- 建て替えとリフォームどっちを選ぶ?多くの人が持つ不安
- こんな選び方をすると損をする!ケーススタディでチェック
- 10年後にまた100万円?目先の費用で選ぶと失敗する
- 地盤や構造に問題があると、リフォームは損をしやすい
- 大がかりな間取り変更リフォームは費用がかさむ
- リフォームでは希望のプランにできない構造がある
- 建て替えができない、前より小さい家しか建たない土地がある
- ターニングポイントは性能向上リフォームと費用のバランス
- こだわりの家にしたいならリフォームが有利
- 建て替えvs.リフォーム、トータルでの工事費用はいくら?
建て替えとリフォームどっちを選ぶ?多くの人が持つ不安
建て替えかリフォームか、どっちを選ぶべきか悩んでいる人も多いことでしょう。最近は住宅の寿命が延び、築30年程度ならリフォームを選ぶ人が増えています。では築35年なら?40年ならどうでしょうか。
筆者は各地でリフォームセミナーを行っていますが、築30年を過ぎた頃から、リフォームか建て替えかという相談をよく受けます。その際に多くの人が持つ不安や悩みは以下のようなものです。
リフォームを選ぶ場合の不安
- 満足のいくプランになるだろうか
- 古い家で快適に暮らせるのだろうか
- 構造に不安は無いだろうか
- リフォームでもこの先長く住めるのだろうか
- 古い家に費用を掛けるのは無駄なのではないか
- 建て替えたほうがお得なのではないか
- まだ使えるのにもったいないのではないか
- リフォームで十分なのではないか
- 費用が高くついて損をするのではないか
- この先そんなに長く住まないのではないか
こんな選び方をすると損をする!ケーススタディでチェック
建て替えとリフォームのどっちを選べば得なのかは、築30年だからリフォーム、築35年だから建て替えといったように、築年数からだけでは判断することはできません。的確な判断をするためには、まずは現状把握をすることが肝心です。状態が良ければ築古でも安いリフォーム費用でこの先を長く暮らせる可能性がありますし、悪ければリフォームに多額の費用が掛かり、建て替えてしまったほうがお得な場合もあります。
またこの先どんな暮らしをしたいのかによっても、どちらを選ぶべきかが異なります。例えば老後のための家づくりをするのに、階段や段差が多い家では危険ですし、安全対策のためのリフォームには費用が掛かります。敷地の状況や間取りによっては建て替えはもとより、住み替えを検討する必要があるかもしれません。
具体的な判断の手順、家族での話し合いのポイントや専門家へ依頼するタイミングなどについては、「建て替えかリフォームか?判断基準はココ」でご紹介していますので、順を追ってチェックしてみてください。
今回は、こんな選択をすると損をする!リフォームで多額の費用が掛かってしまう例、建て替えしたくてもできない例など、建て替えvs.リフォームで失敗しないためのケーススタディをご紹介します。築30年を超えたら、一度チェックしておきましょう。
10年後にまた100万円?目先の費用で選ぶと失敗する
〈ケーススタディ1〉
建て替えとリフォームどっちが安いかと言えば、費用の単純比較ならリフォームに軍配が上がります。だからと言って、工事費用の単純比較だけでリフォームを選んでしまうと、後になって損をするケースがあります。それぞれの費用の特性をご紹介しますと、建て替えは、まだこの先じゅうぶんに使える部位も全て解体しますので、リフォームに比べて無駄な廃棄物が多く、処分費用もかさみます。また仮住まいの準備や家賃、引越し、登記の費用なども必要です。
リフォームは、使える部位はできるだけ再活用するので廃棄物が少なくエコで、住みながら工事をすれば引っ越し費用も不要です。つまりリフォーム最大のメリットは、建て替えと比較して総工事費用が安く済むところにあります。
しかしリフォーム工事は、残す部分を傷つけないよう少しずつ丁寧に壊しながら作るという作業の繰り返しになるため、工事の単価は割高になります。建築工事は、まとめて効率化をはかれば単価が安くなりますので、一気に壊して一気に造る建て替えに比べて、細かい工事を積み上げるリフォーム費用の単価は総じて高いのです。
家は建ちあがった時点から経年劣化が始まり、我が家を健康に維持し続けるためには、定期的なメンテナンスが必要です。特に古い木造住宅のモルタルの壁、木製の破風、バルコニーの鉄骨材などはまめなお手入れをしないと劣化が急速に進み、今回は安く済んでも、10年後にまた100万円以上の費用が必要になるケースも少なくありません。
家は長く維持し続けるものです。建て替えとリフォームの費用比較をする場合は、見積もりを取ってリフォームの方が安かったからリフォームを選ぶといったように、目先の費用だけで比較するのは早計です。
