。一度不愉快に感じる体験を経験して、「じゃあ、孫がきているときは隠れているのが一番だ」と学習したから出てこなくなるのです。
一般的に猫は下記のようなものを嫌がります。
- 聞き慣れない音
- 嗅ぎなれない臭い
- 顔などにかかる空気や水
- 気持ち悪いと感じる触感
そこで猫を叱る時は、PCのキーボードを掃除するためのエアー缶スプレーなどを利用して離れた場所から猫に吹きかけます。このような小道具を使うことで、自分を不愉快な目に遭わせたのは人ではなく別のものと認識させてください。
猫の怒り方
怒る方法の一例としては、猫の目を見て訴えるようにこんこんと説教をする、 猫の前で手をパンと叩く、チェッチェと口をならす、怒鳴るのではなく「ダメ!」と少し大きな低い声(いつもと違う口調)ではっきりと制止する、などなどがあります。どんなしつけをする時も、繰り返し、繰り返し、飼い主さんの根気+熱意が必要で、すばらしい同居猫を育てるための根比べと覚悟してください。- 同じパターンで叱る
様々な「してほしくないこと」をされた時の叱り方は、毎回同じパターンの方が良いでしょう。家族が多数いる場合も同じ叱り方に統一しましょう。猫の名前を呼びながら叱ると、名前を呼ばれる=叱られると意味づけされてしまう可能性があるのでやめましょう。 - 叱るときは現行犯で
犬でも人間の小さな子供でも同じですが、何について叱られているのかわかっていない時は、叱っても意味がありません。猫にしてみたら、朝倒した花瓶のことを夕方叱られても、「この人どうしちゃったの?」の世界でしょう。叱るときは必ず現行犯にしましょう。 - 感情的になって怒らない
猫はもともと大きな音や派手なアクション、振動が苦手な動物です。飼い主が感情的に大声を上げたり、手を振り回すことは、猫にとって驚異以外の何者でもありません。叱るときは感情的にならず、いつもより低い声でじっと猫を見つめながら言い聞かせる程度にとどめた方が無難でしょう。絶対に叩いたり蹴ったりしてはいけません。飼い主=怖い人と覚えられないように注意しましょう。 - ダメを徹底させる
家族全員が同じ意識で取り組んで、ダメと決めたことは、いつ何時でもダメを徹底させてください。ただし、猫はとっても要領がよい動物です。みんなが食卓について食事中はテーブルに上らなくなっても、誰もいなくなったら上っていることがあります。ある程度は仕方がないと諦めましょう。 - 場合によっては、同居人が譲歩
先ほどのテーブルの例などのように、猫本来が持っている習性や生態などで、しつけることができない事柄にはあきらめが肝心です。
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猫のしつけの基本
- テーブルに上ってはいけない
食卓を家族が囲んでいるとき、テーブルに食べるものがあるときは決して猫に上って欲しくないと思うのであれば、まずは人間が食べているものを猫に与えないことです。猫の鼻をくすぐる魅惑的な匂いがして、みんなが楽しそうに語らっていると、好奇心旺盛な猫は仲間入りしたくなります。とにかく、猫を無視して、テーブルに上ろうとしたら阻止、上ってしまったら「今はダメよ」といいながら、何度も下に降ろす、これを繰り返していると猫はそのうち諦めるでしょう。
常日頃からテーブルに上って欲しくないのであれば、テーブルに粘着面を上にしたガムテープなどを貼っておきます。テーブルに飛び乗った猫は、粘着面を嫌いますので、この上に上ると不愉快な目にあったと覚えてくれるでしょう。
- 噛んではいけない
母猫や他の兄弟猫と一緒にある程度の年齢(生後2~3ヶ月)まで過ごすと、その間に色んな遊びを通して甘噛みを覚えます。しかし、その時期他の猫との社会生活が築けなかった猫は、噛み方の加減を知らないので、遊びでも本気で歯を立ててしまい、同居人にケガをさせることがあります。小さな子猫を育てるときは、母猫になったつもりで噛んできたら大きな声で「痛い!」を連発して、時には猫の口の中に指を押し込んだり、猫の手足を自分の口で噛ませたりして、噛む加減を覚えさせましょう。
ケージをしつけに利用
ケージを上手に利用すれば、猫に生活のリズムを教えてメリハリを付けることで、猫のオンとオフをコントロールできるようになります。トイレや猫ベッドが置ける2~3段の大きめのケージを用意してください。ケージの中には、猫の食事とお水をお忘れなく。人間の食事時間や、家族が慌ただしくして猫にかまう余裕がない時は、猫をケージに入れ、上から大きな布をかけ覆ってしまいます。してはいけない、と決めたルールを破った時、余りにも遊びが加熱して興奮しすぎた時なども、ケージに入れて落ち着かせます。
最初はケージの中で大騒ぎして暴れたり、鳴き叫ぶかも知れませんが、ケージには無関心を貫いてください。猫と向き合える時間が来たら、ケージの扉を開けます。もし猫が寝ていたらそのまま無理に起こさす、ケージの扉を開けておくだけでOK。
人間の24時間は、猫時間ではおおよそ2~4日分。猫の月齢によりますが、食べたり、遊んだり、寝たりは2~3時間ごとのリズムが多いです。普段から食事やトイレはケージの中を使うようにしておけば、なおのことケージに閉じこめられる違和感が少ないでしょう。
「猫にしつけられて」しまいましょう
猫に「しつけをつける」のはかなり難しい作業です。わたしは猫をしつけるよりも、自分が猫にしつけられる方が楽だと思っています。ただし、猫にしつけられるの意味は、猫をわがまま放題に放任する、例えば鳴けば「お腹がすいたのね」と餌を出し、噛みつかれても「わたしが好きなのね」と我慢し、ソファや柱で爪研ぎされても「しょうがない。かわいいから」と諦めることではありません。猫にしつけられるというのは、「猫がいるからこんなことをされるかもしれない」「でもそれに対して防衛策をとっていなかった自分のミス」と諦めて、次回からは防げることであれば先回りして対策をとっておく、という意味です。
大切な陶器や猫が興味を引きそうな小物を無造作に並べておいたら猫に落とされ壊された、大事な仕事の書類を机の上に置きっぱなしにしたら、その上に猫が乗てクシャクシャにされた、PCを使っていて保存しないで席を離れている間に、猫がキーボードをさわってファイルが消えた……などなど。猫と暮らすと様々なハプニングが起こるでしょう。しかし、それが事前に予測できることであれば、猫に「壊さないでね」「これで遊ばないでね」とお願いするよりも先回りして片付けるなどしましょう。
猫との暮らしは、長いスタンスで考えておく必要があります。猫が何かを要求して鳴き続けたり、何かの行為を繰り返したりしたときに、一度でもその要求に応じてしまうと、猫は「こうすれば要求が通る」と覚えてしまいます。こうなると猫は人間が要求に応じるまでしつこく繰り返しその行動を取り続けます。
して欲しくないことは猫が諦めるまで断固として拒否するか、猫が可愛いからと人間が諦めて、その都度猫の要求に応じるかは飼い主の考え方次第ですが、小さいうちは可愛いからと許し、大きくなってから同じ行為を駄目と教えるのは不可能です。
こんなはずではなかった……という同居生活にならないよう、どんな猫に成長して欲しいか、どんな猫との暮らしを楽しみたいか、最初にじっくり考えてください。一貫した態度で猫と向き合うことで、猫にとっても余計なストレスをもたらすことなく、人と猫との快適な暮らしを実現できるのではないかと思います。
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