子供の病気/麻疹(はしか)

麻疹(ましん・はしか)の症状・合併症・診断法

【医師が解説】小児科医としても診ることの多い麻疹。麻疹はワクチンによって減っていますが、病気自体を治療する特効薬はまだありません。合併症を起こした場合、死亡する危険もあります。感染力が非常に強い麻疹の症状・合併症・診断法について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

麻疹(ましん・はしか)とは

麻疹の診察イメージ

感染力が非常に強い麻疹。2歳以下が約半数を占め、多くは1歳代ですが、大人も感染・発症します。


一般に「はしか」と呼ばれることが多いですが、正式な病名は「麻疹(ましん)」です。感染力が非常に強く、同じ空間にいるだけで感染リスクがある空気感染です。

<目次>  

麻疹の症状……高熱と赤い細かな発疹が特徴

高熱と赤い細かな発疹が特徴的な全身の病気。主な症状は以下の通りです。
  • 鼻水
  • 39度以上の高熱
  • 発疹(赤い細かい発疹が全身に出ます)
  • 色素沈着(回復すると湿疹が赤黒くなって、しばらく残ります)
  • 眼球結膜充血・目やに
  • 下痢や便に血が混じることも
コプリック

頬の粘膜に白い斑点が発疹が出る前に見られます(出展:国立感染症研究所 感染症情報センターホームページ

最初は高熱が出て、2~4日目頃から発疹が出てきます。発疹が出てくる頃、口の中に「コプリック斑」という白い斑点ができるのも特徴的な症状です。
 

麻疹の原因・潜伏期間……麻疹ウイルスが起こし10~12日潜伏

麻疹は麻疹ウイルスによって起こる呼吸器感染。麻疹ウイルスは、「パラミキソウイルス群RNAウイルス」に分類される、非常に小さなウイルスです。非常に小さいため、空気感染しやすいのも特徴。空気感染は感染する範囲が広くなるので、同じ部屋にいるだけでも感染します。非常に感染力が強いため、1人が感染すると、麻疹ワクチンをしていない人や、これまでに麻疹にかかっていない人に、次々と広がってしまいます。1人の感染者が免疫のない人に感染させる数は12人から16人です。感染してから発症するまでの潜伏期間は10~12日です。
 

麻疹の合併症……間質性肺炎や中耳炎・クループ症候群など

麻疹には合併症が多く、特効薬がありません。以下の合併症はどれもかなり重症になるリスクを伴うものです。

■間質性肺炎
風船のように膨らんだりしぼんだりする肺が硬くなり、呼吸ができなくなる病気。ひどい時には人工呼吸器を使用しないといけない場合があります。

■中耳炎・肺炎
麻疹にかかると免疫が抑制されるため、細菌に対する抵抗力が下がり、中耳炎や肺炎になることも。

■クループ症候群
のどが腫れて、ケンケン、コンコンといった咳をして、時には呼吸がしにくくなる病気。

■脳炎・脳症
麻疹に自然にかかると、1000例に1例の割合で合併すると言われています。後遺症(精神発達遅滞、痙攣、行動異常、神経聾、片麻痺、対麻痺)は20~40%見られ、脳炎・脳症の死亡率は約15%です。

■亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
脳炎の一種で、麻疹ウイルスが持続して脳に感染し、麻疹感染後数年以上で発症し、症状が徐々に脳炎が進行し、神経症状が悪化する非常に予後の悪い病気。現時点では治療方法がありません。

■播種性血管内凝固症候群(DIC)
血管の中で、血の塊を作り、血を止める成分や血小板は少なくなってしまい、出血しやすくなる病気。体の至る所で出血してしまいますから非常に怖い病気です。
 
免疫が低下した人が麻疹にかかると、上記の合併が重症化します。
 

麻疹の診断法……遺伝子検査や血液検査など

麻疹の診断で最も確実なのは、鼻やノド、便などからウイルスを見つけることです。麻疹のすべてを把握するために、現在、国立衛生研究所で検査を行っています。遺伝子検査を行い、ウイルスを検出し、診断します。

症状などからも麻疹の可能性を診断する事はできますが、修飾麻疹や異型麻疹など典型的でない麻疹もあるために、様々な検査を行った上で診断する方が望ましいです。

血液検査でも麻疹に対する反応である抗体を測定します。IgMというウイルスに感染後に上昇する抗体を検査したり、病気になっている時と1~2週間後の回復した時に測定してIgGと呼ばれる抗体の上昇を見ることで、麻疹を診断します。

抗体は感染したから1か月程度までIgMと呼ばれるタンパク質が出て、IgGと呼ばれるタンパク質が徐々に増加し、数年から数十年体内に存在して、麻疹ウイルスの侵入に対して防御してくれます。
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