漢方・漢方薬/月経痛・生理不順・更年期障害の漢方

漢方で考える更年期障害とエイジングケア

ほてり、めまい、汗、頭痛、肩こり、イライラ、動悸、不眠、肥満、疲労感……。更年期の症状はひとそれぞれですよね。中医学では、女は7の倍数で年をとるといいます。それをもとに、更年期のケアや漢方薬をご紹介。

杏仁 美友

執筆者:杏仁 美友

国際中医師 / 漢方・薬膳料理ガイド

ほてり、めまい、汗、頭痛、肩こり、イライラ、動悸、不眠、肥満、疲労感……。更年期の症状はひとそれぞれですよね。中医学では、女は7の倍数で年をとるといいます。それをもとに、更年期のケアや漢方薬をご紹介しましょう。

漢方では7の倍数でエイジングケアを考える

女は7の倍数、では男は……? 8の倍数が正解。老化が遅いととるか、成熟が遅いと取るか?!

女は7の倍数、では男は……?  8の倍数が正解。老化が遅いととるか、成熟が遅いと取るか?!

女性は7歳で永久歯に生え変わり、14歳で月経が始まり、21歳から性ホルモンがみなぎり、女性としての成熟期を迎えます(7の倍数でエイジングケアについては40代で子どもを出産するヒケツとは……?の記事を参考に)。

その後28歳をピークに、35歳になると髪が抜け出し、少しずつ老化現象が。42歳を迎えるとシワや白髪が目立ち始め老化が加速し、49歳前後には閉経を迎えます。

7の倍数の背景には、月経が始まると同時に血を定期的に体外に排出し、妊娠、出産、育児を経て赤ちゃんを育てるために血を与え、閉経を迎えるという、女性の一生には血にまつわるイベントが多いことがわかります。

このため、女性は血に関わる病気になりやすく、栄養に富んだ血は年齢とともに不足しがちになります。

生殖機能と腎の深い関係

なお漢方では腎という機能は成長や老化に深くたずさわり、生殖機能を司るとされ、腎機能の強弱と大きな関係があります。老化とともに腎の働きが低下するのは自然のことですが、過労や多産などで腎機能が通常よりも低下してしまうと、更年期障害の症状がツラくなることも少なくありません。

お産は女性のカラダにとって大きな負担となります。なので出産時に大変な思いをしたり、産後の養生を怠ってしまうと、更年期にどっとトラブルが出る可能性があるのですね。

 

更年期障害のタイプと漢方薬

カーッと顔が熱くなり、汗が出てくる「ホットフラッシュ」も更年期障害の症状のひとつ

カーッと顔が熱くなり、汗が出てくる「ホットフラッシュ」も更年期障害の症状のひとつ

■ほてりや腰痛が気になるタイプ
腎機能の血を作り出す機能や、体液を保持する働きが低下しているタイプです。相対的にカラダに水分が足りない状態なので、カラダに熱を持ちやすくなり、ほてりなどの症状が強くでます。

具体的な症状としては、生理の量が少なく断続的、もしくは閉経、寝汗をかく、顔がほてる、手足がほてる(特に夕方から夜間にかけて)、耳鳴りがする、コロコロ便、冷たい飲み物をほしがる、腰痛(動かすと悪化)など。

代表的な漢方は六味丸(ろくみじおうがん)や、これに知母(ちも)や黄柏(おうばく)が加わった知柏地黄丸(ちばくじおうがん)があります。

■ 足や腰の冷えが気になるタイプ
腎機能のカラダを温める機能が低下している状態です。全身の冷えがありますが、特に下半身が水に漬かっているように冷たいというのが特徴的。

生理の色は淡く少ない、もしくは閉経、水っぽいおりものが出る、足腰が冷たい、おしっこの回数が多い、夜間におしっこに行く、むくみやすい、抜け毛が多い、冷えると下痢する、腰痛(冷えると悪化)、耳鳴りなどの症状があります。

八味丸(はちみがん)や、これに五膝(ごしつ)や車前子(しゃぜんし)が足された牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などがよくチョイスされます。

■動悸や不眠が気になるタイプ
腎の血を作り出す働きや体液を保持する働きが低下したために、相対的にカラダに熱がたまり、「心」の働きにも影響を及ぼしているのがポイント。

「心」は血流を管理したり、精神面のコントロールをしていますが、この働きが弱ると寝つきはよいけれど途中でよく目が覚めたり、動悸などの症状が出てきます。

このタイプは、最初のほてりや腰痛が気になるタイプに加えて、動悸、不眠(途中でよく目が覚める)、不安感などが伴ないます。

処方としては「心」を穏やかにさせ血を補う、天王補心丸(てんのうほしんたん)などが有名です。

■顔ののぼせと耳鳴りが気になるタイプ
腎の血を作り出す働きや体液を保持する働きが低下し、その状態が「肝」に影響を及ぼした状態です。「肝」の働きは自律神経のバランスを管理したり、血をたくわえる働きがあるのですが、血が不足しているために自律神経のバランスが乱れやすくなり、気持ちの変動によって症状が悪化したり軽快したりします。

生理の周期は早め、量は少ないもしくは閉経、顔がのぼせる、耳鳴り、めまいがする、ドライアイ、血圧が高い、不眠、よく夢を見るなどの症状が。

漢方薬では「肝」に作用し、気のめぐりを良くする抑肝散加陳皮半夏湯(よくかんかんかちんぴはんげ)や、それに六味丸(ろくみがん)を加味したものを処方したりします。

■冷えのぼせがあるタイプ
冷え、胃腸虚弱、ストレスなどが原因で血のめぐりが悪いためにドロドロ血となっているタイプです。生理痛や頭痛などがひどく刺すような痛みがあったり、夜間に症状が悪化しやすいのが特徴です。

生理中に血塊がある、生理痛は刺すような痛み、皮膚がガサガサする、頭はのぼせるのに足は冷たいなどが挙げられます。

漢方薬では血行不良によく、産後のオロでも使えるキュウ帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)が有名です。

■めまいがひどいタイプ
胃腸虚弱、飲食不摂生、腎機能の低下などが原因で余計な水分がカラダにたまっているタイプです。特に梅雨時に症状が悪くなったり、お酒の飲みすぎなどで体調が悪化しやすいのが特徴です。日本人に多く見られるタイプでも!

生理の量が多い、おりものが多い、閉経、胃のあたりを押すとポチャポチャと音がする、お腹がすいていないのにグルグルと音がする、吐き気がする、めまいがする、カラダが重だるい、頭が重い、痰がたまる、汗をかくと体調がラクになるなどがあります。

代表処方には水毒によい半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)や、温胆湯(うんたんとう)など。


これらの漢方を服用したい場合は、必ず漢方の専門家にご相談くださいね。そうそう、男性にも更年期障害のような症状があるということ、知っていますか? 症状に合うな、と思ったらもちろん男性の方もご参考に。
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