適度な間食は気分転換になりますが、度を越えた過食と代替行為が繰り返される場合は注意が必要
過食症は正しくは「神経性大食症」と呼びます。原因と症状について詳しく解説しましょう。
過食症の原因
コントロールできない暴食と、食べたものを吐き出そうとする代償行為が繰り返される過食症。拒食症と同様、主に若い女性に見られ、発症頻度は思春期の女性の1~3%程度。また、発症年齢は拒食症より高くなる傾向があります。原因は人それぞれですが、やせなくてはならないというプレッシャーと、家庭内での心理的葛藤、慢性的な気持ちの落ち込みなどがあるときに発症しやすいです。
また、心理的問題だけでなく神経科学的な問題が原因となることも。特に脳内神経伝達物質の一つであるセロトニンの働きが過食症を引き起こすことがあります。
我を忘れるほど食べ過ぎることが頻繁にあり、その後に強い罪悪感を感じてしまう人は、過食症の可能性がないかチェックする必要があります。
過食症の症状・診断
いわゆる食べ過ぎと、食べた分のカロリーをなかったことにしたいという代償的行為は、誰にでもあること。例えばいつも以上に食べ過ぎてしまい、食べた分を消費しようと普段はしないような運動をしてみた、という経験がある人は少なくないはずです。このような考えや行動自体はあまり問題ではありません。過食症の特徴的な症状は、「ドカ食い」とも言われるコントロールの効かない過食と、それを償おうとする過剰なダイエット行動の繰り返し。大食後に、極端に激しい運動でカロリーを消費しようとしたり、下剤や利尿剤の服用や嘔吐により食べたものを人為的に外に出そうという行為を繰り返してしまいます。
この過食と排出の繰り返しが「習慣化」しているかというのが、診断でも重要なポイント。例えば仕事でむしゃくしゃし、帰宅後に冷蔵庫にあるものを片っ端から食べ、我に返ってからひどい自己嫌悪に陥ったとします。たまらない気分で、ノドに指を入れて食べたものを全部吐き出してしまったとしても、1~2回の出来事では心の病気とは言いません。過食症と診断されるには、このような大食とその代償的行為の繰り返しが、週に2回以上、3ヶ月以上持続していることが目安となります。
過食症が招く、広範な症状
過食症は拒食症と異なり、明らかにやせ過ぎていることはあまりなく、体重は適正範囲内であることが多いです。しかし、太ることへの恐怖や自分のスタイルや体重へのこだわりは、拒食症と同じく強迫観念化しています。強迫観念が意識の大部分を占めるようになるほど、以下のような問題が出てきます。■暴飲暴食による落ち込み・心の問題
- 抑うつ状態……暴飲暴食の後に激しい気持ちの落ち込みが生じることが多く、うつ病など、さらなる心の問題を引き起こしやすくなる
- 落ち込みから逃れるための依存・反社会的な行為……落ち込みから逃れるためのアルコール中毒、気を晴らすためのその場限りの異性関係、ストレスを発散するための万引きなど、自分に取って悪い結果をもたらす方向へ向きやすくなる。また、衝動コントロールの問題は自殺リスクを高めてしまう
- 食道の炎症や痛み……胃の内容物を繰り返し嘔吐することで、胃酸が食道の粘膜を傷つけて炎症が起こり、食事の際に痛みを覚えることがある
- 食道の裂傷……まれだが、嘔吐するときに食道壁にかかる圧力が大き過ぎて食道に裂傷ができてしまい、外科的な処置が必要になることがある
- 不整脈……胃酸や腸液に含まれる塩化物イオンやカリウムイオンが多量に排出されることで、血中電解質や水素イオン濃度に異常が起こる。その結果、心臓の電気的活動に問題が生じて不整脈が生じやすくなり、電解質異常が顕著な場合は致死性不整脈が起きる可能性もある