■4人に3人が出産を前後して退職している
「進む女性の社会進出」などと世間では派手に報じられていますが、実際は出産を機に4人に3人の女性が職場を退職していることをご存知でしょうか?厚生労働省の調査によると、産前・産後休暇を取るなどして出産後も仕事を続けている女性は23%にすぎません。出産1年半後に働いていた女性のなかでも、4割弱が出産前後に一度退職しています。
この調査結果は日本の社会構造を、如実にあらわしていると思います。 かつて、日本人のほとんどが農業に従事していた頃には産後も母親は畑に出て働き、年長の子どもが子守りをしたり、おばあちゃんが代わりに面倒をみることが多かったといいます。
また、労働の場と子育ての場は近接しており、昼や休憩時間には子どもとスキンシップをとることもできましたし、熱を出したり病気になったとしても母親はすぐに駆けつけることができました。よかれ悪しかれ地域みんなで子どもを育てているという意識があったために、忙しいときには他人の子どもの子育ても快く引き受けてくれる人が多かったそうです。
一方、現代の働く人は、ほとんどがなんのつながりもない他者に時間で雇われた身の上です。雇用者にとって、労働者の出産、育児はあくまでプライベートな事情であり、労働時間内に給料に見合う労働力を提供できる資質がないと判断されれば、過去に実績を積んできた人であっても“非効率な”社員とみなされかねないのは、悲しいながらも事実ではないかと思います。
また、いっしょに働く同僚は家族でもありませんし、仕事仲間ではあっても同様にライバルでもあります。いくら「事情を理解してほしい、協力してほしい」と思っても、自分に利益こそなく、逆に負担が増えつづけてしまうようなら快く思えないばかりか、迷惑に思う人もいるでしょう。
極論を言えば、そもそも激しい競争のなかにあり、効率化、スピード化、生産性を求める社会には、子どもを育てるという行為は合わないのかもしれません。このような状況のなか、少子化が加速していくのも無理はありません。
しかし、効率的で便利なことを追い求めすぎると、一方で“生きる”ということの重みを実感する機会を失ってしまいがちなのではないか、という心配があります。それについては次のページで触れてみたいと思います。