食と健康/食と健康の基礎知識

塩分摂取の目標量が低減

5年ぶりに改訂された「日本人の食事摂取基準」では、ナトリウム(食塩相当量)摂取量の目標値がより厳しくなりました。実は日本は、世界の中でも減塩後進国。減塩のコツをご紹介します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

塩分摂取量の目標値がさらに厳しく

「日本人の食事摂取基準」では、塩分接し湯の目安量がさらに低減されています。

「日本人の食事摂取基準」では、塩分摂取の目安量がさらに低減されました。

2010年4月厚生労働省により「日本人の食事摂取基準」が5年ぶりに改訂されました。その中で、ナトリウム(食塩相当量)摂取量の目標値が、男性は1日 10g未満から9g未満に、女性は8g未満から7.5g未満へと低減され、より厳しくなりました。

日本人の食塩摂取量は、現在の平均摂取量は約11gです。先進諸国の中でも摂取量は多いのですが、日本人の食文化は、塩蔵など食品保存法として、また味噌や醤油など塩を使った調味料も多く使われてきたという背景があります。
「日本人の食事摂取基準」の目標値変更にあたっては、高血圧やがんとナトリウム摂取との関連を検討した疫学研究、欧米を中心とした諸外国における食塩摂取制限目標値などが参考にされています。

また日本人の食文化や現在の食生活環境では、食塩の摂取量を早急に低減することは困難だろうということで、今回の「日本人の食事摂取基準」でも配慮された目標値になっています。

現在、日本人にとってどのくらい食塩摂取量が適量であるかというエビデンスはないのですが、WHO国際高血圧学会や日本高血圧学会のガイドラインでは6g未満を推奨しており、イギリスやアメリカを初めとする世界各地で6g未満が基準になりつつあり、行政や企業も一体となって減塩運動に取り組んでいます。

塩分をとり過ぎると何が問題なの? 

塩は、ナトリウムイオンと塩化物イオンに分かれて体液(細胞外液)中に存在し、カリウムとともに細胞内外の水分を調節したり、物質交換をしたり、神経の伝達、筋肉や心筋を弛緩させる作用があり、生命維持には欠かせません。もしナトリウムが不足すると倦怠感を感じたり、脱水症状、筋肉の痛み、ひどい場合は昏睡状態になることもあります。しかし現代の日本人の食事でナトリウムが不足することは滅多にありません。

では、塩分をとり過ぎるとどのようなリスクがあるのでしょうか。最もよく知られているのが塩分と高血圧の関係でしょう。健康であれば、余分な塩分は腎臓から尿中に排泄されますが、腎臓の働きが低下し十分に排泄されないと、体液の塩分濃度が上がらないようにバランスをとるために、体は水を溜め込もうとします。そのため血液の量も増えて血管に圧力がかかり、高血圧につながりやすくなるのです。

ただし食塩による血圧上昇との関係(食塩感受性)には個人差があります。食塩を多くとってもまったく血圧が上がらない人もいます。今後も研究を重ねることが必要ですが、現在は一般的には高血圧を予防するためには食塩を減らしたほうがよいとされています。

また2010年2月、厚生労働省研究班による多目的コホート研究より、塩分・塩蔵食品の多量摂取で、がん・循環器疾患の発生リスクが高まるという結果も発表されました。塩分摂取量で5グループに分けて比較すると、最も多いグループは最もないグループに比べて、循環器疾患のリスクが約20%高いことがわかり ました。

日本人の食塩摂取量は、1950 年頃は20gを越えていたと考えられており、その後減塩運動により摂取量は低下してきました。昔と比べて日本人の生活スタイルは一変しています。肉体労働は減りまた交通手段や家事労働なども利便化されて運動量が減り、またエアコン等によって室内の温度を一定に保つことで、汗をかく機会も減っています。こうした生活スタイルにより塩分を体外に排出する量も減っています。次に食事についての減塩&排塩のポイントをご紹介します。

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