伝統食って何だろう?
「伝統食」とは、よく聞かれる言葉ですが、これという定義はなかなか見つかりません。日本人の永い歴史の中で受け継がれてきた食文化、食品と言えるのではないかと思います。冠婚葬祭や年間行事に伴う食習慣や、日本各地の気候風土に適して食べ続けられた食材をさす場合もあります。日本は南北に長い地形ですので、各地方、地域により様々な表情があります。「伝統食」と並んでよく使われる「粗食」は、現代の日本の食生活が豊かそうでありながら、脂質や動物性タンパク質をとりすぎ、逆にごはんや野菜は不足するなど、栄養が偏っていることと対比する表現。少し質素であっても、バランスのとれた日本の伝統的な食事のよさを見直そうという考え方です。
ただ「粗食」の「粗」という字は、「粗い、粗雑」というような意味も含まれているため、質素だけれども素材を活かしたという意味で「素食」と使われている場合があります。
また世界中の研究でも、健康に役立つ栄養素や成分について研究され推奨されている食品の中には、大豆製品、海草類、魚類、発酵食品、茶など、日本で伝統的に食べられていた食品が取り上げられています。
伝統食、粗食・素食のメリットとは
現代の日本や韓国、アメリカ、ヨーロッパなどの経済先進国では、どうしても肉類や油脂類の摂取が増えて肥満から生活習慣病患者が増える傾向にあります。欧米化された、特に外食でいただくようなごちそうをハレの食事とすれば、伝統食、粗食・素食は毎日のケの食事。日々の食事の積み重ねが、健康に影響するのは当然のことです。現代の食事は、どちらかという日常的にごちそうであるハレの食事が続いているために肥満になりがちなのです。日本の伝統食の特徴をざっくりと言うとすれば
・ごはんを主食として、おみそ汁、お漬け物に、季節の野菜、魚介類、大豆製品、海藻、芋、きのこなど幅広い食品を食べ合わせる。
・ 油脂の使用が少ない。
というような点が挙げられます。
ごちそうでは、主食という存在感が薄くなりがちですが、伝統食はごはんを主食にすることで、カロリーが高い脂質の摂取を控えることにもつながりますし、煮物、お浸し、和え物などは、フライ、ソテー、サラダと違って、油脂の使用量がほとんどなく、カロリーが低めに仕上がります。また味の淡白なごはんは、どんなおかずとも調和し、ごはんを主食に、一汁三菜という伝統的な献立にすることで、栄養計算をしなくても自然と幅広い食品から多様な栄養素・成分を摂取しやすくなります。こうした食べ方が、肥満から起こされる生活習慣病予防や健康維持・増進に繋がると見られています。