比較の際には、初期費用に加えて最低でも向こう20年のメンテナンス費用を加えた「トータルコスト」で考えるようにすることで、本当にどっちが得かが判断できます。
地盤や構造に問題があると、リフォームは損をしやすい
〈ケーススタディ2〉
次はコスト面では有利なはずのリフォームで、多額の費用が掛かってしまうケースです。
メンテナンスをしないまま長く放置された家は、構造部まで傷んでいるケースが少なくありません。多湿や結露による構造部分の腐食、シロアリによる土台や柱への被害はもちろんですが、基礎が沈んでいる、外壁や基礎に大きなひび割れがある、家が傾いているなどの症状が出ている場合は、地盤や構造に問題が起きていることが多く、この先を安心して暮らすためには大掛かりな改修工事が必要になり、当然費用も高額になります。
地盤や構造に絡む工事は、何もないところにいちから建てる新築と違って、リフォームで行うには手間が掛かります。そのような状況で無理にリフォームをしても、費用がかさむばかりで思ったような家にならず、建て替えればよかったと後悔するケースが少なくないのです。
地盤や構造部は住まいの安全性、つまりこの先の暮らしが安全かどうかを左右する大切な部分です。建て替えかリフォームか迷ったら、これらの健康診断をしっかりと行い、この先も安心して暮らすためにはどんな工事が必要で、いくら掛かるのかといったことを確認しましょう。それによって建て替えかリフォームかの答えが変わってきます。
大掛かりな間取り変更リフォームは費用がかさむ
〈ケーススタディ3〉
快適な間取りは時代や世代によって異なります。築30年の家は、30年前の生活スタイルに合わせて建てられていますので、この先を暮らすにはあちこちに不便があります。間取りも今の時代の家づくりとは異なり、部屋が細かく分かれていたり、床に段差があったり、バリアフリーへの配慮も今ほど徹底されてはいません。そのような古い時代の家を快適にするためには、大掛かりな間取り変更が必要になることが少なくありません。間取り変更リフォームの際は、まず構造的に問題が無いかを確認、必要があれば補強を行ないます。当然、その分日数と費用が掛かり、中にはリフォームでは対応できず、プランに制限が出るケースもあります。
リフォームで費用がかさみやすい工事は、増築、構造上重要な壁が集まっている階段の移動や廊下幅の拡張、水まわりの移動などです。つまりこれらの工事が無ければ予算を削減できるということです。
建て替えのメリットは間取りプランの自由度にあり、リフォームのメリットはこの費用ならここまでできるといった調整がしやすいことです。ですから建て替えかリフォームかを答えを出すためには、それぞれの具体的なプランと費用が出てから比較検討することが肝心です。
リフォームでは希望のプランにできない構造がある
〈ケーススタディ4〉
今建てられている家の構造によっては、壁がほとんど移動できない、窓を大きくできないなど、リフォームでは希望通りの間取りプランにできないケースがあります。
比較的自由度が高い、木造軸組構法と呼ばれる一般的な木造住宅であっても様々な制限がありますので、まずは我が家の構造で希望のリフォームができるかどうかを確認することが必要です。
また構造部に手を入れる大掛かりな増改築の場合は、元と同じ構造で行うのが原則です。他の構造を組み合わせることも可能ですが、「混構造」は緻密な計算と設計が必要ですので、それらをきちんと行なってもらえるリフォーム会社を選ぶ必要があります。
建て替えができない、前より小さい家しか建たない土地がある
〈ケーススタディ5〉
建て替えをしたくてもできないケースがあります。建て替えかリフォームかの判断の前に、まずは建て替えができる土地かどうかを確認しましょう。建てた当初は問題なくても、途中で法律が変わって、そこの土地には家が建てられなくなっていたり、前より小さい家しか建てられないようになっていたりするケースがあります。各地域の条令については各市町村に問い合わせれば教えてくれますので、まずは自分の家が建っている土地にどのような規制がかかっているのか、事前に確認しておきましょう。
また建て替えができない土地の場合は、リフォームであっても建築確認申請が必要な工事はできません。確認申請が必要なリフォームは、一定の条件下での増築などです。何ができて何ができないのかは、現在の建物の規模や構造によっても異なりますので、設計事務所や建築士が在籍しているリフォーム会社に相談しましょう。
ターニングポイントは性能向上リフォームと費用のバランス
