予防接種・ワクチン/肺炎球菌・Hibワクチンの予防接種

小児肺炎球菌ワクチン・予防接種の効果・副作用

【小児科医が解説】肺炎球菌ワクチンは子供の髄膜炎予防に有効です。小児用肺炎球菌ワクチンは2010年に発売され、2013年4月には定期接種になりました。肺炎球菌ワクチンの接種時期や空けるべき間隔、副作用や費用などの基本情報を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

肺炎球菌が原因となる病気・症状……肺炎・中耳炎・髄膜炎など

肺炎球菌ワクチン・予防接種の効果と副作用

肺炎球菌は2つつながった形で丸い菌です(ワイスより引用)

肺炎球菌は、その名の通り、肺炎を起こす細菌です。インフルエンザ桿菌b型(Hib)とともに、髄膜炎の原因にもなります。顕微鏡で見ると丸い形をしています。肺炎球菌が引き起こす主な病気は以下の通り。
 
  • 気管支炎・肺炎
  • 副鼻腔炎・中耳炎
  • 髄膜炎
  • 骨髄炎(菌が骨の中に入る)
  • 関節炎(菌が関節の中に入る)
  • 敗血症(菌が血液に侵入する)

これらは子供に多い病気です。髄膜炎について詳しく知りたい方は「髄膜炎とは…原因・症状・検査法・有効な予防接種」「髄膜炎の治療・合併症・予防法」をご覧ください。

肺炎球菌には菌の周りを莢膜(きょうまく)という強力な膜があり、白血球の免疫機能に抵抗を示します。つまり、白血球によって、菌は排除されない状態になります。肺炎球菌は、主にのどや気道の粘膜に付着して感染を起こし、血流に入って、脳や関節、骨髄など、体の様々な臓器侵入し、臓器を破壊してしまうこともある菌です(侵襲性肺炎球菌感染症)。

肺炎球菌に対する抵抗力として、肺炎球菌に対する抗体がありますが、母親からの肺炎球菌に対する抗体は生後2ヵ月で減少してしまいます。そのため、生後2ヵ月からワクチンが必要になります。
 

大人の肺炎球菌ワクチン・小児用肺炎球菌ワクチンの違い

肺炎球菌の莢膜(きょうまく)は93種類。全種類に対応できるワクチンはありません。成人や大きな子どものための肺炎球菌ワクチンは、23種類の菌に対する免疫をつけることができる一方で、小さい子どもでは十分な免疫をつけることができませんでした。そこで、開発されたのが、肺炎球菌結合型ワクチンです。商品名はプレベナーと言います。病気を起こす肺炎球菌の種類のうち、7種類に対応したプレベナーで約80%を、13種類に対応したプレベナーで約90%をカバーすることができます。

ドイツの報告で、16歳未満で死亡率の高い肺炎球菌の種類は、7F・23F・3・6A・9V・14・4・6B・19Fでした。

7種類に対応したプレベナー(7価肺炎球菌結合型ワクチン):4・6B・9V・14・18C・19F・23F
13種類に対応したプレベナー(13価肺炎球菌結合型ワクチン):1・3・4・5・6A・6B・7F・9V14・18C・19A・19F・23F

参考までに、
23種類に対応した大人のニューモバックスNP(23価肺炎球菌多糖体ワクチン):1・2・3・4・5・6B・7F・8・9N・9V・10A・11A・12F・14・15B・18C・19A・19F・20・22F・23F・33F
となっています。

アメリカのデータでは、肺炎球菌ワクチン導入によって肺炎球菌による重症例である侵襲性肺炎球菌感染症の年間発症率が、平均95.2例/10万人から平均 22.6例/10万人と約4分の1に減少したと報告されました。プレベナーが有効な肺炎球菌での侵襲性肺炎球菌感染症は、年間発症率を平均78.9例 /10万人から2.7例/10 万人と約30分の1まで減少できると、著明な効果が報告されました。

