「笑うと免疫力がアップして、ガンを予防できる」ということを聞いたことのある方は多いと思います。これは、柴田病院 難治疾患研究部の伊丹仁朗医師が大阪・ミナミの「なんばグランド花月」で吉本興業の芸人による漫才や落語、新喜劇を観賞した人に対して血液検査を行い、18人中14人のリンパ球のナチュラルキラー(NK)細胞の活性値が上昇したという実験結果がきっかけとなって導かれた説です。
これによって「吉本興業も健康産業の仲間入りか!?」などと報道され、話題騒然となりました。興味のある方は、伊丹医師とサトウサンペイ氏の共著『笑いの健康学』(三省堂)などをお読みになるといいでしょう。
笑うことは人を和ませるだけでなく、自分の健康にもよいというのは事実です。しかし、ここで忘れてはならないのは、その笑顔が心から出たものであるということです。よく「つくり笑顔でもムリヤリ笑ったほうがいい」と信じ込んでいる人もいますが、本心を押し殺しつくった笑顔は健康にいいどころか逆効果になります。
たとえば、話しかけるとどんなときでも明るく笑顔であいさつし返してくるような人が、しだいに遅刻が多くなって会社を休むようになってしまった、というケースを見かけることはありませんか? つらさを笑顔の下に押し殺していると、周りにも気づかれないうちにストレスを深めてしまい、ついにはうつ病にまで発展してしまうこともあるのです。このタイプのうつ病は「微笑みうつ病」などとも呼ばれています。
「あんなにいつもニコニコしていたのにどうして?」「悩んでいるようには見えなかった」と一瞬周りは思うのですが、「そういわれれば、やたらと明るすぎるので違和感があった」「満面の笑みで笑ったあとに、怖くなるほど暗い顔つきをすることがあった」「いつもニコニコしすぎて、何考えているのかわからないようなところがあった」など、よく思い返してみるとその笑顔に不自然な点があるのが、微笑みうつ病の特徴です。
また、自分の気持ちを押し殺して表面上は幸せそうなそぶりを見せる行動は、「タイプC行動パターン」とも呼ばれています。いつもせかせかして落ち着きがなく攻撃的な「タイプA行動パターン」の人に虚血性心疾患が比較的多く見られるのに対し、「タイプC行動パターン」の人はガン患者の中に比較的多く見られることが指摘されています。
先ほど「笑うことがガン予防につながる」ことについて触れましたが、同じ笑顔でも心から出た笑顔でないと逆に免疫力を下げてガンを発生させやすくしてしまうのですから、笑顔の使い方はくれぐれも間違えないようにしたいものです。心からの笑顔を本当につくれるのは、自分らしく生き、心が豊かになれたときです。あなたは日頃、どんな笑顔をつくっていますか?