さてここまで、建て替えvs.リフォームで失敗しないための5つのケーススタディをご紹介しました。次に、選ぶ際の大きなターニングポイントとなる、住宅性能についてご紹介します。住宅性能とは住宅の安全や快適性、長持ち度、お手入れの楽さなどを測る基準です。建て替えて新しい家にすれば、耐震や断熱、バリアフリーなど、最新の性能を手に入れることができます。
古い住宅は概してこれらの基本性能が低めですから、地震に弱く、冬は寒く、夏暑くて結露が発生し、床に段差があるといったような状況です。
リフォームを選択するのであれば、これらのこれらの性能向上のための費用を見ておく必要があります。おおよその費用をご紹介しますと、1981年以前に建てられた古い耐震性能の一般的な木造住宅を、現在最低限必要な性能に向上させるのに150万円~200万円。断熱材が入っていない家を次世代省エネ基準と呼ばれる快適な状態にするのに300万円~程度となります。
バリフリーリフォームに関しては、段差解消程度であれば、敷居スロープ取り付けで1000円程度からできますが、階段の移動や間取り変更が必要になれば、その分費用がかさみます。
建て替えの場合は、地震に関して言えば法律で定められた最低限の基準は必ずクリアしています。それ以上の性能を希望する場合は、費用と相談です。断熱性能に関しては目安となる基準はあっても法律で定められているわけではないので、やはりこちらも費用次第です。
もちろんお金を掛ければそれだけ安全で快適な家になりますが、問題はどこまで掛ける価値があるかです。性能向上リフォームは、レベルによって費用の調整が可能ですから、レベルと費用のバランスをどう取るかが、建て替えかリフォームかを選ぶターニングポイントになるでしょう。
それぞれの性能向上リフォームのポイントは下記で解説していますので、ご覧になってみてください。
・耐震リフォーム [耐震リフォーム工事で知っておきたい3つのポイント]
・断熱リフォーム [断熱リフォームの事例とポイント、住みながら簡単工事]
・バリアフリーリフォーム [バリアフリーリフォームの基本、意外な必要・不必要]
ちなみに中古住宅購入リフォーム向き物件と言うのは、これらのリフォーム費用が安く済む物件のことでもあります。下記に自分でできる外壁や基礎のチェック方法、リフォームで多額の費用が掛かるケース、将来の出費を防ぐ方法などをご紹介していますので、あわせてご覧下さい。
こだわりの家にしたいならリフォームが有利
建て替えかリフォームか、悩ましい課題ですが、メリット、デメリットだけで考えるのではなく、我が家に向いているか向いていないか、満足できるかできないかといったことを考えることも大切です。例えばリフォームでは、キッチン工事に300万円掛かったといったような話を聞くことがあります。設備機器のショールームでも、リフォームを希望する人は品質の高い製品を選ぶ傾向があると言います。
建て替えや新築の場合は、キッチンはたくさんある中のごく一部、総工事額の中でのやりくりになりますが、リフォームなら家は既にあるのですから、本当にこだわりたい部分に集中して費用を掛けることができます。
またリフォームを終えた人からよく聞くセリフに「新築の時はできなかった」というものがあります。初めての家づくりではどうしても、無難に、飽きがこないようにとスタンダードなプランを選びがちですし、年代的にも若いことが多いため、本当にしたいことができなかった、妥協したというケースも少なくありません。
思い切ったこだわりの家づくりをしたり、これまではできなかった夢を叶えたりと言ったことがしやすいのも、リフォームの大きなメリットです。
建て替えvs.リフォーム、トータルでの工事費用はどちらが安い?
最後に、建て替えとリフォーム、トータルで工事費用はいくらになるか?どっちが安いかをご紹介しましょう。住宅リフォーム推進協議会によると、30年ごとに建て替えた場合のトータルの工事費用は90年で7800万円掛かるのに対し、リフォームを繰り返す場合は5200万円で、リフォームのほうが2600万円安いと言うデータがあります。
このリフォーム費用には、住宅性能向上や間取り変更、水回りリフォーム、屋根や外壁などのメンテナンス工事も含まれています。
またリフォームにどこまで費用を掛けるべきかという質問に対しては、ガイドは建て替えに必要な費用の7割を超える場合は、建て替えを選ぶことをお勧めしています。
建て替えはいちから新しく始める家づくりであり、リフォームはこれまでの家族の歴史を継ぐ家づくりです。どちらにもメリットがたくさんありますので、後悔の無いようじっくり選んで頂ければと思います。
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