寝たきりの生活では、1日3~5%の筋力が落ちていきます |
ちょっとした不調がもとで寝込んだら、そのまま寝たきりになってしまった――。そんな話を耳にすることはありませんか?「寝たきり」が起こす、心身機能の低下を「廃用症候群」と呼びます。体を動かさずにいることで、筋肉や骨、血圧、肺機能、消化機能などあらゆる機能が衰えていってしまうのです。
「海外には『寝たきり』に当たる言葉はない」という事実をご存知ですか?どんなお年よりも死の直前まで、立ち歩いたり座ったりして一日を過ごしているのだそうです。日本では、些細な不調でも「安静第一」とばかりに、病人を寝かせる風潮がありますが、その弊害はけっして小さくありません。では、寝たきりで起こる、心身のトラブル「廃用症候群」にはどんなものがあるのでしょうか。
1.関節が固まる
関節を動かさずにいると数日で拘縮が始まり、なんと一ヶ月で関節が固まってしまうそう。膝や足首が硬くなれば、歩きにくくなるし、転倒もしやすくなります。また、手指の関節が拘縮すると、食事、洗面といった日常所作が難しくなります。こうして、「出歩かない」「自分の事が自分でできない」などなど、生活面での支障が目立つように。
2.筋肉が縮む
筋肉をまったく使わないと、1日で3~5%の筋力が落ちるそうです。一ヶ月経つと、なんと歩行も不可能に。体を支えきれず転びやすくなるばかりでなく、骨折もしやすくなります。
3.骨が折れる
骨は一定の力をかけることによって強まるもの。反対に、ずっと体重をかけずにいると弱まってしまいます。その結果、ちょっと抱きかかえただけで肋骨が折れたり、体の重みで背骨がつぶれたり――といった事故が起こります。
4.血圧、心肺機能、消化機能が低下
通常、血圧は、血流が足に滞らないよう、調節されています。ところが、寝たきりでつねにこの機能が働かずにいると、やがて低下し立ちくらみなどを起こすようになります。このほか、心肺機能が衰え、動悸や息切れといった症状も現れるように。消化機能が衰え、食欲低下、便秘などのトラブルも起こりやすくなります。
廃用症候群の症状はこれだけではありません!
さて、このように廃用症候群が全身に及ぶと、やがて体を動かすこと自体、おっくうになっていってしまいます。生活全般に対する意欲が低下するばかりでなく、人とのコミュニケーションも避けるように。気がついたときには、完全な認知症となっているケースも少なくありません。
通常の風邪程度なら、一日、ベッドで安静にしている必要はないとされています。暖かな場所で座ってすごすなどして、体力を消耗しない程度に、起きていてもらいましょう。他の病気の場合は、主治医と相談のうえ、安静時間を決めるようにします。治ったら早めに床上げし、通常の生活に戻すようにしてくださいね。
<参考資料>
老人介護の安心百科 主婦と生活社