世界100国以上で使用されています。
 

小児用肺炎球菌ワクチンの接種時期・あけるべき間隔

プレベナー

肺炎球菌ワクチンです。商品名プレベナー(ファイザーより引用)

定期接種になっている小児肺炎球菌ワクチンの商品名は「プレベナー」。不活化ワクチンのため、複数回接種する必要があります。対象年齢は、生後2カ月以上5歳未満の子供。年齢によって接種回数が異なります。

■生後2カ月以上7カ月未満
  • 初回接種:1回0.5ml を27日間以上の間隔をあけて3回接種。
  • 追加免疫:3回目接種から60日間以上の間隔をあけて生後12ヶ月~15ヶ月の時に1回接種。
■生後7カ月以上12カ月未満
  • 初回接種:1回0.5ml を27日間以上の間隔をあけて2回接種。
  • 追加免疫:2回目接種から60日間以上の間隔をあけて生後12ヶ月の時に1回接種。
■生後12カ月以上24カ月未満
  • 60日間以上の間隔をあけて、2回接種
■生後24カ月齢以上生後60ヶ月未満
  • 1回のみ接種
以上のスケジュールで行います。

生後60ヶ月以上6歳未満は任意接種になっております。小児肺炎球菌ワクチンとしては6歳以上では接種できません。

小さい子供ほど接種回数が多いのは、年齢が小さいほど肺炎球菌に対する抗体の上昇がよくないからです。定期接種になったため、基本的には初回3回と追加が標準接種になります。それ以外は接種もれの子どもたちの接種スケジュールになります。

定期接種では、13種類の肺炎球菌に効果がある「プレベナー13」が使用されています。
 

小児用肺炎球菌ワクチンの副作用

主な副作用は、接種部位の腫れ、発赤。頻度はそう多くないものの、発熱や眠くなる傾眠傾向がみられることも。このワクチンは同時接種されることが多いのですが、同時接種によって、副作用が統計的に有意に増えたことはありませんでした。
 

小児用肺炎球菌ワクチンの費用

以前は任意接種で、全額自己負担でしたが、平成25年4月から定期接種になりました。日本でもアメリカのように5歳未満人口10万に対して侵襲性肺炎球菌感染症の罹患率(罹った子どもの割合)は、2008年から2010年までの3年間の平均は2.81でしたが、2013年(平成25年)では1.10となり、61%減少しています。

さらに、平成25年11月から7種類の肺炎球菌に効果のある7価ワクチンから13種類の肺炎球菌に効果のある13価ワクチンになりました。7価の対象の肺炎球菌の種類には効果があったのですが、7価以外での種類による侵襲性肺炎球菌感染症が増えつつあったため、13価ワクチンになりました。そのため、より幅広く効果を発揮することになります。

しかし、2013年以降は侵襲性肺炎球菌感染症は全数報告になりましたので、上記の数字と異なりますが、人口10万当たりの報告数は、5歳未満においては、2013年4.98、2014年6.94、2015年7.54、2016年8.12、2017年9.47と上昇傾向にあります。全年齢でも増加傾向ですので、今後、15価ワクチンが準備されています。
 

高齢者が接種できる肺炎球菌ワクチン、接種の対象者・何歳から?

2014年6月から65歳以上の高齢者が「プレベナー13」を接種できるようになりましたが、定期接種ではなく任意接種になっております。高齢者の定期接種は、2014年10月より高齢者の肺炎球菌ワクチンで、23種類の菌に対する免疫をつけることができるニューモバックスNPが使用されます。

23価肺炎球菌ワクチン(一般名:23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン、商品名:ニューモバックス NP)」の対象者は、

1. 経過措置の対象となる方
2023年度末までは、該当する年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる人で、5歳ごとに接種可能ですが、いずれは65歳以上になる予定です。

2. 60歳から65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害やヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方

とされていますので、住んでいる自治体で確認しておきましょう。

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