不眠・睡眠障害/歯ぎしり・寝言・金縛り・悪夢

歯ぎしり・寝言・金縛り・悪夢

目覚めている時は自分をコントロールできても、眠ってしまえば何が起きるか分からない! そこで今回は、人に迷惑をかける歯ぎしりや寝言、自分も困る金縛りと悪夢について、原因と対策をご紹介します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

睡眠中の異常現象

寝言
かわいい寝言なら、良いのですが…
グッスリ眠っていても、夜中におかしなことが起きることがあるものです。ここでは、睡眠中の微笑ましい、あるいは厄介な4つの現象について、解説します。

■ 歯ぎしり
上下の歯を食いしばってギチギチ軋むような音が一般的ですが、上下の歯をカチカチ噛み合わせる歯ぎしりもあります。

歯ぎしりが問題となるのは、その音でベッドパートナーが眠れなくなることだけではありません。強く噛み合わせるために、歯が磨り減ったりぐらついたり、顎の関節が傷んだりもします。

なぜ歯ぎしりするのかは、まだよく分かっていません。しかし、ストレスや飲酒、喫煙、カフェインは、歯ぎしりを起こす危険因子と見られています。歯ぎしりに悩む人は、これらを避けるとよいでしょう。

歯ぎしりを止める治療法は、まだありません。今のところ歯ぎしりの治療には、主にマウスピースが用いられています。マウスピースは歯ぎしりを減らすことができませんが、上下の歯が直接接触しないようにして、歯の磨耗や損傷を防ぐ目的で使われています。


■ 寝言
医学的には、睡眠中に本人が自覚しないのに出る言葉や声のことを、寝言といいます。普通の寝言は、短く小声で、感情的ではありません。子どもにはよく見られますが、25歳を過ぎる頃には、次第に言わなくなってきます。

寝言が増える病気も知られています。風邪などで高い熱が出ると、いわゆる 「熱にうなされる」 状態になって、寝言が出やすくなります。他にも、夜驚症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、レム睡眠行動障害などでも寝言が多くなります。

叫び声や悲鳴のような寝言であったり、恐怖などの激しい感情を伴ったり、呼吸停止や異常行動が見られたりするときには、病気による寝言の可能性があります。早めに、睡眠障害の専門医 の診察を、受けるとよいでしょう。


お化け
金縛りも悪夢も、お化けや悪魔の仕業というわけではありません
■ 金縛り
目が覚めたのに、体がまったく動かない。やっとの思いでまぶたを少し開けると、なにやら怪しい影が見える…。このような怖い体験をした人も多いはず。でも安心してください。

金縛りは、霊的で異常な出来事ではなく、睡眠麻痺 と呼ばれる、科学的な説明がつく現象です。筋肉が完全に弛んでいても脳は活発に働いているレム睡眠のときに、何かの拍子で完全に意識が覚めると、いわゆる金縛りの状態を自覚するのです。

金縛りは健康な人でも、寝つく時刻や目覚める時刻が不規則であったり、疲労が激しいときに起こりやすくなります。また、過眠症の代表であるナルコレプシーの症状としても、有名です。

なるべく金縛りにあわないようにするためには、規則正しい睡眠をとり、夜更かしを避けることが大切です。もし、金縛りが起こってしまったら、意識的に目を動かすと早く抜けられますから、試してみてください。


■ 悪夢
恐ろしい夢や嫌な夢は、子どものときによく見ますが、一般的には成長するにつれて見る回数が減ります。それでも、悪夢をよく見る大人が、100人に1人はいます。

精神的なストレスが悪夢を作ると考えられていますが、はっきりした原因はまだ分かっていません。「夢は、危機的な状況に対処するための予行演習である」 という説もありますから、悪夢は、リスクマネジメントの一環なのかもしれません。

睡眠薬や抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、降圧薬の中には、悪夢の原因となるものがあります。そんなときは主治医に相談して、薬の種類を変えてもらうとよいでしょう。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)やナルコレプシー、レム睡眠行動障害などの病気のときにも、悪夢が増えます。きちんと治療すれば悪夢は減りますから、一度、睡眠障害や精神科の専門医にご相談下さい。
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